コラム:英国軍のイラク撤退によせて
2009年05月01日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 負け戦から撤退する英国
■ クドゥスの見方

2009年05月01日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

イラク占領に6年間参画した後、米軍に治安責任を委譲し、英国軍はバスラから公式に撤退した。この措置を受け、(英国内では)この非合法かつ非倫理的戦争に英国が荷担することになった経緯を公開調査せよとの要請が一段と高まると思われる。

英国軍はイラク抵抗勢力との交戦により179名の兵を失った。一方で、数十億ドルを費やしながらその成果は極めて限られている。バスラ市における、水道、電気、教育、衛生といった基本サービスの水準は最低にとどまり、失業率は30%にのぼる。

バスラがイラクの他地域に比べると安全であったとは言える。しかしこれは、英国軍が過去にイラクを占領支配した経験を生かして現地社会の管理をなし得たためというよりは、バスラという街が元々、市民が平和に暮らせる文化都市であった事に負うところが大きい。それに加え、その市民の大部分は、前政権に対する反対勢力であった各種の宗派的政党に属していた。

イラク戦争、そして同国の占領がイラクにおける体制変更をもたらした事は事実だ。しかし問題は、そのやり方が法と倫理に適っていたかどうかである。イラクの状態は、戦争以前よりも良くなったのか?

この「成果」に至るまでの経費は、侵略軍にとってもイラク国民にとっても、そして周辺地域にとっても莫大なものであった。体制変更のため、イラク国民は少なくとも百万以上の犠牲者を強いられた。4百万以上が難民と化し、内半数は近隣諸国への避難を余儀なくされ、またやはり4百万が戦災孤児、未亡人となった。

一方アメリカは、この戦争により4千の死亡者3万の負傷者を出している。支出は現在までに8000億ドルにのぼり、将来的には兆単位に至る見込みである。

存在しなかった事が証明されたイラクの大量破壊兵器のような、虚偽の口実に則りこの戦争に参画したことにより、英国政府は、中東並びにイスラーム世界で評判を落とした。それにより、英国政府は、その利益と国民の安全を脅威にさらすことになった。罪のない市民60余名を犠牲にした2005年7月7日の爆破事件はこれを明白に示している。この流血沙汰に及んだ実行犯たち自身が、イラク戦争に英国が関わり数千のムスリムを殺戮していることが動機であったと告白しているのである。

これまで英国政府は、現地に駐留する英国軍の安全を左右しかねないとして、イラク戦争と自国との関わりについての調査を拒否してきたが、今やその口実は無効となった。国民を惑わしたブレア前首相と諜報機関の役割についての真実を知るためには、この調査の開始が必須である。英国の利益にはならないどころか、英国を脅威にさらすことになった戦争に4万5千の兵を送り込み、欧米諸国、特に英国を脅かすイランの勢力に対抗する要であった国を破壊し、地域に戦略的不均衡をもたらした、そのような事態に関する全ての真実を明らかにするために。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16335 )