娘には赤い服を、息子には靴を
2017年07月03日付 Prothom Alo紙


(6月23日付)そのリキシャ引きは若いが、とても落ち着いていた。いろいろ話をする中で、今月は他の月よりちょっと頑張るのだと言った。6歳のまだ小さな娘に、赤い服を買ってやるためだ。1歳の息子のためには靴とシャツを買おうと考えている。家族がイードを迎えるだけのお金がたまったら、ノオガオンの村に駆け付けるのだ。
リキシャ引きのミザン―ミザヌル・ロホマンとミルプルで話をしたのは先週の金曜日のことだった。赤い服を買ってやろうと考えている娘の名前はミムで、息子はアラファトという。ダカの町にそびえる高層建築を横目にリキシャを走らせながら、ミザンはいろいろな話をした。
ミザンの実家はノオガオンのマンダ郡の村にある。そこで食うや食わずの日々を過ごしていた。小学校を終えると学校に行くのをやめた。その前から父親を手伝って畑仕事をしていたが、貧しさは相変わらずだった。大きくなると、村の人の勧めでダカにやってきた。何の訓練も受けないまま、ミルプルにあるジャベド・ミアのリキシャ・ガレージでリキシャを借り、何の訓練も受けないまま通りへ漕ぎだした。
ダッカの街とは、生存競争そのものである。ミザンはそのことを実感している。働くことだけでなく、住むこと、食べることすべてが試練だ。だがこの町には少しは稼ぐチャンスがある。ミザンが自分から語ったことによると、リキシャのオーナーには毎日100タカを納めなければならないし、食費も必要だ。夜は30人から40人ほどがガレージの一室で寝泊まりしている。一室にどうやってそんな大勢が寝るのかと尋ねると、ミザンは笑ってこう答えた。「一列になって、あるやつの頭はこっち、別のやつの頭はこっちって具合にさ。そうやって寝るんだ」
今はリキシャ夫として働いて家計を支えているとミザンは言う。村の両親に毎月2,000タカを送金している。妻や子どもたちの費用は別だ。大変なのは農業銀行の借金返済だ。ローンを組み、3万5千タカで牛を買った。そのローン返済がこれまでにはなかった負担になっている。そんななか、もうすぐイードという時期になった。普段は月のうち半分はダカでリキシャを走らせ、残りは村で働くのだが、今回は断食月が始まってすぐにダカにやってきた。いつもより長く滞在するつもりだ。
「息子や娘はこういったことは分からない。娘は家に行けばパパ、パパって甘えてくる。ダカで赤い服を買ってきて、なんて言うんだ」。服を買うだけの金は貯まったかと聞くとミザンは、「貯まった金で服だけ買えばいいってもんじゃない。米や豆なんかも買っていかなければならないし、全部で5千タカぐらいいるだろう。でも、服を買うまで家には帰らないよ」と答えた。
どこで服を買うのかと尋ねるとミザンは笑って言った。「ミルプルの歩道(に店を出している露天商)をここ数日物色してたんだ。気に入ったやつがひとつふたつある」。息子へは聞くとこう続けた。「息子は1歳。やっとしゃべり始めたばかりだ。靴を買ってやろうと思っている。あの子はそれを履いて歩くんだ」。今度のイードで、自分のためには何を買うのかと聞くと、ミザンはこう答えた。「子供に服や靴を買ってやれたら、それが自分にとってのイードのお祝いさ」

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(翻訳者:高瀬麟太郎)
(記事ID:651)