コラム:レバノン内政、ジュンブラートの立場の変転
2009年08月03日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ジュンブラートが後悔する時
■ クドゥスの見方

2009年08月03日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面


ワリード・ジュンブラート氏は、自身と党の利益を一般的倫理観念に優先させる、政治的首領としての人格を体現している。英語のことわざで言う所の「隣の芝生の方が緑に見え」れば、彼は、立場を完全に覆すことをためらわない。

昨日ジュンブラート氏は、「3月14日」勢力に身を置いたことは「必然」のなせる技であったが、もはや継続は不可能、「レバノンにおいては再編成が再考されるべき」と述べて、サアド・ハリーリ氏率いる3月14日勢力の同盟者たちを驚かせた。

抵抗勢力を支持していた極左的立場から、その抵抗勢力に反対する右翼的陣営へと移動し、武装解除を迫るまでにジュンブラート氏を転向させた必然性とは何であったのか、我々には分からない。しかし、彼がアラブ、レバノン双方のレベルで読みを誤ったことは分かる。彼の読みは短絡的で分析があまかった。

ジュンブラート氏は、シリア体制が不可避的につぶれるとみなしていた。これは、ラフィーク・ハリーリ氏暗殺の後、ワシントンを訪問した際に得られた情報に基づいての推測であった。そこで、アメリカの同盟者、特に地域的一大勢力であるサウジ、米同盟の要であるエジプトにならうことを決定した。

ところが、シリア体制は嵐の前に揺らいだが、つぶれなかった。米政権がシリアを屈服させるために課した国際的、アラブ的孤立を破り、それを変更させた。フランス、アメリカの外交官らはこぞってダマスカスを訪れ、協力や協調を求めるようになった。ジュンブラートの目論見は全く外れた。

シリア体制失墜に賭けたのはジュンブラート氏のみではなかった。二大アラブ国、サウジとエジプトも彼の仲間であった。両国政府報道官は、シリア没落が確定したかのように、あるいは時間の問題であるという風な口調であった。

シリア、並びにレバノンにおけるシリアの同盟者たちに向けた、かつての自信過剰気味の発言の数々を思い出せとは言わない。しかし、大国、そして合衆国自体もまた、己の利益のために政策を変更するのであり、そのためには現地の事情など全く顧みないものだということをジュンブラート氏は思い出してもいいかもしれない。

そしてシリアもまた利己的に振る舞い、尾羽打ち枯らして自陣に戻って来たドルーズの首領を好意的に迎えるだろう。現代国家は個人的怨恨で政策を決するものではなく、常に前を、将来を見ている。つまり、小さき事どもの前にわざわざ立ち止まったりはしないのだ。

ジュンブラート氏は、かつて反体制陣営から突如その反対側へと転向した時、元々いた側にそれ程ダメージを与えたわけではなかった。しかし今回、組閣の微妙な時期に際し、3月14日勢力に背を向けたことは、同勢力にかなりの打撃を与えたはずだ。

ジュンブラート氏と見解を異にすることは数え切れないほどあろう。しかし今回、「レバノンにおける再編成を考える必要性」という点には同意できる。レバノンを守るのに米イスラエルに頼るという線は、実際問題として失敗している。それはつまり、隣国、特にシリアに敵対的政策をとるという事になるからだ。合衆国は、国際的決定によりシリア軍をレバノンから撤退させることはできても、レバノンに安定と安全を与えることはできない。イラクにしたように、シリア占領のために艦隊を派遣でもしない限りは。そしてイラクでの出費を思えばそれは二度と考えられないことだろう。

合衆国前政権の責任者らと会見したことは、進歩社会党にとり汚点であったとジュンブラート氏は認めた。ネオコンとの連携に走ったことは全く非合理であり、進歩社会党は、原点へ、アラブ的左翼主義、労働者、農民たちのための原則へと立ち戻ると述べたのだ。さて、アメリカと、そのアラブの同盟者らにスポイルされたその他の面々、サアド・ハリーり氏を筆頭にした彼らが「良心に目覚める」時は来るだろうか。

ジュンブラートの悔悛は遅かったとしても、彼は上手く、根本的に、帳尻を合わせて見せた。誤った同盟の道を歩み続けているその他大勢よりはましだ。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17105 )