コラム:パレスチナ大統領の次期選挙不参加表明について
2009年11月09日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ アッバースは生涯大統領か
■ クドゥスの見方

2009年11月09日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

パレスチナ側が交渉のテーブルへ戻る条件としている入植凍結をイスラエルは拒否しており、イスラエル政府の立場を米政権は擁護している。その偏向した態度への抗議として、先週アッバース大統領は次期大統領選へは出馬しない旨表明したが、そこにはあらゆるカードが混ざっていた。アッバース大統領は、その他のポスト、ファタハの中央委員会、PLO執行委員会の長、そしてパレスチナ国家の大統領職から退くと言ったわけではない。この宣言がどの程度真剣なものであるのかについて、多くが疑問を呈している。

オバマ政権がイスラエル側に示す「偏向」が、パレスチナ大統領にとってはルール違反に等しいものであることは疑いようがない。この件について米側の立場が確固たるものであるが故に、アッバース大統領は、西岸とエルサレムのあらゆる地区での入植が完全に停止されるまでは交渉のテーブルに着かないとの立場を明確にできたのだ。

しかし次期選挙に出馬しないとのアッバース大統領の立場は、二つの出来事を背景として急速にその重要性を失いつつある。ひとつは、ヘブロンとラーマッラーの両都市で、事前に用意されたけたたましいデモが起きた事である。近いうちに他の都市でも繰り返されるだろう。デモは、宣言を撤回し大統領として留任するようアッバース氏に求めている。ふたつめとして、側近たちによれば、PLOや国民委員会のようなパレスチナ政治組織の幹部らがアッバース氏の決定を拒み、受け入れられない、非合法であるとしている。

アッバース氏顧問らは、デモを組織することにより、あるいはデモに反対しない事により、同氏の決定に水を差した。まるで、大統領選不出馬という決定が、逆にアッバース氏に票を集めるための「演習」であったかのようだ。

(中略)

アッバース大統領は、もし固持すればパレスチナ問題に多大に貢献したであろう良い措置を取った。しかし彼は、ラーマッラー大統領府の取り巻きたちに屈した。彼らは自分の利益を守るため、大統領にこの決定を撤回させたのだ。これらの人々は、もしアッバース氏が本当に全ての職から退くと決意すれば、なにもかも失うだろう。

ヘブロンとラーマッラーでは、アッバース氏に生涯大統領であってくれとのプラカードが見られるが、そこでの出来事を通じ、彼がサラーム・ファイヤード首相に倣おうとしていることが分かる。アッバース氏は、彼が出馬しない選挙とは、どの選挙でいつ行われるのかという事を明らかにしていない。規定に則り次の1月に行われるものか、それともエジプト仲介による和解案通り6月に行われるものなのか。あるいはそれは、無期限に延期されるものなのかもしれない。そうすれば彼は、ヘブロンとラーマッラー他での支持に応えいつまでも大統領でいられる。
もしアッバース氏が、抵抗、武装闘争、反占領インティファーダへと回帰するというなら、大統領として留任するのを妨げるものはない。しかし、入植が継続される中、交渉のテーブルに戻り失敗と敗北のリスクを冒し続けるというのは、断固として拒否されるべきことである。それによって自己矛盾をさらけ出すことになり、真剣さを欠いていると判断されるだろう。(アッバース氏の)この最新の動きは、あたかもパレスチナの人々が無知な愚か者であり自分はそうではないとでもいうような、露骨な茶番であった。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:17838 )