コラム:アラブ諸国首脳会議、「穏健」諸国首脳が欠席するなか閉幕
2008年03月31日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ダマスカス首脳会議、舞台裏での見解の相違

2008年03月31日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

 アラブ諸国首脳会議は昨日、ダマスカス宣言を発表して日程を終えた。同宣言は、アラブ諸国の連帯の強化、戦略的選択肢としての和平の堅持、イラクの統一と独立の確認といった諸問題に言及している。しかし、それよりも重要なのは、今回の首脳会議がアラブ諸国首脳11人の出席を得て、会議の開催を失敗に終わらせようという数々の企てをよそに決行されたことである。

 2002年のベイルート首脳会議で発表されたアラブ諸国提案の再生による和平を戦略的選択肢とすることが確認されたのは、予想範囲内のことであった。アラブ諸国の指導層には他の選択肢が何もないのだから。首脳会議のスローガンであったアラブ諸国の連帯強化も、「望み」の域を脱していない。実際に起きたことは全く逆で、エジプトのホスニー・ムバーラク大統領やサウジアラビアのアブドゥッラー・ブン・アブドゥルアズィーズ国王など影響力のある各国首脳が欠席した。彼らはシリアを孤立化させ、圧力をかけて、あらためてアメリカに従属させるとともに、レバノンで起きている憲政上の危機に対して提案された妥協のための条件を受け入れさせたいと望んでいるのだ。

 ダマスカス首脳会議は、アラブ諸国体制の疲弊とアラブ諸国首脳会議の機構に生じている崩壊状況を映し出したものとなった。また、相互の溝の大きさゆえにアラブ諸国が複数の陣営や地理的ブロックに分裂し、次第にお互いの繋がりが弱まってゆく危険性が明らかになった。

 今回の首脳会議の公にされた部分と隠された部分で起きたことについて、概観したうえで検討するにあたって、注目すべきいくつかの点がある。それらは以下のようにまとめられる。

 第一に、湾岸協力会議(GCC)を構成する大国であるサウジアラビアの覇権に対して、湾岸諸国の間で反抗する動きのあることが明らかになった。[サウジの]圧力は、エジプトとイエメンの首脳に会議参加をやめさせることには成功したが、この両国よりもはるかにサウジラビアに近い湾岸諸国の各指導部を欠席させることには失敗した。アラブ首長国連邦、クウェート、カタールの元首が注目すべき強固な姿勢で出席を表明したのである。

 第二に、マグレブ諸国5ヶ国のうち4ヶ国、すなわちアルジェリア、チュニジア、リビア、モーリタニアの首脳が出席した。そして5ヶ国目のモロッコは王弟を出席させた。これは、アラブ民族の西側の諸国が東側の諸国よりもアラブ精神と首脳会議の機構を固守しており、東アラブのどの国よりもシリアに近い立場であることの証しである。

 第三に、サウジアラビア国王が過去3回のアルジェ、チュニス、ハルツームでのアラブ諸国首脳会議をボイコットしたことは、これらの国々の元首がサウジアラビアの圧力に応じずダマスカス首脳会議に出席することに大きな役割を果たした。それによって確証されたのは、先ずこれらの国々の決定の独立性であり、またアラブ諸国首脳会議をボイコットするという決定が、大抵の場合には悪印象を与えてマイナスの結果をもたらすということである。

 第四に、コンドリーザ・ライス米国務長官の圧力はおそらく、ヨルダン国王の決定に影響を及ぼし、ダマスカス首脳会議へのヨルダンの参加規模を縮小させることに成功した。そのため、特に主催国シリアの関係者の多くが不満を表明した。しかしライス長官の圧力は、最も弱い立場にあるパレスチナのマフムード・アッバース大統領がシリアの首都へ行き、首脳会議の全ての会合に出席することを諦めさせることは全くできなかった。このため、「アッバース大統領の参加は開会式のみに限られるだろう」と考えていた多くの者の予想は裏切られることになった。

 第五に、主催国シリアが率いる所謂アラブ拒否諸国と、エジプト、サウジアラビア、ヨルダンに代表される穏健枢軸諸国の冷戦開始の兆候が現れた。シリアは鎮静化に訴え、そのことは会議に際しての大統領の演説にもはっきりと反映されていたが、一方穏健諸国とくにエジプトとサウジアラビアでは、首脳会議と他ならぬシリアに対するメディアを通しての激烈な攻撃が行われた。会議の組織・運営上のネガティヴな側面が強調され、例えばあるサウジアラビアの放送局は、首脳会議の開催期間中、今回の首脳会議がコーランの章句の朗誦で始まらなかった唯一の首脳会議であると何度も繰り返して述べていた。このチャンネルの関係者らは、自分たちの姉妹局である数々のバラエティ・チャンネルの中に一つとして、イスラーム系のチャンネルがないということを忘れているのである。それらが放映する映画や番組の質については言うまでもない。さらに、エジプトのいくつかの官営新聞社は、レベルの低い表現で首脳会談とシリアを非難する評論家たちに寄稿させた。

(後略)

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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:13567 )