米国務次官補がレバノン訪問、多数派勢力への支持をあらためて表明
2007年12月16日付 Al-Nahar 紙

■ 政府支持勢力、年末まではスレイマーン国軍司令官の大統領選出の立場を固守
■ 反対派勢力、「中東地域で行われている取引の隠蔽工作」の存在に言及
■ ウェルチ国務次官補、ブッシュ大統領とライス国務長官の名の下に「我々は多数派勢力と政府と国軍を支援する」
■ ビッリー国会議長、本紙に「機会は10日間ある。私の扉はジュンブラート議員に開かれている」

2007年12月16日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 アメリカのデイヴィッド・ウェルチ中東問題担当国務次官補が昨日レバノンでの長い1日の中でこなした会合の場所として先ずビキルキー[※マロン派総大司教座]が選ばれたことは、アメリカ政府が多数派勢力の側を支持する立場をためらいなく示すものであった。ウェルチ国務次官補は次いでアイン・アル=ティーナ[※ビッリー国会議長邸所在地]で会合を行い、今日は国軍司令官であるミシェル・スレイマーン中将と会談する予定である。

 ウェルチ国務次官補の協議にともなって各方面が示した立場や情報によると、明日月曜日に予定されているレバノン次期大統領選出のための9回目の会合は、これまでの8回の会合より良い結果が生まれることはない見込みだ。年内に残されたのはあと10日間で、その後にはスレイマーン中将を大統領に選出するための憲法改正を行う機会となる国会の通常会期が終了することを控えて、これからの動向に注目が集まっている。

■ ウェルチ国務次官補

 ウェルチ国務次官補は、フアード・アル=セニョーラ首相と会談した後、自分がアメリカのジョージ・ブッシュ大統領とコンドリーザ・ライス国務長官の委任により、「アメリカは第1にレバノン国民を支援する。同様に、民主的に選挙された多数派勢力、合法的な政府と、レバノン国軍を含むその諸組織を強力に支援する立場を表明する」ためにベイルートに来たことを明らかにした。

 そして、「(大統領の)候補者について合意に達するという困難な仕事はなされたのだから、確実にプロセスが達成されなければならない。これ以上遅れたり延期されたりすることの正当な理由があるとは思わない」と表明した。

 アメリカは多数派勢力が示唆するように過半数による大統領選出を奨励するのかと質問されると、ウェルチ国務次官補は「我々は多数派勢力とその決定を支持する」と答えた。

 ウェルチ国務次官補は、「月曜日が大統領を選出する『最後の機会』である」と一昨日語ったフランスのニコラ・サルコジ大統領の立場を支持し、「私はサルコジ大統領が正しいと確信している。もう大統領を選出すべき時だ」と続けた。

 ウェルチ国務次官補は、キリスト教マロン派教会のナスルッラー・ブトゥルス・スファイル総大司教と会談した後、ビキルキー訪問者台帳に「スファイル総大司教猊下へ。アメリカ合衆国の全幅の敬意と、レバノンの独立・自由への支持と、レバノン人キリスト教徒とその保護への支持を込めて」と記帳した。

 多数派勢力筋が明らかにしたところによると、ウェルチ国務次官補のレバノンにおける任務の3大テーマは、「政府、民主的で憲法に基づいたメカニズム、多数派勢力が決定したことに対する支持」である。

 同筋は、ウェルチ国務次官補がフランス大統領の「最後の機会」に関する発言の意味合いを理解していないと指摘し、発言はあくまでフランスの情勢判断に基づくものであると述べた。

■ ビッリー国会議長

 ウェルチ国務次官補はナビーフ・ビッリー国会議長との会談の中で、大統領選出問題について協議し、「レバノンの各勢力が国軍司令官であるミシェル・スレイマーン中将の名前で一致している以上」大統領を選挙する必要性を主張した。

 ビッリー国会議長は昨夕、「変化と改革ブロック」代表のミシェル・アウン議員から電話連絡を受け、双方の関係者筋によれば、ウェルチ国務次官補の訪問の結果と、「両者間の継続的な調整のメカニズム」について話し合った。

 訪問者らによるとビッリー国会議長は、フランス大統領の最近の発言について、「我々はフランス大統領を尊敬しているが、月曜日の会合は最後の機会ではない。われわれは昼夜大統領を選出するために働いている。機会は月曜日までだけではなく、今年の終わりまである。したがって我々は今年末までに大統領選出に到達することを希望している」と語った。

 一方、本紙が得た情報によると、ビッリー国会議長と「民主主義会合」代表であるワリード・ジュンブラート議員は、ガーズィー・アル=アリーディー情報相と、辞任したムハンマド・ジャワード・ハリーファ健康相を通して連絡を取り合っており、この数時間にわたり、ムフターラ[ジュンブラート議員邸所在地]とアイン・アル=ティーナの間で相互に賞賛する書簡がやり取りされており、近いうちに両者の会談が行われるのではないかとの見方もある。

 ビッリー議長は昨日本紙に対して、「ジュンブラート議員は常に歓迎されている。私と彼の間で日程を決める必要などない。私の扉は彼に対して開かれている」と語った。

■ 政府支持勢力

 3月14日勢力筋は本紙に対し、「年末までの10日間の間に、(3月14日勢力から)憲法改正とミシェル・スレイマーン中将の大統領選出に向けて大きな圧力があるだろう。年末を迎え通常会期が終了した場合には、大統領選出の代替の選択肢を見出すために、あらゆる事柄が協議のテーマになる」と語った。そして、「空白状態が来年3月半ばの次期通常会期まで持ち越されるとの説は、空白状態の終結を先延ばしにしようと目論む反対派勢力の望むところである。しかし3月14日勢力は、決着を先延ばしにすることを許さないとの明確な決定を行なっている」と付け加えた。また、「レバノン各勢力の指導部に昨日伝えられたアメリカの立場から明らかなのは、レバノン、イラク、パレスチナ自治政府を犠牲にしてシリアと何らかの取り引きが行われているようなことは一切ないということだ」と語った。

 またウェルチ国務次官補は、シリアをアナポリス会議に招聘したことには、それ以上の意味は何も含まれていないことを明言し、「アメリカがイラクとパレスチナ自治区における状況の改善を望んでいるのは確かだが、レバノンの多数派勢力の成果を犠牲にするつもりはない。言い換えればアメリカは、イラクやパレスチナ自治区における状況がレバノンの状況に類似したものになることを望んでいるのであって、その反対ではない」と述べたという。3月14日勢力筋によれば、「ウェルチ国務次官補は提案を何もしなかったが、多数派勢力に対して、アメリカは大統領選出によって空白を埋めるためにとられるあらゆる決定を支持するとの立場を明確に示した。その支持は、アメリカ、ヨーロッパ、アラブ諸国を始め国際社会による具体的なものとなるだろう」ということだ。

 憲法改正も次期大統領選出も実現せずに通常会期が終わった場合の次の段階における1つのシナリオとして、マロン派教会とスレイマーン中将との連携によって空白を埋めるという動きが取り沙汰されている。

(後略)

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( 翻訳者:新谷美央 )
( 記事ID:12738 )