コラム:ビンラーディンの最新メッセージに関する見方
2007年10月24日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ アル=カーイダとイラクという挑戦

2007年10月24日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

アル=カーイダ首領、シェイク・ウサーマ・ビン・ラーディンがイラク国民へ宛てたメッセージは、911以降の同組織史上で最も重要なものである。それは、組織メンバーがイラクで行き過ぎを犯したことを初めて認め、彼らに対し、他の抵抗組織と和解し協力体制を築くことにより再出発するよう要請すると共に、それらの過失は人間の本然に由来する(故に修復可能である)としている。

ビン・ラーディンがはっきり触れなかった過失とは、手や指の切断、他者を不信心者として糾弾する、特定宗派を押し付け他を認めない等である。これらの態度は、組織の敵、特にアメリカに利用され、結果としてイラクの地元部族長たちによる覚醒部隊なるものを形成させた。この部隊は、多くの国民的、民族的、イスラム的抵抗組織のように占領軍を敵とするのではなく、アル=カーイダを最大の脅威、戦うべき相手とみなしている。

アメリカによるアフガン占領、そこでのインフラ破壊、多くの指導者の殺害、拘束、追放が起きた後のイラク侵略と、そこで宗派的政治的分裂を起こすために行われたあらゆる試み、特定のイスラム派閥と提携し他を血なまぐさいやり方で遠ざける等は、アル=カーイダに有利に作用し、同組織に新たな力を与えた。その後、合衆国は、周辺諸国並びに占領プランに組み込まれたイラクの諸派閥との協力により、部分的にであれ、イラク国民の反アル=カーイダ感情を煽る、内紛を起こさせるなどの手段でアル=カーイダ封じ込めに成功してきた。少なくとも一年前に比して、アル=カーイダ、及び他の抵抗組織により占領軍に対して行われた作戦の割合が減っている事が、これを示している。

抵抗勢力の源泉であったスンニー・トライアングル、特にアンバールなどの地域は、ここ数ヶ月で静けさを取り戻し、占領軍と手を結んだ部族長らが堂々とブッシュ大統領の隣に座すようなことになった。米プランの先鋒ともいえるヌーリー・アル=マーリキー氏は、あたかもイラクの合法的な長ででもあるかのようにティクリートやサラーハッディーン県を巡回している。

ペトレイヤス駐イラク米軍司令官とクロッカー米大使は、アル=カーイダの過失を誇張する役割を果たしている。彼らは、帝国主義時代の英国の経験に学び、金で左右される部族長らの弱点を承知している。その結果、抵抗勢力の活動は目に見えて減り、占領軍司令官らがイラクにおけるアル=カーイダの敗北を口にするまでとなった。

ターリク・アル=ハーシミー副大統領率いるイラク・イスラム党が、この実績には大いに貢献している。一方でマーリキー首相は、時にアル=カーイダの過ちを誇張し、時にシーア派イランの脅威とそのイラクへの進出を誇張しつつ、スンニー派部族長らと連絡を取り、アル=カーイダとその他の抵抗組織に対する敵対感情をあおり、必要な資金を与え、米側の幹部と引き合わせている。

周辺諸国の宗教人から発せられるファトワがこれを側面支援する。例えば、サウジ王国ムフティ、アブドゥルアジーズ・アール・アル=シェイクによる、抵抗活動への参加はジハードではなく穢れた行為であるとするもの。これは、合衆国やイスラム党がアル=カーイダその他の組織を封じ込め、イラクのスンナ派による抵抗活動を弱体化するのに役に立つ。

このファトワと時を同じくして、アメリカの直接のアドバイスにより、サウジも含めた湾岸諸国の石油価格が数千億ドル規模で高騰した。これは、抵抗勢力、特にアル=カーイダの資金源を枯渇させた。諸々の出来事が、米軍とその同盟者に有利な逆転を示している。

イスラム的愛国者として著名なシェイク・ハーリス・アル=ダーリーが、この逆転に注目した最初の1人だった。アル=ジャジーラ衛星チャンネルに登場し、アル=カーイダとその他の抵抗組織を叩くアメリカの計画に注意を促した同氏の発言によれば、「アル=カーイダの圧倒的多数、90%はイラク人であり、この組織と我々は同一である、また過去に犯された幾つかの過ちは対話により修復可能である」。この発言は、占領軍と提携した部族長らによる、イラク人ではないアル=カーイダメンバーをスンニー地域から放逐せよという呼びかけに対する反論であった。

ビン・ラーディンによるボイスメッセージも、(アル=ダーリーによる)このようなアドバイスに呼応するものとみなされる。また同時にそれは、アル=カーイダが、イラクのように重要な戦略的拠点、イスラム的戦いにおける戦力の源を失うかもしれないという危機感を反映している。

昨今、各種のジハード系組織は数々の失態により自らその終わりを早めている。顕著な過失は、ジハードと権力を融合させようとする事である。アル=カーイダは、アンバール地域でイラク・イスラム国家を宣言し自らを支配者と名乗った時、この罠に落ちた。ハマースは、パレスチナで選挙に参加し政府を作り、結果としてガザ・イスラム国に沈む事になった。ジハードと権力の融合は、水と油の混合のように不可能なことである。権力とは重責であり、人間の営為を管理するのは時間のかかる重労働である。ジハード戦士らの及ばない手腕と経験が必要とされる。

ハマースは現在、彼らが絶大な支持を得た占領に対する抵抗活動ではなく、いかにして水、電気、賃金、治安、医薬品を確保するかという仕事に追われている。彼らは不面目な取引をするはめになった。例えば、電気と水を得る代わりに、休戦宣言を出してみたりロケットの発射を控える等である。そして、「アル=ジハード」のような同胞の武装組織とは対立し、負傷者を出している。

アイマン・アル=ザワーヒリー博士が3年前、アブー・ムスアブ・アル=ザルカーウィーに宛てたメッセージは最初の警告であった。それは、イラク人と敵対せず、シーア派同胞の殺戮を止めるよう要請し、また、外国人の人質を、放映されたような野蛮なやり方で殺害するのを禁じている。しかし、この、政治声明としては最も先見の明がありイラク情勢を正確に読んでいたと思われるメッセージは、顧みられることがなく、アル=ザワーヒリーの警告は打ち捨てられた。

アル=カーイダがアフガニスタンで成功したのは、アフガン内政にはあえて立ち入らなかったからである。アルジェリアの武装組織は、行き過ぎを犯したため、血なまぐさい内紛の中に陥った。ジハード系組織は、ヨルダン、そしてレバノンにおけるパレスチナ抵抗などの過去からほとんど学ぼうとしない。学ぶべきは規律であり、周辺環境を把握し、無駄な挑発を避け、抵抗のみに集中する事である。

ビン・ラーディンのメッセージは、遅きに失した感はあるが、危機から組織を救う試みである。アル=カーイダは、米合衆国をイラクとアフガニスタンでの血みどろの戦争に引きずり込み、6千億ドルの経費と約4千の人命を費やさせ、その生活様式、治安軍事に関する考え方を全く変えさせる事により、現在、同国にとって最大の脅威を形成している。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:12250 )