コラム:ダマスカス・アラブサミット、ボイコット問題
2008年03月26日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ サミットボイコットは敗者の選択

2008年03月26日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

来る土日にダマスカスで開催されるアラブサミットは、その規模や参加者のレベルにおいて、あるいは、そこから現れるであろう政治的立場において、これまでのサミットとは際立った特質を持つ。これまでのサミットは、緊急開催も含め、アメリカの肝いりでイスラエルに有利な譲歩を引き出しつつ和平プロセスを進めるためか、そうでなければ単なるルーティーンとして行われてきただけだった。

チュニス、アルジェ、ハルトゥームで開催された近年のサミットなどは、まるで無味乾燥で真剣に討議が行われたわけでもなく、実質に欠ける決議を発したのみだった。ほんの数時間しか開催されなかったものもあれば、ムバラク大統領やムアンマル・カッザーフィー大佐などの国家元首が開会式終了と同時に退席したものもあった。

ダマスカス・サミットは、開催以前、参加者のレベルが明らかになる以前に、合衆国に敵対し、同国政府をしてアメリカのアラブ同盟者たちにボイコットを呼びかけさせた時点で、成功したともいえる。例えば、サウジアラビア王国は、より低いレベルの派遣団をサミットに参加させる事にした時、意図せずしてシリア政府に多大な礼を尽くした事になった。ムバラク・エジプト大統領も同様である。アラブ街頭の意見は、中東における米プロジェクトの先鋒を成す「アラブ穏健派」なるものに対抗するシリアの側に立っている。

アラブ共同体、イスラム世界の大多数が共有する羅針盤は明白な方向を指しており、アメリカの意に適うようなアラブ指導者は、アラブ解放の敵、イラク、アフガニスタン、パレスチナで人道的倫理的大惨事となっているアメリカの戦争に直接加担しているとみなされる。

アメリカの同盟者がアラブサミットをボイコットする、あるいはどんな理由であれ、その参加を渋る時、落胆し、飢え、省みられないアラブ民衆は、「時期サミットは、アメリカに支配されていない。つまり、良い、あるいはこれまでと異なるだろう」という印象を抱く。

サミットをボイコットするアラブ指導者らは、これによりシリアを孤立させサミットを失敗させられると考えているが、これは間違いである。ボイコットする指導者は、自身が、第一にアラブの共同作業から孤立し、第二にアラブ民衆から孤立するのである。

イスラエルは西岸の入植を再開し、ガザでは150万を飢えさせる封鎖を続けている。このような行為に対しイスラエル側を罰するとしたアナポリス和平会議の原則を、ワシントンは適用しようとしない。もし、サウジ、エジプトなどの国が、昨年のリヤドサミットで打ち出されたアラブ和平イニシアティブなどというものを、先のカイロ外相会議で撤回しワシントンを批判したなら、まだ状況は変わり得るのだが、残念な事に、これらの政府はそうしようとせず、代わりにサミットを失敗させたとしてシリアを罰することにした。米、イスラエルがそのように決定を軽んじる以上、来るサミットが、アラブ和平イニシアティブ撤回を公式に検討し、その過ちを正す事が期待される。

今日アラブ世界で議論されるのは、穏健派アラブ諸国は、米プロジェクトに身を投げ出す事により、一体何を達成したのか?という点である。つまり、百万のイラク人を亡き者にし、数百万を難民にした戦争に加担し、更にイラクをイランに引き渡す事によりパワーバランスを危うくした事以外に何が成されたのか。

合衆国に莫大な便宜を図る代わりに穏健派アラブ諸国は何を得たのか?最近では、チェイニー副大統領の求めに応じ、サウジが石油輸出量を増やしたが、これは石油価格を抑え米経済を救済するためである。世界的にテロの脅威が高まり不安定な中、石油価格が高騰し(1バレル110ドル)イラク戦争の出費(現在までに6千億ドル)に悩まされるアメリカが自ら陥った窮状だが。穏健派は、パレスチナ問題の公平な解決策を手に入れただろうか、あるいはロードマップの適用を?西岸の違法入植地の一つでも解体しただろうか?


中東におけるアメリカの戦争を全て支持してきたムバラク大統領の政府は、ガザ情勢を沈静化し抵抗勢力のロケットを阻止したい米イスラエルの交渉を仲介したりしている。偉大なるエジプトの役割が、長さ14キロにも満たない国境地帯に集約されるのだ。このように卑屈な合衆国への追従と引き換えにエジプトは何を得たのか?キャンプデービッドでの恥ずべき諸合意が、8千万の気高きアラブ・エジプト大衆に何をもたらしたか。パンを求める行列、飢えと貧困のみではないのか?

和平合意調印や米プロジェクトに関わる以前、30年前のエジプト各紙は、チキン、羊肉、魚などを求める行列の事を面白おかしく伝えていた。パンを求める行列で人死が出る日が来ようとは、思いもよらなかったに違いない。食糧配給券を国民に配るのは戦時中の話だが、エジプトはじめ幾つかのワシントンの同盟、もしくは米軍に占領されているアラブ諸国では、そうではない。エジプトが最後に戦争をしたのは35年前だが、未だに食糧配給券は存在し、事態は悪化している。

来るダマスカス・サミットは、この両極化現象をより強固にするだろう。それにより、アラブ各国政府が明確に二つの陣営に分かたれる。一つは、合衆国とその戦争を全面的に支持する政府、もしくは体制である。次なる戦争は、シリア、イラン及びその同盟者達、つまりレバノンのヒズブッラー、パレスチナのハマース、ジハード、アクサー部隊、サラーフ・ディーン旅団等に対して行われる。こちらの陣営のトップは、サウジ王国、エジプト、ヨルダンである。第二の陣営は、アメリカの塹壕に立ちはだかるシリアを含む。そして、以前は、このアラブ共同体派の陣営に、リビア、アルジェリア、イエメン等の国々を数えられたのだが、そのほとんどが現在アメリカ側に片足を踏み込んでいる。

現在のような形でのアラブサミットというシステムが終結するとの意見もある。終結するが良い。なぜなら、サミット体制とは、アラブの共同事業に障害物をもたらし誤ったビジョンを提起するだけの、古びて酸化し挫折した体制に他ならないからである。崩壊したとしても残念ではない。願わくば、その崩壊が、サミットとアラブ連盟にとって根本治療の序曲となるように、有効なアラブ共同事業に立ち返れるように。

シリアはその反米反イスラエルの立場によりアラブ街頭の支持を得ている。この上は、シリア政府が囚人解放などにより、その人権問題への対応を改善する事が望まれる。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:13451 )