レバノン南部カナでイスラエル軍の空爆により民間人虐殺(アル・ナハール紙)
2006年07月31日付 Al-Nahar 紙

■ イスラエル、虐殺の正当化と48時間の停戦合意の間で揺れ動く
■ カナの子供たちが国際社会の立場に変化もたらす
■ レバノンは犠牲者のもとで団結、交渉を拒否

2006年07月31日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 1996年のカナにおいても、2006年のカナにおいても、イスラエルは同じ血まみれの方法をとった。今回は、対レバノン戦争開戦から19日たってもヒズブッラーの殲滅に失敗していることの埋め合わせをするための最も暴力的な焦土作戦であった。

 第2次カナ虐殺は、7月12日以降に南部住民を標的として様々な場所で起きた一連の虐殺の「新たな過剰な一コマ」に他ならなかった。1日とて複数の家族が全滅させられることなく過ぎた日はないのである。しかし昨日の朝に発生したカナの虐殺が明らかにした人道的な悲劇は、その人的犠牲があらゆる想像を超えていたために世界中を揺るがした。数十人の子供たちが瓦礫の下で落命する驚くべき光景をカメラやレンズが伝えると、国際社会の姿勢は一気に変動し始めた。

 昨夜までに62人が犠牲になり、そのうち42人は子供で、子供のうち15人は障害児という悲惨な結果となった。今日の死体捜索が終われば、犠牲者の数は65人を超える恐れがある。目撃者の証言によれば、イスラエル空軍は土曜から日曜にかけての真夜中1時頃にカナ村のハリーバ地区に対して破壊的な爆撃を行い、建物3棟を完全に破壊した。そして虐殺の発生した建物は背後から直撃を受け、その内部は避難所になっており数十人の避難民がいた。その殆どが子供と女性であった。

(中略)

■ 正当化か...休戦か

 カナで起きた虐殺が恐怖を巻き起こすなかでイスラエルのエフード・オルメルト首相は、レバノンにおけるイスラエルの軍事作戦は「承認を得た指示に従って」続行されると述べ、アメリカのライス国務長官に対し、イスラエル国家が対ヒズブッラー作戦の目標を実現するためには10日から15日が必要であると伝えたことを明らかにした。またレバノン南部への展開が提案されている国際部隊は、警戒を要するあらゆる地域(シリアとの国境、港湾や空港)に展開し、少なくとも1万人の兵士が必要であるとの見方を示した。ライス国務長官は、「停戦が成立する場合にも、現在の戦争以前の状況に戻すつもりはない」との意向をあらためて明らかにした。イスラエルの政界筋によるとライス国務長官はオルメルト首相に、カナ爆撃に対する悲しみを表明し、「カナで起きたことについては大変悲しい」と述べたとのことである。

 イスラエル軍ラジオ放送が伝えたところによればイスラエル軍作戦支部長のガーディー・アイゼンコット将軍は、イスラエル軍の見通しによるとイスラエルがレバノン南部に設置する意向である安全保障地帯は水曜日に完了する予定であると述べた。そしてこの安全保障地帯は「2キロメートル幅で、その中にはヒズブッラーのいかなる基盤も痕跡も存在しないようになる」と述べた。

 イスラエル軍はカナの虐殺の責任を逃れようとして昨夜、「イスラエル空軍はカナの建物が倒壊したときには爆撃していない」と主張し、中にあった武器や弾薬が爆発したのだとほのめかした。イスラエル空軍参謀総長であるアミール・イシル将軍は、戦闘機による爆撃から建物が崩壊するまでの時間差について説明し、そのことについて疑問を提起しようと試みた。テルアビブでの記者会見では、「(カナ村にある)この建物がある地区に対して、我々は夜中の12時から1時の間に爆撃を行った。それは事実だ。しかし、なぜ建物が朝の8時頃に倒壊したのかは、我々には明らかではない。そのことをどう説明できるか私には分からないが、もしかすると建物の中に兵器があったために、それが爆発して建物が倒壊するまでに長く時間がかかったのかもしれない」と述べた。そして「イスラエル空軍は昨日の朝7時半にカナ村を爆撃したが、爆撃現場は倒壊して市民が犠牲になった家の場所から460メートル離れていた」と付け加えた。

