政治番組退潮後のレバノン・テレビ界を重量級のお笑いが席巻
2009年11月03日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 政治番組退潮後のレバノン・テレビ界を重量級のお笑いが席巻

2009年11月03日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ベイルート:本紙サアド・イリヤース】

 レバノンのテレビやラジオに溢れる政治番組を視聴することは、長年、ことにシリア軍の撤退後に顕著な現象だった。レバノン人は祖国の将来や、祖国がいかにして主権と自由な決定権を取り戻せるかについて、国民を代表して勇敢に問いを投げかける人たちを見ることを切望していたのだ。しかし最近になって、こうした現象は退潮し始めた。レバノン人は政治にも政治家にも、問題だらけの状況にも、飽き飽きしてしまったかのようだ。政治家が同じ見解を繰り返し、堂々巡りをしているのに、飽き始めたのだろうか。

 こんなことはレバノンではめったにない。レバノン人は政治好き、政治談議好きで知られており、「政治を語らないレバノン人なんているもんかい」という、俗語のことわざがある位なのだ。

 政治番組の視聴がどれほど退潮しているかについての正確な調査は今後にゆだねるとして、MTVが木曜の夜に放映しているバラエティー番組「ハディース・アル=バラド(国の話題)」を例にとろう。美人キャスター、モナー・ブーハムザが司会を務めるこの番組は、マルセル・ガーニム司会でLBCが放映している「カラーム・アン=ナース(世評)」よりも視聴者をひきつけている。ガーニムの番組はつい最近まで一番成功した、人気の番組だったというのに。

 「ハディース・アル=バラド」は、レバノンを賑わす最新の事件を取り上げ、気の利いたコメントで知られる有名タレントを同席させて、番組の冒頭で大臣か議員を30分間ゲストに迎える。司会の女性がゲストの政治家にプライベートや趣味、いくつかの見解などを質問する間、タレントが笑いを誘うコメントを差し挟んだり、ディレクターがその場に合った音楽を流したりする。ゲストの政治家が立ち去った後は、有名なジャーナリストやタレント、俳優が番組に登場し、最新の仕事について話をする。

 「カラーム・アン=ナース」同様、Al-Jadid TVでジャーナリストのジョルジ・サリービーが司会を務める政治番組「アル=ウスブーウ・フィー・サーア(今週の出来事を1時間で)」も、OTVの「ロール」の挑戦を受け始めた。この番組はお笑い、特に後半は下ネタのお笑い番組である。(中略)

 こうしたお笑い番組は、数年前からレバノンのテレビ界に広がり始めた風刺番組の系列に入る。そうした番組は一部の政治家の立場に皮肉を込めてコメントすることを目指している。たとえばムスタクバルTVの「ラー・ユマッル(退屈なし)」は3月8日勢力の批判に重点を置いており、LBCの「バス・マート・ワタン(「祖国の微笑み」と「祖国は死んだ」の掛けことば)」やAl-Jadid TVの「エルベト・テンハル」は大抵、3月14日勢力を批判している。LBCの「8と14」は多数派勢力と反対派勢力の双方を対比してコメントし、OTVの「オブリーラ」は多数派勢力、特に首相に指名されているサアド・アル=ハリーリーと、レバノン軍団党のサミール・ジャアジャア執行委員長を批判の対象にしている。

 こうした番組が広がるにつれて、笑いに飢えているレバノン人は、「泣き笑い」するほかない危機が絶えない国の中で、タダで笑って悩みを晴らすことができるのだ。

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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:17796 )