イランの新たな提案:ラーリージャーニー、ウィーンへ シャルグ紙
2005年08月27日付 Sharq 紙

2005年8月27日付シャルグ紙1面
【政治部=ニールーファル・マンスーリヤーン】ヨーロッパ三カ国がイランとの交渉をキャンセルしたことが契機となって、国家安全保障最高評議会の新たな書記であるアリー・ラーリージャーニー氏は木曜日、ムハンマド・アルバラーダイー(エルバラダイ)IAEA事務局長との会談のためにウィーンへと出立した。

 ラーリージャーニー氏は、国家安全保障最高評議会書記としてはじめての外遊でIAEAが置かれているウィーンを訪問する前に、核交渉が英仏独三カ国に限定されていることを批判し、イランはIAEA理事会メンバー35カ国すべてとの交渉を歓迎する旨表明した。IAEA理事国すべてとの対話を歓迎するとのこの表明は、アリー・ラーリージャーニー書記が数日前に言及していた「核問題に関する新たなイニシアティヴ」の一部をなすものであると考えられる。同書記は、ウィーン外遊前に行われたインタビューの中で、「マフムード・アフマディーネジャード新大統領は、イランの原子力活動継続のあり方について、新たなイニシアティヴをとることを考えており、新内閣の発足・始動とともに、このイニシアティヴの詳細を一つのまとまったパッケージとして検討・提出する予定である」と語っていた。

 8月15日に、16年にわたり国家安全保障最高評議会書記の地位にあったハサン・ロウハーニー師の後継者となったアリー・ラーリージャーニー氏は、ヨーロッパは問題を引き起こそうとするのではなく、相互理解・関係の拡大を模索することで、互いの利益を確保するという理性的アプローチをとり、もって両者間の信頼を醸成するべきだと強調し、さらにヨーロッパとの核交渉の構造・枠組みには深刻な問題が存在するとの認識を示していた。もちろん、ヨーロッパとの核交渉の枠組みに対するアリー・ラーリージャーニー書記の批判は目新しいものではなく、国家安全保障最高評議会の書記に就任しイラン核問題の責任を負う以前から、同氏は幾度となく核交渉団に対して批判を行ってきたことも事実である。

 いずれにせよ、もっとも厳しい状況下で核問題の舵取りをまかされたラーリージャーニー氏は、同問題の最高責任者として、昨日ムハンマド・アルバラーダイーIAEA事務局長と会談を行った。メリッサ・フレミングIAEA報道官によると、会談ではIAEA査察官による核施設への査察、イランとヨーロッパの交渉の現況、そしてイラン核問題解決へ向けたイラン側の最新の見解・提案を中心に話し合われた模様である。

■ 原子力のアパルトヘイトには反対だ
 アリー・ラーリージャーニー氏は昨日、IAEAが置かれているウィーンでムハンマド・アルバラーダイー氏と会談した後、イランは1ヶ月以内に自らの原子力活動に関して、ヨーロッパとの交渉用に新たな提案を行う予定であると語った。同氏は、マフムード・アフマディーネジャード大統領が新たな提案の枠組みを作るのには最低1ヵ月はかかるだろうとの見方を示した。同氏はまた、イランはありうべき国連安保理付託という脅しを恐れてはいないとも語った。

 イラン国営通信(IRNA)によると、同氏はまた「イラン核問題を安保理の問題とすることは、アメリカにとってもその他の諸国にとっても利益とはならない」と述べた。その上で、ラーリージャーニー氏はオーストリアの首都ウィーンでの記者会見で、「われわれはヨーロッパとの協議が、ともに勝者となるような《ウィン=ウィン》のゲームであるべきだと信じている。どちらか一方が勝ち、一方が負けるという《ウィン=ルーズ》のゲームを行うつもりはない」と語った。同氏はまた、原子力の平和利用技術を獲得することは、イランをはじめとする諸国にとって正当な権利であり、また必要性にもとづくものであると述べた上で、「化石燃料は枯渇しつつある。世界の諸国が原子力エネルギーをより必要とし、より活用する時代は、将来必ず来る」と付け加えた。

 同氏はさらに〔一部の核燃料生産国はOPECのようなカルテルを作ろうとしている、これは原子力のアパルトヘイトであると批判した上で〕、「原子力の平和利用技術の所有はすべての国の権利であるにもかかわらず、このような願望が実現されてしまえば、その他の国々はこの権利を奪われてしまうことになる」と述べた。
〔*注:上記の〔〕内は、シャルグ紙記者が誤って記述漏れをしたものと文脈から判断し、ハムシャフリー紙その他を参照した上で、訳者によって補われたものである〕

■ ヨーロッパとのさらなる交渉の可能性
 他方、イラン学生通信(ISNA)によると、ラーリージャーニー氏はEUとさらなる交渉を続ける可能性を否定しなかった。同氏はヨーロッパ三カ国以外の諸国も協議に参加した方が良いと感じていると述べ、このことに関して、特別な条件下でイランが核燃料に関連した活動に従事できるようにするとの南アフリカの提案に、特に言及した。国家安全保障最高評議会書記はヨーロッパとの話し合いと並行して、その他の国々もイランの協議対象国となるべきだと述べ、またムハンマド・アルバラーダイー事務局長と有益な協議を行うことができたと強調した上で、「イランにとって基本的なカウンターパートとなるのは‥‥IAEAである」と続け、さらにアルバラーダイー氏にも触れて、「第一の交渉相手はIAEAであり、彼〔アルバラーダイー〕であるべきだ」との見方を示した。

 同氏はさらに、イランは同国の原子力計画をめぐる未解決問題の解決ヘ向けた努力をレベルアップするためには、どのようにしたら良いかについて、アルバラーダイー氏と協議したと述べた。同書記は、イランはウラン転換作業を続ける予定であり、再び停止させることはないと強調し、エスファハーンでのウラン転換施設の再稼働は既成事実であるとの見方を示した。同氏はまた、イランは「原子力のアパルトヘイト」には反対であるとも付け加えた。

〔以下略〕

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:753 )