コラム:中東でのアメリカの失敗
2008年08月25日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ アメリカの蜜月の終わり?

2008年08月25日付クドゥス・アラビー(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン(本紙編集長)】

 コンドリーザ・ライス米国務長官によるイラクとパレスチナ占領地への訪問は、中東におけるアメリカの外交政策が陥っているジレンマの深さを映し出している。

過去5年にわたってイラクに7000億ドル以上をつぎ込み、4000人以上の戦死者を出しながら、米政府は今日に至るまでこれといった戦略的利益も物質的利益も勝ち取れていない。とりわけ米の占領に屈しているイラクへの米軍駐留に法的根拠を与える治安協定に、調印することが出来ずにいる。アラブ・イスラエル紛争の局面に関していえば、ライス長官による10回を越える訪問と、ブッシュ大統領による2回の訪問は、この問題を1ミリたりとも前進させなかった。それどころか、アメリカが和平交渉の仲介を始めた振り出し以前にまで後退させてしまった。

 政権と恐るべき軍事力とをネオコンに奪い取られたことによってアメリカは、今後も数年にわたってイスラーム教徒の呪いにつきまとわれることだろう。ネオコンは“テロとの戦い”の名の下にイラクとアフガンで米の戦争を始め、不可能とは言わないまでも勝つのが困難なこれらの戦争を正当化するために、アル=カーイダの脅威を誇張した。コンドリーザ・ライス長官はまるで犯行現場の周りをうろつく犯罪者のように振舞っている。ライス長官が中東が抱える複雑な問題のどれ一つとして前進させられないままに中東地域に関心をつぎ込み、訪問を繰り返す理由はまさにこれなのだ。彼女はイラクに治安と安定を実現することにも、約束していたような民主主義を広めることにも失敗している。それ以上に重要なことは、テロとの戦いから7年たった今、アル=カーイダがより力をつけて勢力を拡大し、危険になっているということである。

 アル=カーイダはアフガニスタン国境の部族地域に新たな避難所を得て、そこに戦線を再集結させ、ターリバーンとの連携を強化し、その部隊をターリバーンと統一させることに成功した。これは欧米の軍事介入以前とは逆の事態であり、これによってアル=カーイダはイラクのスンナ派トライアングル地帯における自身のイスラーム国家の損失を取り戻しつつ、イラク支部を完全には失うことなく、マグリブ地域とソマリアに支部を広げることができたのだ。

 またテロとの戦いにおける決定的な勝利が実現されていないこと以上に重要なのは、米国が自身のはまり込んだ泥沼に気を取られすぎて、中国やロシアのような新たな大国が世界の舞台で台頭し、アフリカやイラン、シリアやレバノンといった動きの激しい世界の各地でイニシアチブを握り始めていることにまで目が向いていないということだ。米政権にとってアル=カーイダは絶頂期のソ連に匹敵する“超大国”になってしまった。こうしたアル=カーイダへの評価は前例の無い政治戦略上の単純さを暴き出す一方で、ジョージ・ブッシュとトニー・ブレアに率いられたネオコンが隠し持つイスラームとイスラーム教徒への憎しみを内に秘めている。

 アル=カーイダは国家ではないし、核弾頭も保有していない。アル=カーイダはある限定された地域内で恐慌状態を引き起こすことはできるかもしれないが、新聞やテレビニュースのヘッドラインを独占するだけのことで、能力の低さゆえに単独で国家の体制を変革したり打ち破ったりすることは出来ないのだ。

(後略)

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( 翻訳者:小林洋子 )
( 記事ID:14619 )