コラム:米国によるイスラエルへのNPT参加要請について
2009年06月01日付 al-Hayat紙

■アメリカ風ジョーク

2009年06月01日付アル・ハヤート紙(イギリス)HPコラム面

【ムスタファ・ゼイン】

ローズ・ゴットミューラー米国務長官補佐は、イスラエル、インド、パキスタンに対し核兵器不拡散条約(NPT)への調印を要請した。これにより、核兵器開発中のイランを脅す一方で武器庫を確保しているイスラエルには目をつぶるのかというアラブの疑念は、一応の回答を与えられた。

この事で、合衆国政治とイスラエルに対するその立場は移行したとみなす向きもあった。しかし、声明を冷静に読むと、それがオバマ政権による広報戦略の一環であったことは明確である。大統領は、アラブ・ムスリムへのメッセージを携えたエジプト訪問を前に、自分たちが公正な中東和平を目指しているのだと人々を納得させ、彼らの「心をつかむ」ことをねらっている。

イスラエルでは、この声明は侮りと無関心で応じられた。上下両院400の議員は、イスラエルの治安維持を大統領に要請する。それと対立する用意はホワイトハウスにはない。それ故、たかが国務次官補による声明に、イスラエルは無関心である。更にいえば、イスラエルはすでに核武装しており、たとえ条約への調印を強制されたとしても、その武器庫を放棄せよと強要することは誰にもできない。条約は、調印国の兵器保持や開発を妨げるものではない。それは、これらの兵器の拡散を禁じるのであって、所有者から取り上げることはしないのだ。

米声明が侮られた事は、まことに教養深いリーバーマン外相が言い表している。外相によれば、「米政権は、イスラエルが命ずればどんな政策でも立案してくれる」。そして両国関係の歴史をその発言の中で示して見せた。外相は、イスラエルを和平の道に無理やり押しだそうという試みを阻止してくれる、米議会内外の「友人たち」の力、並びに、米国の圧力に屈するならばどんなイスラエル政府でも追い落としてくれるだろう、ロシア系移民からなる自党の力に全面的に信頼を寄せている。

和平への道において、合衆国がイスラエルに強権を行使し得るという夢を我々は垣間見た。設立以来1500億ドル以上になるというその無償有償の軍事援助を停止さえすれば、イスラエルの兵器工場は役に立たなくなる。そうすればイスラエルは、非民主的で「不愉快な」アラブと平和裏に共存するしかなくなるだろうと。しかしこれは夢に過ぎなかった。米帝国主義が民主主義によって世界を変えるという夢。そこでは、以前の帝国が犯したような過ちも虐殺も繰り返されない。オバマは、この夢から覚め、周囲の現実と向き合う勇気がないらしい。

ワシントンによるイスラエルへのNPT参加要請は、イランに対する偏った態度をうわべだけのモラルで隠ぺいしようとするものに過ぎない。そして、エジプト主導により核のない中東というアラブ世論を構築しようというもくろみである。さもなくばこれは、イスラエルの民族主義者しか笑わないアメリカ風のひどいジョークだ。

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(翻訳者:十倉桐子)
(記事ID:16587)