イスラエルによる封鎖にレバノンが国連への抗議を決定 封鎖は数日中に解除の見込み(アル・ナハール紙)
2006年09月05日付 Al-Nahar 紙

■ レバノン政府が安保理への抗議、ヒズブッラーは国際部隊の任務拡大に反対
■ レバノン:封鎖解除の後は国連レバノン暫定軍(UNIFIL)による海上監視に賛成
■ イスラエル:アナン国連事務総長の報告書に先んじるべく2週間以内の撤退完了を急ぐ

2006年09月05日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 イスラエルによるレバノン封鎖の解除を求め、議員が広汎な「国会外交」を活発化させるために議会での泊り込みを始めてから4日目に入った昨夕、泊り込みを行っている議員らによる「提案」が閣議で可決された。これはイスラエルが封鎖を継続し、安保理決議第1701号に違反していることに対し、国連安全保障理事会に抗議を行うよう提案するものである。ただし現在の状況下では安全保障理事会の開催は要求せず、封鎖と抗議に対して国際社会が立場を明確にするのを待つとしている。

 その他閣議で可決された主要な決議は、海上監視問題の実施形式のあり方に関するものである。すなわち、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)部隊の支援を要請して港湾施設の監視にあたるために、空港および港湾の開放を条件とするものである。これに関連して、レバノンはイスラエルによるベイルート国際空港と港湾の封鎖を1週間以内に解除するよう求めるとの書簡を国連に対して送ることが決定された。レバノンは領海の監視のため国軍に加えてUNIFIL部隊の支援を要請することになっているが、実行作業は国軍の要請に基づき、国軍の司令と監督によって行われる。海上でのUNIFILの活動場所はレバノンの海岸線から6マイル[※訳注:10キロメートル弱]の海域に定められた。

 ヒズブッラー系の閣僚であるムハンマド・フナイシュ大臣とトゥラード・ハマーダ大臣の2人は、UNIFILの任務をレバノン南部地域以外へ拡大することに反対していたが、閣議ではこの書簡を国連へ送ることを過半数の賛成で可決した。情報によれば閣議では激しい議論が交わされ、この問題について意見の相違が爆発する寸前に到ったが、ムハンマド・ジャワード・ハリーファ保健相を通じてナビーフ・ビッリー国会議長が提案した解決策が承認された。

 内閣関係者によれば、海上監視にあたってUNIFILに国軍への支援を要請することはイスラエルによる封鎖を解除するために政府が要望していたものであり、閣議で承認された解決策によって封鎖解除の実施は1週間以内すなわち数日中に実現するかもしれないとのことであり、複数の閣僚も同様に述べている。

 また閣議では、イスラエルが昨夜から今日の間にかけてレバノン南部の複数の占領地点から撤退し、そこへUNIFILが展開、その後今日からレバノン国軍への移管が開始される、とUNIFIL司令部がレバノン側に対して確言したことがイリヤース・アル=ムッル国防相とミシェル・スライマーン国軍司令官から報告された。UNIFIL司令部は、イスラエルが「ブルー・ライン」後方まで全段階の撤退を終えるのは2週間以内と予測している。

ある閣僚筋は封鎖解除が近いとの楽観的予測を表明し、閣議で決定した安保理に対するレバノンの抗議は、提出しても封鎖解除より先になるかどうかという具合で、おそらく封鎖解除が先になるだろうと述べた。同筋によれば、海上監視支援のため派遣が提案されているドイツの部隊はレバノン到着まで17日間かかる見込みであるため、イタリア、フランス、ギリシャの部隊による支援を一時的に要請することが決まったとのことであり、空港が開放されれば2~3日以内に領海へ到着する予定だという。

 イスラエルは国連安保理決議第1701号決議採択から1ヶ月後に出される予定のコフィ・アナン国連事務総長の報告書に気を遣い始めた様子である。この報告書は9月15日に安保理へ提出される予定である。もしレバノンの空港・港湾に対する封鎖やレバノン南部各地におけるイスラエルの占領がこのアナン報告書の作成時期まで続けば、報告書の中で明確な非難が表明されるだろうと伝えられているため、昨日イスラエル軍筋は、イスラエル軍はレバノン南部からの撤退を10日以内、すなわちアナーン事務総長が報告書を提出する1日前に終わらせることを表明した。フランス通信社によればこのイスラエル軍筋はイスラエルが完全撤退するための条件として、イスラエル軍が引き揚げる諸地域へレバノン国軍がひきつづき展開し、「国際部隊がイスラエルとの国境沿いに展開すること」を挙げている。

 このイスラエル軍の発表の直前に、昨日ナークーラにあるUNIFIL司令部で会合が開かれ、UNIFILのアラン・ペレグリニ司令官がレバノン軍およびイスラエル軍の士官らと面会し、イスラエルの撤退完了と、イスラエルが占領を続けている地域へのレバノン国軍やUNIFIL部隊の展開について協議した。

 ペレグリニ司令官は会合の後、「(会議は)建設的だった。イスラエル軍のレバノン撤退を確固としたものにし、レバノン国軍が南部国境地域全体の管理を担うことを最終的に確認するために、我々は正しい方向に進んでいると思う」とコメントした。

 一方、昨日午後カタール航空機がベイルート空港に着陸したことを受けてレバノンは、空港へ直接乗り入れてイスラエルによる封鎖を打ち破ろうとアラブ諸国やその他外国の航空会社に新たな呼びかけを行なっている。

 このカタール航空機はレバノン人およびカタール人の乗客乗員約148名と支援物資を乗せ、7月12日にイスラエルがベイルート空港を封鎖して以来初の直行便として同空港へ着陸した。

 カタール航空のマルワーン・アル=ハブル地区総支配人は、同社がこの便を運行できたのはレバノン政府との調整の結果であり、「いかなる他の許可の必要性も我々は意に介していない」と述べた。しかし在エルサレムの外交筋は、この便が運行されたのは先週、人道回廊の一環としてイスラエルとの調整が行われた後のことであると説明している。

 正午前にムハンマド・アル=サファディー公共事業・運輸相は、「イスラエルに許可を求める航空機はベイルート空港への着陸は許されない」と発表しており、カタール航空機は人道支援物資を搭載した貨物機であり、空港への着陸がレバノン当局の担当部署から許可されたと説明した。またサファディー公共事業・運輸相はアラブや他の外国の航空会社に対して、「イスラエルが法律にも慣行にも協定にも反してレバノンに対して行っている空域封鎖を打破したいとの航空会社の意思を表すために」ベイルート空港へ直接乗り入れて離着陸するよう呼びかけた。

 さらに、パキスタンのショーカット・アズィーズ首相はイスラエルによるレバノン封鎖を即時解除するよう要請し、パキスタンは「近日中」に予定されているUNIFILへの参加を最終的に決定すると述べた。アズィーズ首相は昨日数時間ベイルートを訪問し、高官らと会談した後、ベイルート南部郊外を視察している。



Tweet
シェア


現地の新聞はこちらから

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:3451 )