コラム:アラブ圏におけるエジプトの覇権衰退について
2009年02月26日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 遅きに失したエジプト外交
■ クドゥスの見方

2009年02月26日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

ホスニー・ムバーラク大統領からその息子ジャマールへの政権移行問題に忙殺され中東域内での役割を失いつつあったエジプトだが、それに関する内外の批判の高まりを受け、このところ外交面での動きは目立って活発である。

ムバーラク大統領は、国際刑事法廷が逮捕を要請しているスーダンのバシール大統領との連帯を示すためハルトゥームに飛んだかと思えば、イランがその14番目の州などと評してアラブ的性質に疑念を呈したバハレーンの国王を支持すべくマナーマへ向かった。次いで、リヤド・ダマスカス関係改善のニュースが信憑性を帯びる中、サウジの首都を目指した。

中でも、パレスチナ会合のエジプトによる主催が最も顕著な展開であろう。昨日開始された会合では、競合する二派、「ファタハ」と「ハマース」の代表団が積極的な対話を行い、メディア戦争の停止、逮捕者の釈放などに成果が見られた。更にエジプトは、今後2週間の内に同じくらい重要な会議を主催する。ガザの再建問題、それに必要な資金を募る会合である。

エジプト外交が活性化したのは、サウジアラビアの進出により、アラブ圏におけるエジプトの覇権が、そしてイラン、トルコ、イスラエルにより中東圏でのそれが衰退しつつあるというアメリカの発表の後であった。それによれば、エジプトは中東和平プロセスに賭け、政治的外交的に多大な投資を行った。にもかかわらず、待望されるパレスチナ国家は未だ現れていない。

しかし、この外交活動が望ましい結果をもたらすという楽観論に浸るのは困難である。第一にそれを指導する人々が十分な手腕を有さない。第二にその活動の根拠が曖昧でビジョンが明確でない。そして、何よりもそれは遅きに失した。

(まず第一の点につき、)アブルゲイト・エジプト外相は、ラファハ通行所問題への対応の酷さにより、自身の外交活動をことごとく台無しにした。彼は、飢えるパレスチナ人が越境しようとするならその足を折るなど、外交的とはよべない発言を行い、緊急ドーハ会議を頓挫させてやったと得意気に述べた。21世紀の外務大臣としては有り得ないうぬぼれと傲慢をさらしているのである。

次に、これら外交活動の拠って立つところについてだが、輪郭がはっきりしない。あたかも、あらゆるアラブ国家の内政問題にエジプトという障害を置くことを基本としているようであり、その一方で、イスラエルに対しては全く腰が低く、その侮辱を甘んじて受けている。エジプトの停戦努力を、その最後の瞬間、声明が合意され署名を待つばかりという時になって失敗させるといった類の侮辱である。

実りある外交とは、域内レベルで様々な成功を収めたうえ、その潮流の中で主導的役割を果たすものではないだろうか。これをエジプト政府の活動に当てはめてみると、実に控えめな成果しか見出せない。湾岸の安全保障問題にエジプトは不在であり、ダールフール危機においても然り、アフリカの角、いやアフリカ大陸全体においてもエジプトは明らかに無視されている。そしてレバノンの和解はエジプトとは全く無関係に行われた。このような事実が、欧米専門家の多数をして、アラブ圏における他方面の勃興に対しエジプトの覇権衰退という見方に傾かせている。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:15881 )