財政危機で在ギリシャバングラデシュ人たちに不安
2015年07月03日付 Prothom Alo紙

(6月30日付)財政危機の続くギリシャでは、この先1週間、すべての銀行業務の停止が発表された。同国の全体状況から見て, そこで働く2万人のバングラデシュ人は, 失業やビジネスの破綻といったことが起こるのではないかとおそれている。経済の専門家たちは, ギリシャの財政危機はすぐにでも、在留のバングラデシュ国民の経済活動に思わしくない影響を与える可能性があると見る。さらに危機が長引けば、バングラデシュからの産品輸出減少もありうる。
「ギリシャはすでに新規の労働者の入国を禁止する措置をとっている。そしてすでに滞在している人の多くは、職を失うかも知れない。そうなるとただちに、ギリシャ在住の人たちの収入に直接の影響が及ぶ」。民間のシンクタンク・政策対話センター(CPD)のモスタフィズル・ロホマン常任理事はそう話す。「さらにこの危機が長引けば、将来的にはバングラデシュからの輸出に悪影響を及ぼすことも考えられる」。
ギリシャには大小合わせ約250のバングラデシュ人が経営する工場がある。そこで勤務するバングラデシュ人は5千人にのぼる。こうした工場は主にバングラデシュから受注して生産を行っている。ギリシャ在住のバングラデシュ人たちは、不況が終わりを告げない限り、失業とともにこれら工場の閉鎖もありうると不安を口にする.
バングラデシュ銀行のサレウッディン・アハメド前総裁は、「今回の経済危機では、単に職を失ったり、現地で働くバングラデシュ人たちの給与が下がったりというだけではなく、さらにさまざまな影響が出ることが考えられる。他のヨーロッパ諸国にも広がるようだと、バングラデシュにとって大きな懸念材料になる」と語った。
バングラデシュからの欧州連合(EU)加盟国向けの輸出の伸び率は減少してきている。現在の2014-15年度では、昨年7月から今年5月までの11ヶ月で、バングラデシュのEU向け輸出額は153億6千万ドルだった。この数字は、その昨年度の同時期と比べわずか3.5%の増加に過ぎない。昨年度の伸び率は18%だった。バングラデシュで生産された既製服の60%はヨーロッパに輸出される。ギリシャが原因となってヨーロッパ全体の景気が悪化すれば、バングラデシュの輸出全体に影響がおよぶと専門家たちは見ている。EUをはじめ、国際的な貸付機関のギリシャに対する融資は3,200億ユーロにのぼる。このうちEUとしての債権は2,400億ユーロ、ドイツは単独で560億ユーロの融資を行っている。ギリシャの国内総生産(GDP)に対する負債の比率は177%に達しており、失業率は26%となっている。
ギリシャ政府は、経済再建計画実行のために債権国や国際機関が示した改革案について国民の意向を知る目的で、7月5日に国民投票を実施すると発表した。ギリシャがEUにとどまるかどうかは、改革案の条件をのむかのまないかにかかっている。
国家財政破綻の危機感から、ギリシャ国民たちは銀行から預金を引き出している。ここ数日でおろされた預金は総額で40億ユーロを超える。欧州中央銀行が、財政危機を乗り切るのに必要な緊急融資実行を拒否したため、ギリシャ政府はやむを得ずといった形で、国内のすべての銀行を休業とした。さらにATMからの現金引き出しは、1日60ユーロに制限された。
ギリシャのアレクシス・チプラス首相はツィッタ-で「これからはギリシャ人の辛抱強さ、我慢強さを世界に示さなければならない。ギリシャ国民の銀行預金は完全に保護されている」とつぶやいた。
ギリシャの財政危機の影響は、ヨーロッパをはじめ世界の主要な株式市場に及んでいる。多くの投資家が一斉に株を売却したためこうした状況が生じた。同じ理由で原油価格も下落している。一方で金の値段は上がっている。
こういった状況の中、ギリシャ在住のバングラデシュ国民はどうしているのだろうか?プロトム・アロ紙は昨日(月曜日)、アテネに電話し、在ギリシャバングラデシュ人会のジョエヌル・アベディン会長から話を聞いた。「バングラデシュ人を含むすべてのギリシャ在住外国人は今、不安に駆られています。一晩中ATMの前にできた行列に並んでも、お金をおろせなかったという人が大勢います。今後はたして仕事があるのか、ビジネスをやっていけるのか、全く分かりません」ということだった。
ギリシャで暮らして25年になるというジョエヌル・アベディン会長によれば、ギリシャではすでに大小合わせ15万社ほどの企業が閉鎖に追い込まれている。その中には会長自身が経営するスーパー2店も含まれる。税率の上昇により、観光業が最大の痛手をこうむっている。
バングラデシュ輸出振興局(EPB)によると、今年度初めから11か月で、バングラデシュからギリシャ向けの輸出は、金額にして2820万ドルとなった。昨年度は2720万ドルだった。輸出産品のうち主なものは既製服、エビ、皮革製品、食品、ジュート繊維や袋、履物、タバコなどで、そのうち既製服が最大の輸出品目となっている。
幾日かすればイスラム教徒最大の祭り、イード(イードゥル・フィトル)がやってくる。海外在住のバングラデシュ人たちは、イードの時期に故郷に向けて通常よりも多めの送金をするのが常だ。しかしギリシャでは、政府が今後一週間銀行を休業させる措置を取ったため、今年はギリシャからの送金はままならないかも知れない状況だ。

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(翻訳者:林香理)
(記事ID:430)