多くの町には映画館が一つもない
2017年07月18日付 Prothom Alo紙


写真:首都ダカのカロワン・バジャル地区ではプルニマ映画館の取り壊し作業が進んでいる。跡地には高層のショッピングモールが建設される予定
(6月29日付)観光都市コックスバジャルには、娯楽のための映画館がない。以前はこの街には映画館が2つあった。観光で知られるもう一つの町、ランガマティにも映画館がない。ここにもかつては3つの映画館があったのだが。ノルシンディの町も状況は同じだ。ここでも依然あった3つの映画館すべてが姿を消している。ブランモンバリヤでも同様。映画館3つはとじられたまま。ジャルカティ、ノライル、ポンチョゴル、ムンシゴンジョ県にも県庁がおかれている町に映画館はない。
バングラデシュの各地で映画館が次々と姿を消している。映画館の所有者たちは建物を取り壊し、代わりに高層のショッピングセンターを建設している。良質の映画が少なく、客が集まらないために映画館の営業が立ちいかなくなっている、というのが経営者たちの言い分だ。
90年代の初めには全国に合わせて1435の映画館があった。だがそれ以降は減り続け、現在は400台にまで落ち込んでいる。過去20年、映画専門の新たな施設はひとつもできていない。映画関係者たちはこの悲惨な状況を、映画産業への警鐘と感じている。
バングラデシュ映画上映者組合のカジ・ショエブ・ロシド事務局長は、映画製作本数の減少が現在の状況を作り出した原因だと言う。「映画産業には競争原理が存在しません。今年のイードに合わせて公開された映画はたったの3本です。映画館主たちはこの3本を上映するしかないのです」

多くの映画館は記憶のかなたに
首都ダカやその近郊では、次から次へと映画館が閉鎖されている。ダカ旧市街ではグリスタン、ナージ、ムーン、ムクル、エレファントロードのモッリカ、ショドルガート地区のループモホル、アルマニトラのシャビスタン、バシャボのオティティ、アゴモン、ギャリソン、イスラムプルのラヨン、モウロビバジャル(オールドダカの)タージモホル、ポストゴラのメグナ、ジョムナ、ダエナ、スリノゴルのジュムル、ナラヨンゴンジョのミノティなどが姿を消した。このうちポストゴラに1964年にできたダエナは座席数1200で、当時最大の映画館だったが、2007年ごろ閉館となった。最近ではカロワン・バジャルのプルニマが営業を停止した。
かつては首都に続いてチョットグラム(チッタゴン)、タンガイル、ボグラ、シラジゴンジョ、ジョショルが映画ファンの天国との異名をとっていた。このうちタンガイル地区には2000年までに計47の映画館があったが、今も生き延びているのは12館に過ぎない。
映画上映者組合のミヤ・アラウッディン元事務局長提供の資料によれば、港湾都市チョットグラムでは、この20年に20の映画館が閉じた。オロンカル、ラエンス、シャナイ、ロンゴム、シャゴリカ、クルシドモホル、ヌプル、ジョルシャ、グルジャル、ウポハル、リズム、アカシュ、メロディ、シネマ・コルノフリなどが次々と閉館になった。
一方西部のジョショルはかつて「映画館の町」として知られていた。この町には21の映画館が存在していた。今も営業を続けているのは6館だけだ。同じ西部の中心都市ラジシャヒで定期営業を行なっている映画館はたったひとつだ。5年前まであったウトショブ、スリティ、ボナニ、ボルナリそれにコルポナは姿を消した。シラジゴンジュ県ではかつての31館のうち今もあるのは7館だけだ。
バングラデシュのもうひとつの大都市、クルナにはかつて映画館が11あったが、今は4館となっている。1964年、クルナのウッラシニ館ではバングラデシュ最初のトーキー「ムク・オ・ムコシュ(顔と仮面)」が封切られた。この歴史ある映画館はしかし、今から10年ほど前に閉館となり、今は倉庫として使われている。同じくクルナのソサエティー・シネマホールでは時おり演劇も上演された。この他閉鎖された映画館の中にはピクチャーパレス、チトラリ、リバティー、ジヌク、ボイカリなどがある。ションコ・シネマホールはかろうじて営業を続けていて、他にはションギタ、ミナッキ、ジョノタ・シネマホールが現存している。クルナ県全体でみると、ドゥムリヤ郡では唯一の映画館が閉館になっている。ネトロコナ県の県庁所在市ではたった一つの映画館ヒラモンが、またナトルではシャヤバン映画館が最近営業を終えた。シレットでは7館あったうちのひとつだけが、またロングプルでは5館の中で1館が生き延びている。この他ディナジプル、フォリドプル、マニクゴンジョ、ネトロコナ、ジャマルプルではそれぞれ一つだけの映画館で定期的に興行が続けられている。

映画が作られないので観客もいない
映画の製作、出資、上映、配給の関係者たちが口を揃えて言うのは、国の支援不足、近代的な研究機関の不在、映画についての優秀で経験を積んだ人材と良質の映画の不足が、映画館の大きなスクリーンで映画を観たいという観客の意欲を減退させているということだ。それに加え各家庭のテレビで衛星放送が見られるようになっていること、また海賊版のビデオの横行が映画館の需要を減らしている。
映画館の減少について、プロトム・アロ紙は映画を管轄する情報省のハサヌル・ホク・イヌ大臣に意見を求めた。「私自身も映画館のことを心配しています。映画産業そのものが崩壊の危機に瀕したこともありました。しかし私たちは決してこの問題について無関心ではありません。いろいろな考察を開始しています。また映画館の質的向上を目指した予算措置にも着手しています。将来的には良い結果が得られるだろうと思っています」
映画館の経営者たちは、今は国産の映画だけで映画館を維持していくのには無理がある、と言う。家庭のテレビで衛星放送を通じてインド産の映画を観られるのに、映画館ではインド映画を上映していないため、観客を集めることができないのだ。バングラデシュ映画上映者組合のカジ・ショエブ・ロシド事務局長は、プロトム・アロ紙に次のように語った。「以前バングラデシュでは年に90本から100本ぐらいの新作映画が封切られていました。しかしこの数年の間に、その数は半減しています。また新作映画も現代社会に沿ったものではありません。そのため映画館への来場者が日ごとに減ってきているのです」
しかしバングラデシュ映画監督協会のモンタジュル・ロホマン・アクタル共同議長は逆に、映画館の方にこそ問題があるのだと言う。「バングラデシュ映画産業がこれほどひどい状況になったのは映画館経営者の責任です。スクリーンがひどいし、座席も今の世の中にふさわしいものではありません。それに映画を上映するのに映画館側には何のコスト負担もありませんが、製作費全部を負担しているにもかかわらず、我々の手に入るのは売り上げの24%にすぎません。その金だって映画館主たちは何年も支払いをしぶるのです」。モンタジュル・ロホマン・アクタル氏は映画監督として興行的に成功した映画を何本も製作している。またプロデューサーとしても活躍している。優れた俳優が足りない、主役級の俳優たちの演技力が不足している―同氏によるとそんな問題もあるという。
一方映画俳優協会の会長を務めるミシャ・ショオダゴル氏は、バングラデシュ映画の危機的状況を打破する唯一の方法は、映画産業全体の立て直しだと考えている。「映画館経営を目的とした低金利での貸し付けを行うべきです。またショッピングモールばかりでなく、各大学にシネマ・コンプレックスを作ることが必要です」

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(翻訳者:鈴木麻友)
(記事ID:674)