コラム:イスラエル戦犯と英国司法制度見直し
2010年01月18日付 al-Quds al-Arabi紙

■ イスラエルと「小」英国

2010年01月18日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【アブドゥルバーリー・アトワーン:本紙編集長】

英国政府は目下、新法案の起案に懸命である。同国を訪れる外国要人に戦争犯罪容疑がかかっている場合について、逮捕状を出す権限を司法機関からはく奪するという法改変に関わるものだ。虚偽の立証に基づきイラク戦争に賛同した労働党のブラウン政府は、来る5月の総選挙開始前の決着を目指し、今週中にもこの法改正を議会に提案するだろう。

元外相ジャック・ストローが率いる英国法務省は、逮捕状発出権限を英国の裁判所や判事から検察官へ移そうとしている。英国を訪れる外国要人が逮捕され戦犯として法廷へ出されるのを防ぐためだという。

英国を訪れる外国要人で戦犯容疑者といえば、イスラエル人しかいない。したがってこの法改正は、イスラエルに迎合し、ネタニヤフ政府と在英ユダヤロビーのキャンペーンに屈服するためのものである。高潔なる英国弁護士らの一団が、英国裁判所に対し、昨年初めのガザ攻撃において戦争犯罪をおかした容疑でリブニ元イスラエル外相の逮捕を求めた。それ以来英国政府は苛烈なキャンペーンにさらされてきた。

イスラエルのキャンペーンは、ナチス懲罰のためにしかれた英国法の変更を求め、その結果を得ることに成功した。その法とは、ジュネーブ諸条約と人権法に基づき、いまなおナチ時代の戦犯への報復を欲するホロコースト犠牲者のユダヤ人らの圧力により成立したものであった。

70名以上の議員により、この改正を厳しく批判する署名が議会に提出された。本法案は司法と欧米民主主義の価値を貶めるものとして、上院議員、俳優、作家、弁護士等の数十名も彼らに加わり、その議会承認を阻止しようとしている。議員、弁護士、人権活動家らの署名文書は次のように述べている。

「イスラエル人であるなしに関わらず、英国裁判所による戦犯容疑者の裁判を将来的に阻止するような法改正を、ルイス外務担当国務大臣、そしてミルバンド外相自らが提案したということに我々は衝撃をうけた。英国司法の独立を侵害するいかなる試みも我々は拒否する。戦争犯罪容疑者について立件に足る証拠を有する判事は誰でも、容疑者の拘束を求める権限を持つべきである。」

著名な英国人弁護士ジョン・ハーディーは、裁判官から戦争犯罪者を裁く権利をはく奪するということは、市民の法的権利を無効にすることと同じと断じた。政治決定が市民の基本的権利にあからさまに危険な形で介入したのである。イスラエルとその戦争犯罪者はあらゆる法に優先し、英国民の権利、ならびに世界の理想とされた誇るべき司法権の独立よりは、イスラエル人を保護する方が重要だというのだろうか。

先週、ある英国人検察官はエルサレム大学での講演で、「我々の政府はイスラエル高官の逮捕を避けるため、司法システムの変更を可能にする方途を大至急検討しているので、彼らの英国訪問は常に可能でありいかなる障害もない」と明白に述べた。

これがアラブ人の戦争犯罪者なら、あるいは第三世界の国々、特に米英の同盟国ではない国の人間であったなら、この法律は修正されるどころか即座に適用されることだろう。しかし、イスラエルの戦争犯罪者は、英国、そして全欧米諸国への侵害を果たそうとしている。ガザやレバノンで見境なく子どもたちを殺戮し、ゴールドストーン報告書にあるとおり市民を人間の盾として用いた彼らは、裁判所に出頭しなくてよいことに安どしている。

イスラエルの醜悪なゆさぶり、英国の恥ずべき屈服と警察による追従、これらはおそらく英国を第三世界のひとつに変え、その文明的に優れた部分を失わせるだろう。この法改正は外国の圧力の結果であり、充分な検討や試行錯誤とは無縁、国民や国家自身の利益とも無関係である。これは、司法の独立も三権分離も知らず、民主主義の伝統もない国で起きる事態だ。

戦争犯罪法廷に関する法律は元々英国の法ではない。第二次大戦後の「自由世界」が構築し、諸国が適用する世界法である。したがって英国のみがそれを変更するというわけにはいかない。この変更は、ジュネーブ諸条約、国際人権法に反している。

世界はナチの犠牲者を支援し、戦争犯罪者を法の前に引き出し報復する措置をとった。ホロコーストという彼らの罪を二度と繰り返させないために。犠牲者がアラブ人でムスリムだからというだけで、何故この世界はイスラエル人戦争犯罪者の側に立つのか?モラルの失墜を示す醜い偏向である。

イスラエル戦犯を保護するため、今週の法改正を企画する英国は、パレスチナ人の血は彼らの前で無償であると示し、イスラエルに虐殺を続けるグリーンライトを出したという点において、法的、倫理的責任を負う。この措置により英国は、決定的にパレスチナ民族を攻撃し、恥ずべき差別をもって、彼らを死刑執行人の元へ放逐することになる。パレスチナ民族にたいする犯罪を許したのみならず、土地を奪ったものの側に法的政治的庇護を与えることにより英国政府は、ナクバ以来60年を経てもなお続くあらゆる悲劇の責任者となる。

イスラエル戦犯を見逃すことになるこの法改正に反対する全ての高潔な英国人、議員、政治家、アーティスト、人権活動家らに、我々も声を合わせよう。至急改正の必要があるとすれば、それは司法の独立を守る基本線を強化するために行われるべきであろう。

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(翻訳者:十倉桐子)
(記事ID:18286)