コラム:アナポリス中東和平会議へのアラブ諸国の参加
2007年11月24日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ アナポリスへのアラブの行進

2007年11月24日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

アラブ諸国外相によるアナポリス会議への参加決定は、驚くべき事ではなかった。しかし、アラブ連盟本部での記者会見中における、アムル・ムーサー連盟事務局長、並びにサウード・アル=ファイサル・サウジ外相による詭弁には驚かされた。彼らは、会議参加を正当化し力ずくで押し通したと言える。

過去数週間ファイサル外相が繰り返し述べてきた事によれば、サウジは、イスラエル・パレスチナ協議推進、最終和平案の検討、入植停止等、具体的な進展をイスラエル政府が示さない限り、アナポリスには参加しないはずであった。しかし、いずれの要請も実現してはおらず、アラブ連盟での会議中アッバース大統領が述べたところによれば、交渉におけるパレスチナ・イスラエル間の相違点は依然として変わらず、オルメルト首相と大統領の会談でも懸案事項について何ら進捗は見られなかった。

上述の記者会見でムーサー事務局長は、関係正常化のためではなく、イスラエル側との協議のためにアラブ諸国はアナポリス会議に赴くのだ、などという韜晦を用いた。イスラエル側と同席し協議する、それが関係正常化ではなくて何だと言うのか?

更にファイサル外相によれば、アラブ側の参加決定は、イスラエル側の意思を探り、明確にするためである。我々アラブは60年来、そのイスラエルの意思を探り、彼らが真剣に和平を欲しているのかどうか、あらゆる形態の譲歩を示すことにより試してきた。この試みの結果はと言えば、我々の完敗、イスラエルが、その場から一歩も引く事なくアラブの譲歩を勝ち得るのみであった。この手の実験に、アラブはうんざりする頃ではないだろうか?

アラブ諸国外相が協議のため会議に参加、という文言も、多大な誤解を招く言い方である。協議はアラブ外相とイスラエルではなく、イスラエル・パレスチナ間で行われる。会議開催の目的はこの協議であるが、それには時間制限が設けられず、解決策を導き出すような措置も採られておらず、つまり成功の保証はない。

アラブ諸国がほぼ一致して参加の立場をとった事は、それ自体がイスラエル側にとっての収穫であった。イスラエル外務省報道官が大いに満足の意を表明し、外相らの決議を賞賛、会議の成功を保証したのも無理はない。イスラエル首相府報道官は、パレスチナ・イスラエル和平の進展を中東諸国が支持している事の証として、幅広いアラブ諸国の参加を歓迎する旨述べた。

会議とそこで行われる協議の趣旨には、アラブ和平構想などは含まれていない。それは、国連安保理決議242、338、ロードマップ、ブッシュの和平案にのみ限定されている。最後の1つは外せない。ユダヤ国家としてのイスラエルの承認、占領エルサレム周辺の主要入植地保持を説くそれは、最新案でもある。

アラブ側の立場の推移は、アラブ首脳、特にサウジとエジプトとブッシュ大統領の間で行われた電話会談によってもたらされた。その会談でブッシュは、会議への無条件参加だけではなく、それが外相レベルである事まで要請した。

アラブ外相らは開会式に出席し、ブッシュ大統領、ライス国務長官らのスピーチに拍手を送ることになる。彼らの中には、アラブ内外のテレビ局のインタビューを受け大いに語る人々もいるだろう。それから外相らは帰国する。イスラエルと睨み合うパレスチナを残して。二者間は、いつ終わるのか、あるいは如何なる惨事がそこからもたらされるのか、神のみぞ知るマラソン協議に従事するという。

米政権の見方によれば、会議を開催し、アラブ・イスラエル間の和平実現に努力しているという素振りを示す事に意義がある。一方、会議後に予測される事態は、語られざる政治目的をはらんでいる。可能なシナリオは以下に要約されるだろう。

1.米イスラエルが、悪の枢軸、シリア・イラン及びそこから派生するヒズブッラー、ハマース等のテロ集団打倒に向けた動きをレベルアップさせる。米政権寄りのメディア、その延長であるアラブ内外の衛星放送による地域情勢報道には、今後注意が必要だろう。

2.イスラエルがガザを制圧、いわゆる「ハマース・クーデター」に終止符を打ち、アッバース大統領率いるラーマッラー政権へ、同地区を委任する。オルメルトは一度ならずガザ制圧を公言してきたが、その度にアメリカの圧力により撤回している。アメリカとしては、アナポリスへのアラブの参加を取り付けるため、それらの政権の足元を揺るがすような措置(イスラエルによるガザ制圧)を見過ごせなかったのである。ガザへの電力供給を来る12月2日、つまり会議終了以降、制限するという決議も、偶然に行われたわけではない。

3.穏健派アラブ諸国が、イスラエル並びに合衆国と政治、軍事、経済面で協調し、幾つかの国が、イスラエルより危険だと評したイランに対して統一戦線を形成する。

4.イスラエルの新たな要求、ユダヤ国家イスラエルの承認等が確定される。これにより、その地におけるアラブの存在は非合法となり、ムスリム、クリスチャンのアラブはパレスチナ国家へ帰還するまで難民という立場になる。そして、ユダヤ側に有利なよう地理、人口分布が変更された後、占領されている東エルサレムは分割されるだろう。


アナポリス会議は失敗しないだろう。ライス長官が言うように、それは開催されれば成功なのだ。それによってイスラエルは和平愛好国のイメージを作る事ができる。アラブ外相らの会議参加に示されるように、隣人達との間には如何なる敵意もない。アラブ外相たちは、核武装するイランを恐れており、その脅威から免れたいので、中東一強大な国を祭り上げるような真似をする。

微妙なのはシリアの立場である。それを恥さらしと糾弾したシリアが、会議参加を拒み続けるか否かは賭けと言えよう。ゴラン高原問題を議題に入れるようにとのアラブ側の公式要請に、米政権は色よい返事をしたというが、それは納得のいく形でではない。たとえイスラエルがシリアとの協議開始を望んだとしても、それは、より困難で複雑なパレスチナとの協議から逃れるための方策である。アラブ諸国はシリアを罠にかけ、招かれざる客としてアナポリスに向かわせようとしている。「アラブの参加」を分析してみると、そこには何ら責任感は見出せない。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:12525 )