ベイルートで内戦終結以来最悪の戦闘
2008年05月09日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ヒズブッラー書記長「抵抗運動に手出しする者の手は切り落とす」と威嚇
■ ベイルートでは流血の対決で5人死亡
■ ジュンブラート議員宅から首相府まで包囲
■ アラブ・世界の航空会社がフライト中止

2008年05月09日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ベイルート:サアド・イリヤース本紙記者】

 アメリカに支援を受けたレバノン政府がヒズブッラーの通信網を狙ったことはヒズブッラーに対する宣戦布告だとイランに支援を受けるヒズブッラーが主張したことで、昨日ベイルートでは暴力的な対決が繰り広げられた。治安関係者によれば戦闘により少なくとも5人が死亡、12人が負傷したという。

 ベイルートの多くの地区でヒズブッラーおよびヒズブッラーと同盟関係にあるアマルの戦闘員が政府派の武装メンバーと機関砲やロケット弾を撃ち合い、首都は国内勢力同士の戦闘としてはレバノン内戦終結以来最悪の戦闘状態にある。治安関係者によれば、ヒズブッラーの戦闘員は政府を支持するムスタクバル潮流の事務所を少なくとも3箇所襲撃、多くの自動車や店舗が炎上し、怯えた市民数十人が騒乱の起きている地区から逃げ出した。ベイルートにおいてガザ地区での事態が再現される可能性を示す光景だ。

 スンナ派・シーア派抗争や内戦を予兆するこのレバノン危機の解決に向けた政治的・外交的コンタクトは実を結んでいない。こうしたコンタクトのうち最も目についたのは、サウジアラビアのサウード・アル=ファイサル外相の命を受けて、アブドゥルアズィーズ・ハウジャ在レバノン大使がイランのムハンマド・リダー・シャイバーニー[在レバノン]大使と行った危機打開策の協議であった。シャイバーニー大使はヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長とナビーフ・ビッリー国会議長の両者に連絡をとり、政府がシーア派を標的とした決定を撤回することが解決への糸口だとの回答を引き出した。

 ナスルッラー書記長は記者会見でこうした事情を率直に表明し、抵抗運動とそのメンバーが手出しを受ければその手を切ると脅しつつ、ヒズブッラーはクーデターを起こしたわけではないと否定、多数派勢力に対し、「もし我々がクーデターを望んでいたなら、あなたがたは監獄か海の中で眼を覚ましていただろう」と述べた。

 ムスタクバル・ブロックの代表サアド・アル=ハリーリー議員と進歩社会主義党の代表ワリード・ジュンブラート議員はナビーフ・ビッリー議長と連絡をとり、危機について協議したが、市中を支配しているのが弾丸や砲弾であるような状況では何ら前向きな案を出せなかった。現場を支配しているのはヒズブッラーであり、ムスタクバル潮流の拠点の多くが攻撃されたことは、ベイルートにおいてガザ地区での事態が再現される可能性を示している。

 レバノンの現場は昨日新たな展開を見せ、ムスタクバル潮流のメンバーがベイルート市や空港道路の封鎖に対する報復措置として〔シリア国境の〕マスナアへ向かう道路やスンナ派が多いベカー高原の中・西部の道路の大半を封鎖し、更にはヒズブッラーの拠点であるベイルート南部郊外とレバノン南部を結ぶ海岸道路を閉鎖した。ラアス・アル=ナブウ地区やコルニーシュ・アル=マズラア地区、国会議長邸があるアイン・アル=ティーナ周辺で武力衝突が繰り広げられ、議長府の警護員1人が死亡した。衝突はバスタ地区にも拡大し、ブルジュ・アル=ムッル周辺やムスタクバルTVの放送局付近でも銃声が聞かれ、夜間の閣議を開いていた閣僚らにも銃声が届いた。この閣議で声明は出されず、イリヤース・アル=ムッル国防相は国軍のミシェル・スライマーン司令官と会議を行うため国防省のビルへ向かい、司令官とともにサアド・アル=ハリーリー議員の和解案について協議を行った。

 ワリード・ジュンブラート議員の自宅の外では、同氏がテレビの生中継で話している最中にも大きな銃声が聞こえ、クレマンソー地区にある同氏の自宅が包囲されていることを示している。ジュンブラート氏は、「私は市民と共にベイルートに留まる。イスラエルによる包囲の際にもここに残ったように」と述べた。消息筋によれば、包囲は政府省庁や首相府付近、サアド・アル=ハリーリー議員や共和国ムフティーの自宅なども及んでいるという。

(後略)

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:13793 )