コラム:エジプト当局とヒズブッラーの対立、パレスチナをめぐる主導権争いとエジプト国内治安
2009年04月26日付 al-Hayat 紙

■ 現段階の特徴:国家体制と政治組織の争闘

2009年04月26日付アル=ハヤート(イギリス)HP論説面

【アーディル・マーリク(レバノン人著述家、ジャーナリスト)】

 エジプトの治安を悪化させる行為に関わった細胞の逮捕を背景としたエジプト当局とヒズブッラーの対立をめぐっては、次のように結論づけることができるだろう。

 国家間の争いが大幅に減少する一方、国家と各種の政治組織や政党との争いや対立の激しさは増している。この種の争いをもたらしているのは、様々な組織を「抱え込み」、入念に検討されたタイミングで時折国内の「諸問題」の活性化を請負わせる国家の存在である。地域的性格を持った紛争や危機が発生している原因はそこにある。また、国際的利害と連動し交錯する国内問題の側面も重要である。

 エジプトとヒズブッラーの危機は、事実関係の究明を誓ったエジプト司法当局の手に委ねられた。ヒズブッラーには、自己弁護に努め事件の真相を説明すればよい。ハサン・ナスルッラー書記長は、エジプトで逮捕されたのが実際に同党に属していることを肯定し、党としてはどのアラブ国家とも争いを望んでおらず、エジプトの治安を危険に晒す意図もないことを強調している。しかしヒズブッラーは、この危機によって示された問いに答えなければならない。エジプトで起きたことは、所謂「主張されざる名誉、否定されざる抵抗と嫌疑」、すなわち、各抵抗組織を結びつける闘争姿勢からガザのハマースに対して、あらゆる手段を用いて支援を提供することの是非をめぐる出来事なのである。したがって、抵抗運動がパレスチナ抵抗諸組織の対イスラエル闘争を支援する能力とエジプト国内治安との間の境界線を見定めなければならないのだ。

 しかし、今回の危機により大きな広がりを与えた主な要因は、パレスチナ情勢に対するエジプトの支配力を奪い取ろうとする企てをエジプトが感じ取っていることだ。エジプトのパレスチナへの影響力は、パレスチナ問題およびパレスチナ人、特にガザ住民との歴史的な関係と結びついている。それゆえにホスニー・ムバーラク大統領は昨今の動きに反発し、最近の演説で「パレスチナ問題を口実にする者」へ警告を発した。ムバーラク氏は「平和に敵対し地域を奈落の瀬戸際に追いつめ、我々のアラブ世界に自らの影響力を拡大しようと目論む地域勢力の介入をエジプトは許さない。その勢力はアラブ諸国およびパレスチナの内部対立を煽り、各地の協力者にエジプト国家の治安を脅かさせ、国境を侵犯させ、安定を揺るがさせている」と強調し、「私は彼らにこう言おう。我々は諸君の計画を重々承知している。諸君の陰謀を明らかにし、諸君の詭計を諸君の首根っこに突き付けよう。パレスチナ問題を口実にするのはもう沢山だ。エジプトとエジプト国民の怒りに気をつけよ」と述べた。

 エジプト側の言説における激越な語調は、エジプトとイランの関係が最悪の状況に達していることの表れであり、「カタールが一部のパレスチナ組織を支援してエジプトの安定を揺るがす行為をけしかけている」との非難の表れでもある。ドーハにおけるアラブ諸国首脳会議をエジプト大統領がボイコットした背景にはそうした事情があったと見るべきである。同首脳会議は「アラブ諸国和解サミット」と名付けられたが、期待通りの成果はあがっていない。

(後略)

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( 翻訳者:平川大地 )
( 記事ID:16481 )