ピラミッド、倒壊の危機か?!(アル・アハラーム紙)
2005年12月22日付 Al-Ahram 紙

■ ピラミッドの石の一部が崩落・・・危険な状態なのか?
■ ファールーク・ホスニー文化相:「エジプトのピラミッドは元気だ。崩落は侵食が原因」
■ ピラミッドの内外の状態について総合的な報告を行う委員会を組織

2005年12月22日付アル・アハラーム紙(エジプト)HP文化欄

 数日前、エジプト市民は新聞各紙の一面で小さく報じられたニュースに目を見張った。「クフ王のピラミッドで起きた石の崩落は侵食が原因」・・・この10行を越えない程度の小さな記事は、まるでその巨大な石が自分たちの頭上に落ちてきたかのような衝撃を読者に与えたのだった。
 ピラミッドは4000年以上の間、エジプトとエジプト人の象徴であり続けてきた。国が治療や救命のあらゆる努力を尽くすこと無しにピラミッドが病んだり老いたりするなどということは、だれにも想像できない。ピラミッドは危険な状態にあるのだろうか? 世界の七不思議に数えられ、人々の心を歴史や物語や神話の数々で魅了し続けてきただけでなく、1979年以来ユネスコの世界遺産にも登録されて保護の対象となっている世界最大のピラミッド、クフ王のピラミッドの健康状態を示すなんらかのサインがこの石の崩落には込められているのだろうか?

 目撃者の証言によれば、事件は去る火曜日の夜に起きた。ピラミッドへの入場門を閉じ、警備員たちがくつろいでいたところに、何か物体が地面にぶつかる音が聞こえた。急いで駆けつけると、ピラミッドの北面から石の塊が落下しているのが発見された。ところがここで目撃者の証言に食い違いが生じており、これはよくあるささいな出来事だと考古学関係者が言うのに対し、警察は事件として調書の作成を主張、実際に調書を提出する一方、考古学関係者たちもまた別の報告書を最高遺跡評議会に提出したという。

 これは見過ごすことのできない重大事であるため、本紙調査班は最高遺跡評議会の議長を務めるファールーク・ホスニー文化相にインタビューを敢行、ピラミッドは危険な状態にあるのかと質問した。文化相は「クフをはじめエジプトのあらゆるピラミッドが危険に晒されているなどということはありえない」と即答、「4600年以上も永らえてきたこのピラミッドに損傷が加えられるなどということはあってはならないし、そんなことになったらエジプト国民だけでなく世界中から我々が裁かれることになる。しかし実際に起きたのは北面から小さな石の塊が落下しただけのことで、ピラミッド全体の大きさからすれば何の影響もない」と語った。

 「よく知られる通りピラミッドは0.5~2.5トンの石を100万個以上幾何学的に組み合わせて構築されており、全体が崩落することはあり得ない。ピラミッドに人々がよじ登るために石の一部が落下することがかつてはよくあり、遺跡保護の観点から禁止した。他にも外側の部分が劣化して時折落下することは確かにあり、これには気候の変化や冬の風の影響に加え、侵食による石の劣化が考えられる。これが人々に恐怖心を抱かせるのであろう」とも述べた

 続けて文化相は、「140メートル近い高さがあるピラミッドは間違いなく侵食や気候変動の影響に晒されるため、外壁だけでなく内部の石や回廊にも定期的な整備が必要である」と述べ、70年代以降、外壁の補修や補強がストップしたという新聞の報道を否定し、ピラミッドが危険ならばエジプトの他の遺跡はどんなありさまか、と繰り返す声が上がっていることにも考慮して、ピラミッドを守るためにあらゆる措置が講じられると強調した。同時に、エジプト考古局長のサブリー・アブドゥルアズィーズを委員長とする委員会が結成され、この事件およびピラミッド内外の状態、外壁の補修作業が本当にストップされていたのかどうかについても調査し報告することになった。(中略)

 最後に、エジプト遠征を率いたナポレオンの言葉にならって言いたい。ナポレオンはピラミッドを前にして、圧倒されて息を呑み、こう言ったという。「この建築物は偉大だ。時の流れや天変地異に挑んできた」。ピラミッドはこれからも挑み続けることができるだろうか、外壁の補修の停止や老いや侵食、中からも外からも謎を暴いてやろうとよじ登る者たちをものともせず。


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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:1562 )