コラム:和平プロセスへの米政権の対応
2009年07月24日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ミッチェル特使による最後の訪問と次の訪問
■ クドゥスの見方

2009年07月24日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

ジョージ・ミッチェル米特使がアラブ地域への新たな訪問を開始する。「和平プロセスを前進させる。いかに障害物を取り除くか。」という題目でアラブ、イスラエル双方の関係者らと会談の予定だ。

今回の訪問は、米イスラエル関係の緊張下で行われたこれまでの訪問とは違ってくるだろう。その緊張関係は、入植の凍結、占領西岸の入植拠点解体という米政権の要請をネタニヤフがはねつけたため発生した。ホワイトハウス訪問中のネタニヤフは、入植凍結措置を進めることを一貫して拒否し、ネタニヤフ側近らは、この立場を誇り力と強固さの表れと評した。リーバーマン外相はその件をミッチェル上院議員に押しつけ、イスラエル側の譲歩と称するものがガザからの撤退によってどのように行われたか、南部の入植地やイスラエルの町へ発射されるミサイルがどの程度増えているか等々を講義してみせた。

しかし、ひと月半前のミッチェル訪問時と何も変わっていない。自然な成長という口実でイスラエル入植地は拡大を続けている。リーバーマンは依然として外相であり、ネタニヤフは占領東エルサレムでイスラエル人が無条件に入植活動を行えるようにした。イスラエル政府は、占領エルサレムのパレスチナの土地と、シェイフ・ジラーフ・マクディシー地区にある50の住宅地の居住許可を差し押さえる決定を行った。

イスラエルのこのような挑戦的姿勢に対し、ミッチェル上院議員と米政権がどう臨むのか不明である。今この瞬間も米政権は、入植に対しては「遺憾の意」、「反対」を唱えるばかりで、実際にそれを罰するいかなる措置も取っていない。

最も懸念されるのは、米政権が口先ばかりで入植に反対して見せた、その代償をアラブ側に要求するのではないかという点だ。例えば、イスラエルとの関係正常化の手続きを通じ、すぐさまイスラエル航空機に上空通過の権利を与えよ、あるいは通商を活性化し、占領エルサレムに商館を開設せよといった風に。

クリントン米国務長官によれば、和平プロセスと関係正常化に対するアラブ側の貢献は不十分である。アラブ側は、和平への真摯さを見せることにより、イスラエルの世論並びに彼らの政府を安心させなければならない。長官の呼びかけに真っ先に応じたのは、バハレーン皇太子シェイフ・サルマーン・ビン・ハマド・アール・ハリーファであった。米ワシントンポスト紙に寄稿した同皇太子は、イスラエルメディアを通じ、アラブ・イスラエル間和平努力の便宜を図るようアラブ側がイスラエル国民に訴えるべきと主張する。皇太子によれば、「我々アラブは、イスラエルの人々と直接コミュニケーションを図るために十分力を尽くしたことがない」。クリントン長官は、もちろんこの社説を歓迎し、ミッチェル議員をマナーマへ派遣してバハレーンの立場を讃え米政権からの感謝の意を伝えた。

アラブ・イスラエル闘争について、現米政権が、ジョージ・ブッシュとネオコン主導による前政権と全く異なる立場をとっていることは、議論の余地がない。しかし、我々アラブ、特にパレスチナは、その違いだけで前払いする必要はない。アラブの和平努力とされる、「完全撤退の前に完全正常化を」は不要である。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17023 )