コラム:欧米コミックキャラクターに対するイスラーム的観点からの批判とそれへの反駁
2008年10月11日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■ ミッキーマウスとジェリーに対する死刑の呼びかけ

2008年10月11日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HPコラム面

【サーミー・ハサン】

あるアラブ国で、宗教人が動画(子供向け漫画)のキャラクターに対する死刑を呼びかけたという奇妙なニュース*をアラビア語紙で見た。その漫画のキャラクターには、ミッキーマウスや、トムと滑稽なコンビを組んでいるジェリーなど、子供よりむしろ大人の心を捉えているものも含まれる。死刑の理由は、撲滅すべき汚らわしい動物、ネズミを彼らが表しているからだという。

これらのキャラクターは、子供向け映画会社の最大手「ウォルト・ディズニー」に集まった風刺画の第一人者たちの発想から生まれたものである。彼らは、猫に捕食され犬に噛み付かれ人間に追い回されるか弱い動物に力を与え、子供のみならず大人の心にも幸せをもたらすキャラクターに仕立て上げた。実際、映画の元になった手描きの絵は、非常に美しくシンプルなものである。いと高きアッラーは、地下の下水管やほら穴に安全な住まいを見つけるよう彼らを創造されたが、ねずみの仲間には、木の実や野菜を食物として農地や庭園に住むものもいる。そして、全く汚れてはいない土地に住む野生動物と同じように扱って、それらネズミ類の肉を食べる人々もいるのである。

これらの漫画キャラクターは、大人子供を問わず何百万という人々を喜ばせようとした人間の想像力から生み出された。それを何故、自ら宗教人を名乗るような人物が、死刑にせよなどと言うのか。死刑とはつまり、一般的な理解では、彼がムスリムの子供達にそれらのキャラクターを禁じるという事だが、それこそ、愛情と一体感をもって子供達を見守るべしとするイスラームに対する深刻な攻撃である。この人物は、真実と光、発展と文明の宗教であるイスラームの誤ったイメージを広めてしまった。まるで、イスラームの人々がひどく後進的で、未だ暗黒と無明の時代に暮らしているかのようなイメージである。

(イスラーム法的に)許されるものを禁じられているといい、禁じられるべきものを許すとする人々がいる。このような人々は、自身の心の奥底の悪しき傾向に従い、己の目的を果たすためイスラームを最も醜悪な形で利用する。宗教をまがい物として騙るこの人物は、子供向け動画のキャラクターを死刑にせよなどという呼びかけしかできなかった。彼が欲した事は、我々が「世間の笑いものになる」ことである。それ以外にこの稚拙な呼びかけは説明がつかない。これは、彼自身の信仰の弱さと無知を示すものに他ならない。

イスラーム、キリスト教、あるいは他の宗教社会においても、宗教人とは高い地位にある人々である。彼らの呼びかけは、宗教と発展、文明の間の架け橋を人々に意識させるものでなくてはならない。

信仰者としての自覚を維持し、妄想の迷宮に陥らないようにするためには、既存のものの考え方と最近の傾向を混同すべきではない。我々は、比類なき知恵と発展を通じて現れた、人間のための最上の共同体なのだから。

*訳注:9月下旬、サウディアラビアのシェイフ・ムハンマド・サーリフ・ムンジドがテレビ出演した際に、「(イスラームにおいては)シャイターン(悪魔)の軍勢の一員とされるネズミが、子供の心に愛らしいものとして投影されるようなキャラクター」についての批判的意見を述べた。これについてアラビア語系メディアが、「ミッキーマウスに死刑のファトワ(イスラームの宗教上の権威が発する見解)」等の報道を行い、欧米メディアが反発する現象が発生。あるニュースサイトによれば、ムンジド自身はファトワ発出を否定、死刑発言も文脈を無視した歪曲であり、そのような報道自体がイスラームに対する誹謗中傷であるとの立場を示した。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:14889 )