「ナタンズでのウラン濃縮活動は開始しない」:アーセフィー外務報道官 シャルグ紙
2005年08月08日付 Sharq 紙

2005年8月8日付シャルグ紙2面(イラン面)

【政治部=ニールーファル・マンスーリヤーン】アーセフィー外務報道官は昨日、新政権発足以来はじめての記者会見に臨んだ。その一方で、イランは先週より、核問題をめぐって新たに二つの問題に直面している。一つはエスファハーンのUCF(ウラン転換施設)の稼働であり、もう一つは金曜日に4日遅れでイラン側に提示されたヨーロッパの包括提案である。それゆえ、ハミード・レザー・アーセフィー外務報道官の昨日の記者会見は、これらの問題についての回答を含むものであった。「ヨーロッパのイランへの提案に対して、本日イランがヨーロッパ側に回答する」、一部報道とは異なり「ナタンズでのウラン濃縮活動は開始しない」、そして「エスファハーンのウラン転換施設の活動開始時期を公表する」、これらが昨日のアーセフィー外務報道官の記者への回答で、もっとも重要な内容であった。

■ イラン、今日ヨーロッパに回答
「イランは本日、核問題に関するヨーロッパの提案に対して回答を行う」。ハミード・レザー・アーセフィー外務報道官は昨日、このように発表した。同報道官及び他の核問題交渉団のメンバーらは、金曜日にイラン当局へ4日遅れで手渡されたヨーロッパの提案は、イラン側の最低限の利益すらも保証されておらず、受け入れ可能なものではないと述べており、本日イラン側よりヨーロッパに送付される予定のヨーロッパ包括提案への回答は、否定的なものとなる模様である。これまでもイラン政府はヨーロッパ三カ国に対して、彼らが提示する提案においては原子力の平和利用活動を確保する権利を最低限の要求として正式に認めるべきであるとしてきたが、ヨーロッパ側より提出された提案は、「イランは燃料サイクル活動に従事するべきではない」との要求を含むものであった。このため、外務報道官は昨日、新政権が発足してからはじめての記者会見で、ヨーロッパの提案の受け入れの可否の理由について、次のように表明した。「この提案では、三つの事柄が触れられていない。これらに注意が向けられていないことは、ヨーロッパ提案にとって欠点であるといえる」。

■ ヨーロッパ提案の欠点
 アーセフィー外務報道官はその上で、ヨーロッパ提案の欠点について詳述した。同報道官は、客観的な保証措置について触れられていないことを、ヨーロッパ提案の第一の問題点として挙げ、この点ヨーロッパ提案では肝心な点が抜け落ちていると述べた。アーセフィー外務報道官はさらに、ヨーロッパ提案の第二の問題点として、次のように指摘した。「われわれはヨーロッパに対して、安全保障、政治、その他の分野で、われわれに対して確固たる保証を提示するよう求めてきたが、彼らが提示した提案にそのような保証は見当たらず、イランに対して確固たる保証が与えられているとは言えない」。

 さらにアーセフィー外務報道官は、ヨーロッパ提案の第三の欠点に関して、「燃料サイクルについてヨーロッパ三カ国が触れていないこと」を挙げた。同報道官は次のように述べた。「恐らく、ヨーロッパ側はこの問題に関心を払わなかったのだろう。燃料サイクルについて、誤解をしている可能性もある。思うに、ヨーロッパ提案の第34項でexclude(除外する)ということばの代わりに、include(含む)ということばを用いていたならば、提案に何ら問題はなかったし、ヨーロッパの提案についてある程度話し合うことも可能だっただろう」。

 アーセフィー外務報道官は改めて、ヨーロッパ側がイランにおける燃料サイクルの問題に関心を払っていないことを強調した上で、再びヨーロッパの提案は受け入れ不可能であり、表面だけを取り繕った中身のない提案であると評した。

 アーセフィー報道官は、ヨーロッパの提案では医療や電力プラント、経済その他の分野での協力については言及があったとしながらも、必要不可欠な客観的な保証措置については、同提案では明瞭ではなく、これらの点を総合すると、ヨーロッパ提案はイランにとって受け入れ可能なものとはなっていないと述べた。同報道官はまた、イランが〔核〕爆弾製造を決定したとここ数日海外メディアが報じていることに関し、彼らはそうすることでヨーロッパ提案の非合理性を隠蔽しようとしていると批判した。

■ エスファハーンのウラン転換施設の稼働開始の時期

 他方、ヨーロッパの提案提示の遅延が明らかとなった後に、イランがエスファハーンのウラン転換施設の稼働開始を宣言したことも、昨日のアーセフィー外務報道官の記者会見でのテーマの一つであった。先週イラン側からこのことが宣言された際には、各国首脳からイラン当局に対し同決定を見直すよう要請する旨の接触があり、各国から多くの反応が起きた。ヨーロッパからも、IAEAの監視の下でエスファハーン施設の封印を解くとのイランの決定に対して、そのようなことが行われた場合には、イランを国連安保理に付託する可能性もありうると警告があった。こうして、イランとヨーロッパは先週、エスファハーンの施設の稼働に関し、互いに何通もの書簡を送付しあい、互いの意見を提示・応酬した。

 いずれにせよ、アーセフィー外務報道官は昨日、このことについて次のように語った。「われわれが何度も述べているように、エスファハーンの施設は〔核〕爆弾や〔核〕兵器とは何らの関連性も見出せないものである。われわれは同施設の生産物を、関心のある国に輸出する用意もあるとさえ言っている」。〔*なお、ウラン転換物質をロシアに輸送し、そこで原子力燃料として濃縮した上で、イランの原子力発電所に用いるという解決案が模索された時期もあった〕

