コラム:ガザ攻撃におけるイスラエルの戦争犯罪
2009年03月23日付 al-Hayat 紙

■ イスラエル、そしてアラブへの有罪判決

2009年3月23日付アル・ハヤート紙(イギリス)HPコラム面

【マフムード・アル=ムバーラク】

先のガザ侵攻中イスラエルが犯した「戦争犯罪」を調査すべきとの声が、世界各地の人権関係組織から続々とあがる中、新たにこの「犯罪」の証拠が、今回は彼ら(イスラエル)の身内から出てきた。

イスラエル将校や兵士たちが先月行った証言、先週木曜、金曜の「ハアレツ」紙が報じたものがそれである。証言は、部隊指揮官直々の指令によりそれらの戦闘員自身が「戦争犯罪」を犯したという率直かつ深刻な告白であった。

ある歩兵部隊指揮官は、パレスチナ女性とその子供を意図的に機関銃で殺害したと言う。また別のケースでは、通りを一人で歩いていた高齢のパレスチナ人女性が殺されている。彼女は、イスラエル兵たちとって何らの危険も意味しなかったにもかかわらずである。これら恥ずべき証言によれば、イスラエル軍の主張とは異なり、イスラエル戦闘機は事前警告なしに民家を標的としている。

兵士たちの証言は、彼らに与えられた指令がパレスチナ民間人の生命をないがしろにしていた事をはっきりと示している。彼らの中の数名が言うように、パレスチナ人を「人間扱い」する必要はなかった。「ガザですばらしいのは、通りで誰かを見かけたら簡単に発砲できることだ。標的は武装している必要はない」というある兵士の発言がこれを裏付ける。

中でも深刻な告白は、ユダヤ教のラビたちが憎悪をかきたてるような宗教的用語を用いてガザ戦争を形容し、それを記した印刷物が彼らに配られていたというものである。兵士たちの証言によれば、それらの印刷物は、「明確はひとつのメッセージ」を伝えている。それは、「我々イスラエルの民は奇跡によってこの国へと至った。今や、ユダヤ人でないものを根絶やしにすべく戦うべき時である」というものだ。

筆者は、この「ユダヤ人以外を根絶やしに」という言葉を長らく凝視した。これには、国際法上深刻な容疑、国際刑事裁判所規程第6条によれば「ジェノサイド(国籍、人種、宗教、宗派などにより構成されるある集団の殲滅を目的とした大量殺人)」と呼ばれる容疑がかけられる。言うまでもなく、このような宗教的意味合いを持つ指令は戦場においては激情を誘発する。おそらくは兵士たちによる過剰殺傷につながっただろう。「血に飢えたような感覚だった」とある兵士は表現する。

もしこのような印刷物が、兵士たちの証言に示されたように、イスラエル軍により公に配布されていたなら、現在の国際法ではもっとも深刻とされる犯罪、「ジェノサイド」容疑でイスラエル国家が公式に追求されてしかるべきである。第二次大戦中のドイツ軍同様、イスラエル軍はその国家を代表する公的機関であるのだから。

自白であれ、証言もしくは証拠物件に基づくものであれ、刑事裁判所で容疑が固まれば、あとはそれらを収集、正当性を証明し、しかるべき法廷へ申し立てるだけである。今回のイスラエルのようなケースでは、ニュルンベルグ・東京裁判、もしくはユーゴスラビア、ルワンダ裁判と同種の法廷が要請される。

しかし、アラブ諸国政府は、まるで自分たちとは関係ないかのように、この件に無関心と見受けられる。アムネスティ・インターナショナル、ジュネーブ人権機関そしてEUの人権機関多数がイスラエルの起訴を要請したとき、あるいは、国連人権問題担当官のような国際機関の高官たちがイスラエルの戦争犯罪に関する調査を呼びかけたとき、パレスチナ大統領もその首相も、閣僚も顧問の一人さえも、それに応えることはなかった。他ならぬ彼らこそが当事者だというのに。

イスラエルに対する容疑を固める法手続は容易ではないが、EUの法廷はこの件の審理を受諾している。そしてボランティア弁護士たちが、アラブ諸国政府の合意を待つことなく実際に手続きを始めようとしている。しかし彼らは、この件を追求するのにかかる経費を負担できるほど豊かではない。この法的闘いの継続を妨げるものが、それにかかる経費であるというのは遺憾なことである。証拠を収集しそれをEU法廷へ提出するボランティアの一人が筆者に告げたところによれば、このような作業にかかる費用は、アラブのどこかの国で中規模の会議を開催する費用を上回るものではない。しかし、さらに残念なことに、あるEU議会メンバーが述べたところによれば、アラブの弁護士たちがEU議会メンバーたちに対し、来月開催予定のダーバン会議(反人種主義・差別撤廃世界会議)への不参加を要請したそうだ。イスラエルに人種主義疑惑をかけているこの会議に対抗すべく、イスラエル側は数千万ドルの予算を取ってある。

しかし、ガザ戦争のため今日イスラエルを追い詰めている容疑から逃れるのは難しいと思われる。イスラエルの国際法違反の弁護という重荷を負う弁護士たちをうらやむものはいないだろう。

国際刑事裁判所がイスラエルの罪状を受け入れるのであれ拒否するのであれ、今日なされるべき事は、日ごとに増えていく上述のような証言、証拠をEU諸国内の専門法廷へ提出することだろう。1949年のジュネーヴ諸条約の第四条146項に基づき、欧州祖国は何者であれ戦争犯罪者を訴追しなければならない。もし欧州諸国のいずれかでイスラエル政府関係者が被疑者となれば、これら国家間の犯罪者交換協定により同人のEU圏内での移動は禁じられる。

しかし、アラブ共同体がこの与えられた法的チャンスを見逃すとすれば、非難されるのはイスラエルだけではない。そのようなチャンスを逃した国々もまた糾弾されてしかるべきなのである。

*筆者は国際法専門家

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16049 )