コラム:ナイル水資源問題とイスラエル
2009年08月11日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ アフリカに侵入するイスラエル
■ クドゥスの見方

2009年08月11日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

アフリカは、アラブの最奥もしくは後衛戦線を形成する故に、過去60年の間イスラエルの戦略的関心を集めていた。しかし、故ガマール・アブドゥン・ナーセルに代表されるアラブ民族主義政権は、イスラエルの侵入をことごとく防いできた。アフリカ解放運動を支援するとの合意がアラブ側にあり、アフリカの指導者たちには偏った姿勢がなく、アラブ指導層と強い友好関係にあった。

ナーセル時代のエジプト政策は、エジプト主義、アラブ主義、アフリカ主義を三本柱としており、その政権の初期には、経済、技術支援を行い、教員、大学教諭、宗教指導者等を派遣し、エジプトの大学、特にアズハルに、数千のアフリカ人学生を受け入れていた。

現在、情勢はアラブ・ムスリムの利益とはならない方向へ急激に変わろうとしている。イスラエル政府が、幾つかの国々との治安、技術協定、あるいは経済通商関係を通じてアフリカ大陸へ徐々に、しかし確実に侵入を始めている。

昨日テルアビブで、リーバーマン外相がアフリカ大陸訪問の意向を発表した。イスラエル対外諜報機関(モサド)がアフリカに強力な治安基盤を築くという報告の合間に、外相は、経済関係強化のため、ナイジェリア、エチオピア、アンゴラ、ケニア、ウガンダ等の諸国を歴訪すると述べたのだ。リーバーンマンが訪問国として選んだケニア、エチオピア、ウガンダはナイル川の源泉を有する。これらの国々を主要訪問国とするという、その選択にイスラエルの関心の深さが表れている。

ナイル河川の水の大部分はエチオピアとウガンダからきており、下流のエジプトが最もその恩恵を受けている(840億立方メートル中の540億立方メートル)。また通過点のスーダンが180億立方メートルを得ている。

1959年の協定により、エジプト、スーダンにこれほどのナイルの水が与えられることになったが、その協定を見直し、両国の取り分を減らして渇きに苦しむアフリカ諸国へ回そうという声が、アラブ国ではないナイル流域諸国から上がっている。リーバーマンのアフリカ訪問は、この動きにタイミングを合わせている。

この協定改正については、水流を調整するダム建設に際し技術援助を約束するという形で、イスラエルがアフリカ諸国、特にエチオピアを煽っているとの疑惑がある。

アラブ政権の怠慢による政治、経済、治安的空白を利用して、アフリカ大陸におけるアラブのプレゼンスを排除しようというイスラエルのプランの規模が、リーバーマン歴訪により明らかになる。

エジプト政府が、忍び寄るイスラエルの脅威に警戒することが望まれる。アラブのためというよりは、まずエジプト自身の利益を保持するために。ナイルの水のエジプトへの割り当て変更は、エジプト国民にとっての惨事を意味する。エジプトとその国民の生死を決するナイルの水問題は、ひいてはアラブ諸国全体にも影響し、苛烈な争いの原因になりかねない。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17161 )