コラム:レバノン・イスラエル間の危機
2009年07月10日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ レバノンにおけるイスラエル・ネットワーク
■ クドゥスの見方

2009年07月10日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

レバノンは数々の危機に直面している。そのいくつかは、宗派ごとの割り当てをもたらすその政治制度に由来し、またあるものは何らかの利害関係を持つアラブ並びにその他の諸外国が介入してくることにより発生する。現在の組閣にまつわる危機はこの典型である。レバノン国内そしてアラブ諸国のいくつかの方面は目をそむけようとするが、現在レバノンが直面する最大の危機は、おそらくイスラエルだろう。レバノンの治安、安定に対する恒常的危機を形成しているイスラエルだが、現在組閣中の新内閣にヒズブッラーが入るならレバノン全土を爆撃すると脅したネタニヤフの声明により、このところその危険性が尖鋭化してきている。レバノン内政に対するイスラエルのあからさまな干渉は、このような恫喝もしくは、抵抗諸派の動向監視のためのスパイネットワークを張り巡らすことを通じて行われる。しかし、このイスラエルの干渉は、シリアによるレバノンへの介入ほど注目されない。後者に対しては、レバノン政党の多くが時には誇張して批判するのだが。

南部で敵国イスラエルのために活動していたスパイネットワークが摘発され、その住民ならびにレバノン軍将校の数名がイスラエルへ逃亡したというニュースから1週間もたっていない。先週の木曜には、治安部隊中佐が南部国境へ逃亡したが、これが国外逃亡した三人目の将校である。彼らは、自国並びにイスラエル占領から国土を解放した抵抗勢力に対する敵対的ブランに奉仕するためにリクルートされ、その挙句それを計画したイスラエルにかくまわれる。一方で抵抗勢力は、先の攻勢にも英雄的に持ちこたえ敵イスラエルを大敗させた。

折に触れてその細胞が摘発されるスパイネットワークに、レバノン国民やその軍将校をリクルートしようとするイスラエルは、2006年7月の敗北をそそぐため再びレバノンを攻撃しようと意図している。もし、イスラエルがイランの核プログラムを破壊しようとして空爆を行えば、レバノンはその最前線に位置することになる。そうなれば、ハイファ、アカー、サファド、そしてガリラヤのイスラエル入植地や町に4千発のロケット弾を発射した経歴をもつレバノン抵抗勢力は、その倍のロケット弾を発射するだろう。抵抗勢力の長、ナスラッラー氏は、イスラエルが少しでもレバノンへ侵攻しようとすれば大反撃を受ける、イスラエル側では未知の兵器が使用されるだろうと述べている。

レバノン治安軍は、スパイネットワークとそれに連座した者の摘発に成果をあげている。逮捕者は法廷へ送られ、自国への裏切り、敵との取引等の罪状にふさわしい処罰を受ける。もしくは、関係者がイスラエルの主人の元へ逃亡することになっても、摘発によりそのネットワークは解体される。幾多の危機、政治闘争、諸外国の介入、それらにもかかわらずレバノン治安機関は有能である。国がこのように困難な状況にある中で職務を遂行することにより愛国精神を発揮しているといえる。

Tweet
シェア


原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:16916 )