レバノン北部のキリスト教マロン派2勢力の支持者が衝突
2008年09月18日付 Al-Nahar 紙

■ フランジーヤ氏は司法当局に猶予期限提示、ジャアジャア氏は武装解除を要求
■ 夜にジュンブラート氏とハリーリー氏が会談
■ ブサルマの戦闘によって一連の衝突のキリスト教徒地域への拡大に懸念
■ 事態収拾のため日曜日まで厳戒態勢

2008年09月18日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

 バアブダ宮殿で国民対話会議が再び開始され、第1回会合の後に発表された声明では各地で相次ぐ事件を受けて治安情勢に対応する必要性が強調されているが、それから間もなくクーラ郡ブサルマで[レバノン軍団とマラダ潮流の支持者の衝突]事件が発生した。一連の治安紊乱行為が、競合・対立し合うキリスト教徒各勢力の混住地域に波及し、混乱が全土に広がって治安の悪化が国内情勢全体を脅かし続けることへの不安が高まっている。

 事件への対応に追われている政界および治安当局の消息筋が本紙に語ったところによると、政府高官および治安機関は、今回の事件がその重大性において、ここ数日間に各地域で発生した事件を上回るとの認識の下に対応している。各地での事件が重大でないというわけではないが、今回の衝突では「レバノン軍団」および「マラダ潮流」の幹部が死亡しており、長年にわたって積み重なってきた両者の対立ゆえに、今後事態の速やかな制御と収拾が困難になる可能性があるからだ。

 事件の発生直後、両勢力の反応や治安状況が悪化することを防ぐため、政界および治安当局はある種の厳戒態勢に入っており、国家機関が事件への対応に着手したことと、発生直後から開始された国軍当局の調査に便宜を図るよう両勢力に要請がなされたことが、関係者に伝えられた。ブサルマやクーラ郡の村々など各地では厳重な警備が敷かれた。警備体制は当面継続される予定だ。日曜日にはレバノン軍団がジュニエでの集会を予定しており、参加者らが両勢力の混住地域を通過する際には不測の事態に備える必要があるからだ。

 ズィヤード・バールード内相を議長として昨日開かれた中央治安評議会の臨時会合では、事件後の事態の収拾に向けて治安当局および国軍が早急に一連の措置をとることが決定された。またこれらの措置については、ミシェル・スレイマーン大統領を議長にジャン・カフワジー国軍司令官、エドモン・ファーディル情報局長官、アシュラフ・リーフィー国内治安部隊長官が出席しての会合がバアブダ宮殿で開かれ、詳細な検討が行われた。

 軍事法廷付のジャン・ファハド政府代表が昨日開始した調査では、目撃者の証言の聴取を受けて事件に関して数々の糸口が見つかった模様で、速やかに真相を究明しブサルマでの武力衝突を引き起こした犯人を確定すべく鋭意調査が進められている。衝突ではマラダ潮流の現地幹部であるユースフ・アル=シャッブ・フランジーヤとレバノン軍団の活動家であるピエール・イスハクが死亡し、ファリード・ハビーブ議員[※レバノン軍団所属]の護衛である国内治安部隊員ら3人が負傷している。関係者によると、事件直前に現地は激しい緊張状態に陥り、衝突の発生を防ぐため政界の関係各方面に連絡がなされたという。昨日[の事件後]には[マラダ潮流代表である]スレイマーン・フランジーヤ元内相およびレバノン軍団のサミール・ジャアジャア執行部議長との間で集中的な連絡が行われた。両指導者の表明した姿勢は、事件の重大性に鑑みて、事態の悪化を回避し収拾に努める意思を反映したものではあったが、双方とも事件と今後の展開の責任は相手側にあるとして、事件を引き起こした犯人を明らかにして司法当局に引き渡すよう主張した。

 レバノン軍団は、ブサルマで破られたポスターを貼り直していた活動家らに対してマラダ潮流が武装して待ち伏せ襲撃したと非難している。一方、マラダ潮流は、レバノン軍団が挑発のためユースフ・フランジーヤを暗殺したと非難し、「レバノン軍団活動家のピエール・イスハクが死亡、ファリード・ハビーブ議員の護衛である国内治安部隊員のミシェル・ミハイル、マンスール・タウク、イリヤース・ハビーブが負傷したのは[マラダ側の]正当防衛によるものだ」と主張している。

 フランジーヤ元内相は昨日行った記者会見で政府および司法当局に対して、15日以内に第1回調査結果報告書を発表するよう要求し、「我々が報復を行い、人々を村から追放することが求められているのだとしても、それは起こらないだろう」と述べた。またフランジーヤ氏は「レバノン軍団がこのような空気を作り出すべく煽動を行っている」と主張し、ハビーブ議員には事件に関する「直接の責任」があると述べた。また、「ジャングルの掟が用いられること」に警告を発し、「たとえ議員を訴追することになろうとも、司法当局は公正でなければならない」と主張した。また、「何があろうとも、北部およびレバノン全土に存在しているレバノン軍団のメンバーは、我々の保護の下にある」と述べた。

 ジャアジャア氏はその後、フランジーヤ氏の発言に対して「彼の発言の前半は責任と自覚ある冷静なものだが、後半は前半と相反している」と述べ、フランジーヤ氏がハビーブ議員の護衛を非難していることを非難した。ジャアジャア氏は、「フランジーヤ氏がハビーブ議員に対してこのような受け入れ難い脅迫を行うことを拒否する」と述べ、「ブサルマのマラダ潮流の拠点で軽率な振る舞いが行われていること」をこの数ヶ月間フランジーヤ氏に対して何度も伝え、「事態収拾のため介入するよう要請してきた」と語った。またジャアジャア氏は、「戦争はずっと前から過去の出来事であり、我々は前を見ている」と述べつつ、「我々は誰の保護も受け入れない。まるで、我々を保護する唯一の存在であるレバノン国家が存在しないかのような発言だ」と述べ、国軍の統制により「党派が群れ集い武装することを禁止」するよう提案した。

 一方、ミシェル・アウン議員は昨夜テレビでの談話で、「治安状況は政治家の手に負えなくなっているようだ」と述べつつ、「各派の相互理解が本当であれば、不安定な状態が広がり内戦にまで事態が悪化することはないだろう」と述べ、「我々が内戦間近の状態にある」ことを否定した。治安の悪化についてアウン氏は、「可能性は2つに1つだ。和解を進めている人々が本気でないのか、現在進められている和解とは無関係な外国と結びついて破壊活動を行う細胞が存在するかだ」との見方を示した。進歩社会主義党との和解については、「レバノン山地の人々には、物心両面で数々の権利が山積みになっている。山地に帰還する人々を支配しようとする動きがある。...この和解には大きな困難がある。この件についてはジュンブラート氏次第だ。個人的に私と彼の間に対立はないが、この事は相次ぐ敵対行為によって疲弊した社会の問題なのだ」と述べた。

 そうした中、「民主主義会合」代表であるワリード・ジュンブラート議員は昨夜10時にクレイティム[のハリーリー邸]を訪問し、「ムスタクバル・ブロック」代表であるサアド・アル=ハリーリー議員と単独で1時間の会談を行った。ハリーリー邸の関係者によると会談では、国内情勢についてあらゆる側面から協議が行われたという。

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( 翻訳者:森晋太郎 )
( 記事ID:14742 )