 同報道官はIAEAの査察官がイランを訪れることについても触れ、次のように述べた。「現在IAEAの代表者がイランを訪れており、同機構の技術者たちも明日の朝にもテヘランに着く予定だ。追加のカメラなど、追加設備が取り付けられ次第、エスファハーンのウラン転換施設の稼働が始まることになっている」。IAEAの報道官も、土曜日にエスファハーンのサイトを監視するためのカメラを設置する目的で査察官をイランに派遣したことを伝えている。アーセフィー報道官は、エスファハーンでの活動開始は、三名のIAEA査察官の到着の時期によるとする一方、エスファハーンのウラン転換施設の稼働は早い時期に始まるだろうと述べた。同報道官はさらに、「エスファハーン施設の稼働開始の時期については、本日午後までに発表する予定だ」と付け加えた。

 もちろん、アーセフィー報道官は、イランは依然として、さまざまな問題に関してヨーロッパ側と協議することに関心を持っていると強調することも忘れなかった。アーセフィー報道官は続けて、エスファハーン施設での生産物はどの国に輸出する予定なのかとの問いに対しては、「同施設の生産物の購入に関心のある全ての国に、われわれは輸出する用意がある。この生産物に対する需要は多い」と答えた。

■ ナタンズでの活動は開始しない

 ここ数日間一部メディアや識者らがエスファハーンのウラン転換施設とは別に注目していた問題として、ナタンズでのウラン濃縮施設稼働開始問題がある。彼らは、IAEA緊急理事会が開かれた場合には、イランは直ちにナタンズでの活動を開始するだろうと指摘してきた。しかしハミード・レザー・アーセフィー外務報道官は昨日、次のように述べて、この見方を否定した。「現在のところ、ナタンズ〔でのウラン濃縮活動〕はわれわれの予定には組み込まれていない」。さらに「イランでの濃縮活動はまだ始まってはおらず、依然として停止状態にある。エスファハーンで行われようとしているのは、濃縮活動のほんの一部に過ぎない」。

■ 緊急理事会の開催には法的根拠がない

 アーセフィー外務報道官は予定の8月1日より4日遅れで提示されたヨーロッパ側の包括提案に関して、次のように話を続けた。「ヨーロッパ三カ国の提案は〔2003年10月にイランがNPT追加議定書の締結を約束した〕テヘラン宣言、〔2004年11月の〕パリ宣言、NPT、そしてこれらに関するすべての原則や協議に反するものである。われわれは自らの当然の権利を放棄することはできない。われわれがこれまでさまざまな協議や話し合いを我慢強く続けてきたように、自らの権利を守ることについても、妥協することなく、それを追求していくつもりである。このことは明日朝にもはっきりするだろう。総じて、30ページ近くにも及ぶヨーロッパ側の提案は、その雰囲気からして、われわれに提案を受け入れないように仕向けたものである」。

 同報道官はさらに、イランはヨーロッパ提案を受け入れるべしとの一部ヨーロッパ諸国の脅迫めいたスタンスに関し、次のように強調した。「われわれはこれまで何度も言ってきたように、イランは脅迫的なことばについては、熟知しておらず、それゆえ、そのようなことばがイランに向けられたとしても、あまり効果はないと思う。この問題に関してより効果的なのは、協力であり、協力関係を進めようとする態度である」。

アーセフィー報道官は、これまでもヨーロッパ側に対して脅迫めいた言動はやめるよう言ってきたと述べた上で、次のように続けた。「ヨーロッパ三カ国によるIAEA緊急理事会開催の要求には法的な根拠はないが、たとえそれが開かれたとしても、われわれはまったく心配していない。今後どのような道を選ぶかは、彼らがしなくてはならない選択である。対話の道を選ぶか、あるいはその他の道を選ぶか、いずれにせよわれわれは、全ての選択肢に対応する用意はできている」。

 フランスは、エスファハーンの施設稼働開始をイランが宣言した後、最初にIAEA緊急理事会の開催を要求した国であり、この要求に従い、明日IAEAの所在地であるウィーンで緊急理事会が開かれる予定である。

■ 別の道を選択する
 
 アーセフィー外務報道官が昨日述べたもう一つの問題に、イラン核問題の国連安保理付託問題がある。同報道官は改めて、イランはヨーロッパ三カ国と協議をすることに関心を持っていると強調し、次のように付け加えた。「もしヨーロッパ側が協議に関心を持っていないのであれば、われわれとしても別の道を選択することになるだろう」。

 アーセフィー報道官は核問題の国連安保理への付託について、別の観点からも見解を述べた。同報道官の考えによると、安保理付託問題はIAEA理事会では提起されないだろうという。というのも、そのためのメカニズムは事実上存在しないからだ。もし仮にいつの日かそのようなことが起こるとしても、このことに心配する必要はないだろう、とのことである。アーセフィー報道官はこう述べた後、もしヨーロッパがこのようなことを望んでいるとしても、その結果がどうなるかきちんと確かめてからした方がよい、とヨーロッパ側に向けて注意を喚起した。

〔以下、対米関係、対カナダ関係、アクバル・ギャンジー氏の健康状態に関するイギリス側の懸念に対するイラン側の反応、バシャール・アサド・シリア大統領のイラン訪問などについてのアーセフィー外務報道官の発言が報じられているが、割愛する〕

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:620 )