レバノン国会補欠選挙、フランジーヤ元内相が実施を支持
2007年06月17日付 Al-Nahar 紙

■ フランジーヤ氏が補欠選挙を支持、ビッリー国会議長はアウン中将に対し「何の見通しもない」と伝達
■ ブッシュ大統領はセニョーラ首相を支持 サルコジ大統領「シリアとの対話は行わない」
■ 軍がファタハ・アル=イスラームを追撃 ヒズブッラー、ベイルート南部郊外で治安部隊に抵抗

2007年06月17日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 ワリード・イードゥ議員の暗殺事件やナフル・アル=バーリド難民キャンプでの軍と「ファタハ・アル=イスラーム」との戦闘などの波紋が広がる中、ベイルートとマトン地区での補欠選挙を控えたレバノン政府に対してアメリカのジョージ・ブッシュ大統領、フランスのニコラ・サルコジ大統領、欧州連合のハビエル・ソラナ共通外交・安全保障政策上級代表が支援を表明した。

 また、キャンプを追われた難民の支援にあてるためサウジアラビアから1200万ドルにおよぶ支援金が拠出されることが昨日発表された。これは、ナフル・アル=バーリド難民キャンプ内での戦闘をめぐって政府が人道面で難題に直面することはないとの見通しを強く打ち出したものである。昨夜までに得られた現場からの情報によれば、爆発物の仕掛けられた建物が爆発し新たにレバノン軍兵士4人が殉死したものの、軍はキャンプ内での戦闘において大きな戦果をあげている。

 また本紙の得た情報によれば、フランスのサルコジ大統領はフアード・アル=セニョーラ首相と電話で会談し、「レバノンの治安状況が安定するまではシリアとの対話は行わない」と述べ、アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官がレバノン情勢を協議するためパリを訪れる予定であると伝えた。

(中略)

■ 閣僚会議

 閣僚会議は今日、ベイルート地区およびマトン地区でワリード・イードゥ議員およびピエール・アル=ジュマイエル議員の後継者を決める選挙を行うようにと有権者団体からの要請を受けてハサン・アル=サブウ内相が準備した政令案を承認するため会合を開く予定である。

 閣僚会議の開催を前に、3月14日勢力フォローアップ委員会とレバノン軍団のサミール・ジャアジャア執行部代表は、エミール・ラッフード大統領が「(現政府は)憲法および国民協定に違反している」として今日の閣僚会議の決定を認めなかった場合にも、政府の決定を支持してゆくとの立場を表明した。

■ フランジーヤ元内相

 いっぽうスライマーン・フランジーヤ元内相は昨夜、ヒズブッラー系のテレビ局「アル=マナール」チャンネルのインタビューに答えて立場を表明し、注目を集めた。フランジーヤ元内相は、ラッフード大統領に対して補欠選挙実施の政令に署名するよう求めてゆくと言明し、「なぜこの選挙を恐れるのか?マトン地区北部での選挙ではアウン中将が勝利するだろう」と述べた。この立場に関して反対派勢力との意見調整を行ったのかとの問いに対しては元内相は、「ヒズブッラーおよびその他の反対派勢力に対しては説得する。政府はもう辞任したものとみなすべきだ」と述べた。

■ 反対派勢力

 いっぽう反対派勢力の関係者らは、「ワリード・イードゥ議員の殉死が誰にとっても損失であることは言を俟たない」と述べつつ、同議員の告別式に際して表明された[3月14日勢力側の]立場について「各勢力間の距離を縮めることはなく、むしろレバノン国民および各政治勢力の間の亀裂を深めるものだ」と述べた。また、告別式に際して「レバノン国内の反対派勢力およびシーア派指導者、ミシェル・アウン議員その他の勢力に対する侮辱的で宗派主義的な発言」がなされたことに触れ、「こうした立場の表明が民衆に与える影響」に懸念を示した。

 また同関係者らは、「国際法廷[に関する安保理決議]のあとセニョーラ首相が反対派勢力に提案した組閣案は、与党からの閣僚数17人に対して野党から13人というものであり、サウジアラビアのアブドゥルアズィーズ・ハウジャ大使にひっそりと伝えられた。ところがブズンマール[※訳注:サミール・ジャアジャア氏の滞在地]でサミール・ジャアジャア博士が「与党19人、野党10人、中立1人だ」と再びミズマール[※ラッパ]を吹き鳴らして反故になった。連中は国際法廷設置の後でさえ毎日毎日、解決を欲していないことを証明している。挙国一致内閣に反対するのなら、そう言ってもらいたいものだ。それならば我々は、大統領選挙に向けた態勢の準備に集中するから」と述べた。

 また、「国軍がナフル・アル=バーリドでの戦闘で消耗することによって利益を得ているのはアメリカだ。なぜならファタハ・アル=イスラームのメンバーは明らかにアル=カーイダとつながっている。アル=カーイダに関心があるのはアメリカであって、多数派勢力ではないからだ」と述べ、「アメリカは、レバノンの政府支持勢力と反対派勢力の緊張から利益を得たいと考えている。それはイードゥ議員の暗殺の前も後も同様である」との見方を示した。

■ ビッリー国会議長とアウン議員

 ナビーフ・ビッリー国会議長は昨日、「変化と改革ブロック」代表であるミシェル・アウン議員から電話を受けた。情報によればアウン議員はビッリー議長に対して、「反対派勢力と政府支持勢力の最近の情勢を受けて、何か解決に向けての提案などの動きはあったか」と訊ね、ビッリー議長は「現在のところ何の見通しもない。多数派勢力側の動きを待つべきだろう。あちら側のメンバーたちは我々を困惑させている」と答えたという。

■ ナフル・アル=バーリド難民キャンプ

 レバノン国軍部隊は昨日、ナフル・アル=バーリド難民キャンプで激しい戦闘を行い、ファタハ・アル=イスラームの残存勢力の追撃に成果を挙げた。戦闘は非常に激しいもので、武装グループが残した地雷によって国軍兵士4人が殉職した。

 アッカール駐在のミシェル・ハッラーク本紙記者によると、激しい戦闘は昨日の日中から夜の8時半にかけて続いた後に停止し、緊張をともなった平穏が訪れた。

 国軍部隊がさしたる抵抗もなく新たに複数のビルを占拠する一方で、ファタハ・アル=イスラームのメンバーは少数のグループに分かれて攻撃と撤退を繰り返す戦法をとったという。

 本紙の得た情報によれば、ファタハ・アル=イスラームの指導者であるシャーキル・アル=アブスィーとアブー・フライラが死亡したとの一連の情報は全て間違いであり、両名共にキャンプ内にいるという。アブー・サリーム・ターハーは殺害されたとのことである。

■ ベイルート南部郊外

 ベイルート南部郊外では昨日、ヒズブッラーが[同党の]「治安特別区域」内で国内治安部隊のパトロールを阻止し、隊員の武装を解除したうえでヒズブッラーの拠点に連行した。その後、武器は返却され隊員は解放された。

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( 翻訳者:垣平浩明 )
( 記事ID:11238 )