コラム:ハマースによるイスラーム主義グループ掃討作戦
2009年08月17日付 al-Hayat 紙

■ 「ハマース」、イスラーム首長国と今後の展望

2009年08月17日付アル・ハヤート紙(イギリス)HPコラム面

【ガッサーン・シャルベル】

ハマースは、アブドッラティーフ・ムーサー(アブーヌール・アル=マクディシー)がラファハで行ったイスラーム首長国宣言をその指導者もろとも打ち消した。ムーサーは、もしハマースがこのままならば、「エルドアン・トルコ首相のようにイスラームとうわべだけで連携する」世俗主義者の政党であると糾弾した。ハマースが見過ごせない嫌疑である。「サラフィー・ジハード主義の指導者」がモスク内からハマースのやり方に挑戦する。武装した彼の配下は街頭に出てハマースの支配と権威を脅かす。モスクも街頭も共に、ガザのハマース勢力の屋台骨であるからには、これは深刻な事態だ。

ハマースを攻撃するのにエルドアンの名が用いられたところで、アンカラを訪問する者が聞かされる事が思い出される。それは、「活性化している勢力」、あるいは「新たな勢力」を中東での和平と安定の探究に参与させる必要があるという見解で、この勢力と対話の端緒を開き、彼らの声を聴き、対話を通じて相手を成熟させるべきだという話である。つまり、現実的な政策路線を促し、これらの勢力が域内で、そして国際的にも受け入れられるように努めよという事になる。この見解を有する人々は、社会的支持を得ているこれらのイスラム主義勢力を孤立させることは、彼らをより過激な方向へ押しやることになるとみなしている。一部は「アル=カーイダ」のように破壊的な過激派となるだろう。そして、ハマースもそのような勢力の一つであることは明白である。

ガザを支配したハマースは、アルカーイダに従うグループの存在を否定した。ハマースの存在が、カーイダによるパレスチナ戦列への侵入を阻止している。ハマースこそがビンラーデンやザワーヒリーのパレスチナに対する野望をせき止めている。これがハマース幹部の見方である。

ハマース警察は、死者数十、負傷者百余名を出した作戦によりグループ、「ジュンド・アンサール・アッラー(アッラーの信奉者軍)」を壊滅させた。ハマースによれば、彼らはハマースとパレスチナ民族の弱体化を目論見、占領に抗せずガザ防衛に参加しなかった。これは「背信的」行為である。

ハマースとしては、ガザ支配が侵食され、モスクの説教壇上から糾弾されるような事態を看過できない。ファタハの方は総会を成功させ、マフムード・アッバースが改めてヤーセル・アラファトの衣鉢を継ぐ正統性を認められた時期に、そのような事が起きていた。これがハマースの立場を微妙なものにした。

幅広い支持、先の選挙での勝利、ガザ戦争での貢献にもかかわらず、最近の情勢はハマースの困難な状況を浮き彫りにしている。イスラエルの攻撃を停止させた国連安保理決議1860号は、ハマースにとり足かせとなっている。ガザ戦争と7月戦争では舞台も状況も異なるが、決議1701号がヒズブッラーにかせをはめたのに似ている。ハマースはガザでよく持ちこたえたが、結果として敵に対する戦線を機能させる能力を失う事となった。戦線を動かすことは次の戦争につながるからだ。ヒズブッラーもまた、軍事的勝利はおさめたが、更に大きな戦争というリスクなしでは戦線を動かせない事態に陥っている。

同盟勢力が片手の指に満たないことに気付いたハマースは、孤立を打破する対価が高騰していることにも気付いた。復興再建にもパレスチナ対話にも、高価な代償が必要である。敵と例外的に交戦しようものならとてつもなく高くつく。アラブ・イスラーム世界との関係は考えていたほど深くはなかった。ハマースは、受け入れられるべく変わらなければならない。

イスラエル捕虜兵ギリヤード・シャリットだけでは、ハニーヤ政府が持ちこたえる助けにはならない。ハマースはガザでどうするつもりなのか。抵抗するのか交渉するのか。いずれにしても、どの程度の代償を支払う用意があるのか。また、しばらく待ちの態勢を続けるという選択肢もある。しかし、イスラーム首長国をつぶした一連の事件は、アッバースの元へ戻るという選択肢がより安価らしいと示唆するものである。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17211 )