 イスラエルのアミール・ペレツ国防相はこれに先立って、カナ爆撃に関する調査を軍に命じたと発表した。イスラエルのメディアに対してイスラエル空軍筋は、「空軍パイロットに情報を提供したのは情報機関である。したがってカナ村で起こったことについて回答と説明を行うべきなのは情報機関である」と語ったという。

 しかしカナ村の住民と目撃者は、ヒズブッラーの戦闘員や武器は村内にはない、カナ村は国境沿いの村ではない、と断言した。

 虐殺の発生にもかかわらず、各地に対するイスラエル軍の爆撃は続行された。一番最近の爆撃は昨夜、マスナア[※シリアとの国境地帯]に対して行われた。いっぽうヒズブッラーはイスラエル北部をミサイル攻撃した。イスラエル軍は、ヒズブッラーが発射したミサイルの数は56発に達したと伝えた。イスラエルの攻撃が始まって以来もっとも多い数である。

■ レバノン国軍の介入

 トゥッファーフ地方のレバノン国軍第8旅団本部はイスラエル空軍の爆撃を受け、兵員輸送装甲車が炎上したが、負傷者は出なかった。

 ベカーア高原では、ヤンムーナに着陸しようとしたと見られるイスラエル軍ヘリコプター4機に対してレバノン国軍が対空砲による反撃を行った。その後この地域に対してイスラエル軍が空爆を行った。

 イスラエル軍戦闘機の爆音はベイルート上空においても、真夜中を過ぎても聞こえていた。AFP通信社によればアメリカのアダム・エレリー国務省報道官は、「カナ村の爆撃について調査が行われるまで48時間、イスラエルはレバノン南部への空爆を一時停止した」と述べた。ライス国務長官がエルサレムにおいてイスラエル政府高官と会談した後、エレリー報道官は報道陣に対して、「イスラエルはレバノン南部における空軍の活動を48時間停止することに同意した」と述べた。そして「イスラエルは国連との調整により、地域からの退去を望む市民のため24時間にわたって安全な通路を確保することができる」と付け加えた。

■ 安全保障理事会

 いっぽう国連安保理は、イスラエルによるカナの虐殺に対し、昨日の真夜中に到るまでいかなる立場も表明していない。アメリカが「民間人の被害を遺憾に思う」との議長声明ないし記者会見声明にとどめることに固執したためである。

 国連安保理はコフィ・アナン事務総長がイスラエルのカナ村攻撃に対する非難と即時停戦を要請したことを受けて始まった協議を継続することが決定していた。アナン事務総長の呼びかけに対して世界中から反響があり、ヨーロッパのほぼ全ての国々から停戦の呼びかけがなされた。またローマ法王ベネディクト16世、フランスのジャック・シラク大統領、イタリアのロマーノ・プローディ首相、アイルランドのバーティ・アハーン首相とEUの高官らが停戦を呼びかけた。

 いっぽうアメリカのジョージ・ブッシュ大統領は、恒久的停戦を望んでいるとあらためて述べた。イギリスのトニー・ブレア首相もブッシュ大統領と同様の立場を示し、レバノン南部における「永遠に」続く停戦を望むと語った。情報によると、停戦と危機解決の政治的枠組みを形成するための包括的な決議を採択する方向性が支配的になるなかで協議は真夜中過ぎまで続き、フランスが決議案を提出した。フランスのフィリップ・ドストブラジ外相は今日、開戦以来3度目のベイルート訪問を行い、レバノン政府高官に決議案の内容について報告し、フランスがレバノンと連帯する意志であることを表明する予定である。



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( 翻訳者:新谷美央 )
( 記事ID:3232 )