寄稿:イスラエルの攻撃と「イランのハマース」との間で挟み撃ちされるガザ民衆
2009年01月10日付 al-Sabah al-Jadid 紙

■イスラエルの攻撃とイランのハマースとの間で挟み撃ちされるガザ民衆

2009年01月10日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP寄稿欄

【カーズィム・ハビーブ(ベルリン在住のイラク人著作家、政治・人権活動家)】

 一方で犯罪的な攻撃が行われ、もう一方でアラブとユダヤ、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との間に公正かつ恒久的な和平が実現することを望まない勢力がいる状況、また感情論が支配している状況において、民衆に対し率直で透明性のある姿勢を取ることは研究者にとって容易ではない。しかしながら、繰り返し真実は述べられねばならないし、パレスチナ・イスラエル紛争、アラブ・イスラエル紛争において、責任ある立場と理知主義的な政策によってマジョリティに対抗するために、強調されるべきことがある。

 1967年の6月戦争〔=第三次中東戦争〕以来、イスラエルがアラブおよびパレスチナの領土を占領し続けていることが、彼らにわずかに残されたガザ地区とヨルダン川西岸地区でパレスチナ人に起きているあらゆる問題の中心的で根本的な理由であるとみなされることには、なんら疑いはない。〔1947年の国連によるユダヤ国家とアラブ国家へのパレスチナの〕分割決議案以前の領土のうち、アラブ側に残されたのは22パーセントにも満たない、ユダヤ人入植地だらけの土地だ。

 歴代のイスラエル右派政権の大半が、かつてもそして今でも紛争を継続し、将来のパレスチナ国家となるべき部分を新たに併合しようとしていることにも、疑問の余地はない。少なくともこの点は、アラブ諸国の間でも議論の必要がない事実である。歴代のイスラエル政府の政策がこのことを何よりもはっきりと示しているし、イスラエルの中の和平支持者や民主主義者たちの多くも、この点で考えが一致している。また軍事にたのむ政策と占領の継続がユダヤ人であれ、イスラーム教徒あるいはキリスト教徒のアラブ人であれ、少なからぬ割合のイスラエル国民に受け入れられていないことも確かだ。

 疑いようもなく、PLO諸派とイスラエルとの間の軍事的な対決は問題を解決するどころか、複雑化する。それはイスラエルの軍事力とパレスチナの軍事力が不均衡であることに加え、両者間で危機が生じるたびに国際的な場や国連安保理において強い存在感を示す、西洋諸国の広範囲なイスラエルへの支持のせいで、政治的にもイスラエル側に有利なように均衡が破られているためだ。

 そしてまた、アラブ諸国や中東のいくつかの国の統治者たちが様々な、相反する政策を抱いており、その大半はパレスチナの地に2国家を樹立するための合意に到達するにあたって、対話を通じた平和的な闘いを行うことの助けにはならないものであることも確かだ。

 闘争の継続が問題を解決させるのか、それとも問題を複雑にするだけなのかについて、アラブ諸国の見解は一致していない。そのためPLOに参加する大半の勢力、中でもファタハと、多くのアラブ諸国とが、武装闘争は事態をさらに複雑化し、将来のパレスチナ領を一層奪い取らせるだけだと指摘しているのに対し、ハマースやイスラーム聖戦といった過激な政治的イスラーム勢力と、バアス党やアラブ会議派といった過激な右派民族主義勢力、さらにはイランと、世界の過激な政治的イスラーム勢力、特にアル=カーイダとレバノンのヒズブッラーは、イスラエルとの問題解決も和平も否定し、パレスチナ全土を解放して中東の地図からイスラエル国家を抹消するまで闘争を継続すべきだとしている。この立場はあらゆるアラブ民族主義勢力、政治的イスラーム勢力、特にムスリム同胞団が数十年にわたり取ってきたが失敗が証明された立場である。この立場を取っているのは今や過激な右派民族主義勢力と過激な政治的イスラーム勢力だけであり、それは実質的な解決に結びつくどころか、一層の緊張と死をもたらすことであろう。

 パレスチナ全土をアラブが取り戻すか、さもなくば死か、というスローガンはさらなる死と、将来のパレスチナ領の縮小につながるだろう。そしてこれこそが、過激な政治的イスラームを掲げるイラン政府が支持している立場なのだ。イランはあたかもイスラエルを破壊したがっているようでいて、実は1967年の戦争以前に彼らのものであった領土に国家を建設したいという、パレスチナ人の夢を破壊している。

 PLO指導部とハマースとの間に共通言語を見出し、次いでイスラエルとハマースの停戦を延長させるために、エジプトは尽力を重ねてきた。ハマースは過激な政治的イスラーム組織で、昨年に軍事クーデターを起こしてガザ地区を武力制圧した。イスラエル南部に対する彼らのロケット攻撃をパレスチナ自治政府大統領は正しくも「闇雲なロケット」だと評したが、闇雲どころか、ガザ地区に攻撃を加えるために国内的にも国際的にも十分な口実を与えたとすら言えるだろう。そして軍事衝突によって踏み潰されるのはガザ民衆であり、ハマースのロケット弾が向かう先はイスラエルの市民なのだ。

 ところがハマースとヒズブッラーは、エジプトが〔パレスチナ大統領の〕マフムード・アッバースやイスラエルと手を結んでいると非難し、ヒズブッラーはエジプトに混乱と死を呼ぶ噂を煽ろうとしている。このことはベイルートでハサン・ナスルッラー書記長が行った演説の中に明らかだったし、エジプト政府とムバーラク大統領は正当にもこの発言を強く断罪したのだった。

 ハマースがガザで行っているのは国民主義的な政策ではなく、イラン式の政策であって、その目的は不均衡な緊張と戦闘をエスカレートさせることにある。そうすることでアラブ世界をイスラエルとの戦争に引きずりこもうと期待しているのだろうが、それは決して実現しない悪夢だ。それが益するのはパレスチナ全土を手にしようと欲しているイスラエル内の極右勢力の最終目標であり、地域の緊張状態は地域および世界における自国の闘争に有利に働くと考えているイラン勢力だけだ。これは結局、パレスチナの民と、その公正なる大義に甚大な損害を与えることになるだろう。

(後略)

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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:15557 )