レバノン政治対立、アラブ連盟代表団のベイルート訪問終了 北部では衝突拡大
2007年06月24日付 Al-Nahar 紙

■ 反対派勢力、アラブ諸国調停案から一歩も譲らないと主張 ハリーリー議員「その立場は間違った作戦」との見解を表明
■ ナフル・アル=バーリド難民キャンプの戦闘は最終的な局面に突入
■ アビー・サムラ地区で強制捜査、衝突に発展

2007年06月24日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 レバノン情勢に関するアラブ諸国の調停努力の幕が下りた翌日、ナフル・アル=バーリド難民キャンプでの治安情勢悪化の新たな幕が上がった。戦火は昨晩トリポリのアビー・サムラ地区へ及び、北部における一連の事件がトリポリ市内のミアタイン通りで始まった時に似た状況が展開された。

 フアード・アル=セニョーラ首相は昨日、エジプトのホスニー・ムバーラク大統領、チュニジアのザイヌルアービディーン・ビン・アリー大統領、ヨルダンのマアルーフ・アル=バヒート首相、ヨルダンのアブドゥルイラーフ・アル=ハティーブ外相、アラブ首長国連邦のアブドゥッラー・ビン・ザーイド外相らと電話会談を行なった。会談の中では、アラブ連盟の代表団によるベイルート訪問の成果について話し合われた。またセニョーラ首相は国連の潘基文事務総長とも電話会談を行い、レバノンの最近の情勢について話し合った。

 エジプトの中東通信社(MENA)がアンマンから伝えたところによると、ヨルダンのバヒート首相はセニョーラ首相との電話会談の中で、レバノン国家が国土全体に憲法にのっとって主権を行きわたらせる権利を支持するとのヨルダンの立場を繰り返して表明し、「(ヨルダンは)レバノンの主権を侵害し、レバノンの安全を弄び、国民を恐怖に陥れることを目指す全てのテロ犯罪行為を非難する」と述べた。

■ 反対派勢力

 いっぽう国内の反対派勢力の関係者らは本紙に対して、「(昨日複数のメディアが伝えた政府支持勢力の談話は)不正確であり、起こったことを正確に伝えていない」と述べた。

 同関係者らによると、「(アラブ連盟のアムル・ムーサー事務局長が示した2つの提案は)アイン・アル=ティーナ[※反対派勢力に属するビッリー国会議長の官邸の所在地]で準備されたものではなく、その出処は政府支持勢力、より正確に言えばクライティム[※与党最大会派を率いるハリーリー議員の邸宅の所在地]で、それがビッリー議長に提示されたのだ。第1の提案の内容は、(1)挙国一致内閣樹立の努力(2)大統領選出に向けた環境の醸成(3)国軍および治安部隊への支援、というものだ」という。

 ナビーフ・ビッリー国会議長の関係者が本紙に語ったところによると、ビッリー議長は「解放と開発ブロック」およびアマル運動[※それぞれビッリー議長が率いる国会内会派と政治組織]指導部、反対派の同盟勢力と協議を行い、アイン・アル=ティーナの議長官邸を訪問したムーサー事務局長に対して「大統領選出と軍・治安部隊支援は我々にとって何の問題もない」と伝えるとともに、「私こそ大統領の問題についてイニシアティヴをとった最初の人間だ。私は9月25日に大統領選出国会を開くことを呼びかけた。さらに私は、与野党合意に基づく大統領の選出を提案し、その実現に努めてきた。これは[キリスト教マロン派の]スファイル総大司教聖下もお認めになっており、複数の政治勢力が受け入れている。神はレバノン国民に対して、政府支持派であれ反対派であれ、誰も3分の2以上の勢力をもつことはないという恩恵を与え給うた。これまで何度も私はそう言ってきた」と語った。

 また、ビッリー議長はムーサー事務局長に対して、「国軍を愛し支援するという点では私にかなうものはいない。我々のこれまでの政治的な歩みがそのことを示している」と繰り返し述べたという。

 ビッリー議長の関係者らは、「時間を無駄にするよりも、何故ただちに真の挙国一致内閣の組閣にとりかかり、その内閣の場で全ての事柄について議論しないのか。次期内閣の会議においてタブーとなるような議題は何もないのに」と疑問を表明した。

 また同関係者らは、「(ムーサー事務局長が示した第1の提案は)ハリーリー派からのもので、政府支持勢力は大統領選出国会において必要議席数が確保されるよう求めつつ、大統領の人選について反対派勢力側とあらかじめ合意することはしないと述べている。これを受け入れれば多数派勢力は望むままの人物を大統領にすることができるだろう。議席数さえ揃えば、例えばサミール・ジャアジャア博士を大統領にすることだってできるのだ。そうなってしまえば、反対派勢力も同派の議員も、何の役割を果たすこともできなくなる。さらに、第2の提案もハリーリー派が[ヒズブッラー書記長である]ハサン・ナスルッラー師と会見した後に示したもので、ビッリー議長が具体的な議事日程に基づいて対話を再開することを明言するよう反対派勢力に求めている。その一方で挙国一致内閣については秘密交渉を通じて対応するというのだ。反対派勢力はこの提案をただちに拒否した。だいたい、挙国一致内閣については秘密裡に交渉する、そして多数派勢力が求める事柄については公式に取り上げる、というのでは、反対派勢力と同勢力が代表する広範な民衆の利益はどうなってしまうというのだろうか?」と述べた。

 反対派勢力は、「フアード・アル=セニョーラ首相が提示し、サウジアラビアのアブドゥルアズィーズ・ハウジャ大使との間で合意に達した組閣案(与党から閣僚17人、野党から13人)はその後雲散霧消してしまったが、これを引き続き検討するよう呼びかける。反対派勢力はムーサー事務局長の前で提案した内容から一歩たりとも譲るつもりはない」と述べた。

(後略)

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( 翻訳者:新谷美央 )
( 記事ID:11283 )