女性のこころの健康さえも無視されている
2017年02月02日付 Prothom Alo紙


(1月17日付)男性たちに比べて女性たちはより、こころの不調に悩まされている。しかし、治療を受けている人は少ない。バングラデシュ国内の主な2つの精神病院にある、女性のためのベッドの数もかなり少ない。精神疾患の専門家たちは、こころを病んだ女性が適切な治療を受ける道には障害が―たとえば、世間に対して恥ずかしいと思う気持ちや迷信、家族に無視されるような問題があると考えている。
バングラデシュ国立精神衛生研究所(NIMH)は、一般的な精神疾患の現れ方を知ろうと、今年2つの地域で調査を行った。この調査で、男性女性に関わらず参加者の33%がうつ、不安症状、強迫神経症、統合失調症などのこころの病気にかかっていると分かった。しかし女性のほうが罹患率が高かった。女性たちの37%がこうした疾患のうち、少なくとも一つの問題で苦しんでいるのだ。男性の場合この比率は27%だった。

多いうつ症状
 調査対象となった人たちのうちの13%がうつの症状を訴えた。パブナ精神病院のアハサヌル・ハビブ元院長は、オックスフォード精神医学ハンドブックを引用し、世界中で女性のうつ病罹患率は男性に比べて二倍だと語る。自殺の40%はうつが原因で起こっているという。アハサヌル・ハビブ氏はさらに、女性は月経期間、妊娠時、出産後や閉経期にうつを含むこころの問題が起きやすいという。こうした問題を克服する処置をとらなければ、その後精神疾患を招くことになる。このようにして男性と比べて女性たちの方がより、こころの不調におちいりやすいのである。
NIMHの院長代理を努めるモハンマド・ファルク・アロム教授はプロトムアロに、女性たちはうつや不安、憂い、ヒステリー、または記憶力低下のような症状をより起こしやすいと述べた。出産サイクルの影響ももちろんある。女性には甲状腺の異常が起こりやすく、そのためにこうした症状が出ることもある。
治療が遅れている
バングラデシュ首都ダカのアガルガオに、国立精神衛生研究所の病院がある。最近この病院を訪れてみた。記者が到着したのは昼の12時であった。外来の105番の部屋の前には7人の患者が並んでいた。うち女性はたった一人だった。103番目の部屋の前にも同じような光景が見られた。この研究所とパブナの精神病院の様子から分かるのは、女性たちが診察を受ける割合は男性に比べて少ないということだ。
この病院の外来に2015年の1月から12月までに来た男性患者は、2万1000人以上だった。それにくらべ外来で治療を受けた女性は1万6000人以下だった。入院患者の数では男性が女性の2倍だ。
パブナ精神病院では、外来の患者としては男性よりも女性が多かった。しかし入院患者の数では、男性が女性の約4倍であった。理由を探っていってみると、ベッド数の話になった。バングラデシュ国立精神衛生研究所の病院には合計200床のベッドがあるが、このうち女性用のベッドは推定たったの69床だ。さらに女性用のベッドは子どもの患者が使うこともある。パブナ精神病院では500床のうち女性用はわずか100床にすぎない。モハンマド・ファルク・アロム院長代理の見解では、病院を訪れるのは男性が多いので、自然男性用のベッドが多くなるのだという。しかし、アロム教授は原則的には、原則として、また病気の症状に応じて女性たちのためのベッドや施設、それにスタッフの数も増やす必要があると語る。
一方パブナ精神病院のトンモイ・プロカシュ院長は、プロトムアロの電話取材に、こころの不調を抱える女性たちが多いために病院を訪れる患者も多いが、ベッド不足のために入院できない人が多いのだと答えた。

家族による放棄と世間体
モハンマド・ファルク・アロム教授は、大部分の家庭では男性が主要な稼ぎ手となっているため、男性が病気にかかると早めに医者にかかることが多いと考えている。女性の病気についてはそれほど気にされないことが多い。特に婚家ではそうした傾向が強い。さらに女性が精神疾患にかかると、世間体が悪いといって医師に見せることを躊躇する場合が多い。女性たちも自身の病気に関してよく知らず、病気を隠そうとする傾向がある。
ダカのミルプル地区から病気の娘を連れてNIMHの病院に一人の母親がやってきた。娘は3年間うつ状態にある。しかし、治療が始まったのはわずか2ヶ月前だ。「娘を結婚させなくてはならないので、近所に病気のことを知られないようにしているんです」と母親は言う。しかし症状が悪化したので病院に連れてきたのだと話した。
もう一人、ジナイドホから娘を連れてやってきた母親がいた。母親は娘がHSC(中等教育修了認定試験)に合格したあと結婚させた。しかしその後あまりたたないうちに、娘の口数がめっきり少なくなった。今は全くしゃべらなくなってしまい、ただ悲しげな眼を向けるばかりだという。こんなふうになって6年がたった。「今までは家で直そうとしていたのですが、様子がどんどんひどくなっていくので病院につれてきました。治療費をためなければなりませんでしたし...」母親はそんなふうに語った。
国立精神衛生研究所のモヒト・カマル教授はプロトムアロにこう述べた。「精神の病いのことを理解していない人も多い。女性たちはこころの問題のことを隠さず話すべきです。そして家族はそれが病気なのだと理解しなければならない。適切なタイミングでの治療が大事なんです」

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(翻訳者:大澤由佳)
(記事ID:622)