コラム:エルバラダイ元IAEA事務局長のエジプト帰還
2010年02月22日付 al-Quds al-Arabi 紙

■エル=バラダイと時限式ではないその爆弾
■クドゥスの見方

2010年02月22日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPコラム面

このところのエジプトは、先例なき政治的産みの苦しみの最中にある。その結果は二つに一つとなるだろう。あらゆる分野での蜂起へとつながる抜本的民主改革か、あるいは、治安回復、維持を口実に鉄の拳で国を支配する専制主義かのどちらかである。

現状維持は非常に困難、不可能であるというのは確かだ。腐敗の奈落へ沈んだ部分と表面へ浮上した部分、どちらも共にその状態のまま膠着していることが明らかになった。

元IAEA事務局長でノーベル平和賞受賞者のムハンマド・エル=バラーダイー博士に対する華々しい歓迎は、政治情勢に新たな段階を記すものである。そのタイミングにおいても、あるいは、彼のような人物がエジプト政治に参入するというその意味においても、この出来事は重要だ。

エルバラダイ博士は国際政策に豊富な経験を持ち、世界の指導者と渡り合ったエジプト・リベラル派である。世界の治安、安定に関わる難問を処理してきた。各地域の利害が錯綜し、主要権力中枢の間で熾烈な競争が行われる中でである。エジプトの広い層の人々が彼に期待をかけ、落ち込んでゆく国の現状を救ってくれると思うのも無理はない。

現政権は、エルバラダイ博士のイメージを損なう目的で数々の批判を行い、彼の能力を過小評価しているが、その一部は事実といえる。例えば、エルバラダイ博士はその人生の大半を国外で過ごしてきた。しかし、だからといって、彼がエジプトの懸案事項、その行く手を阻む諸問題を理解しないということはない。

現在のエジプトの膠着状態は、その呪いを破る天才を必要としているわけではない。根本的問題は、権力の腐敗、そこに寄生する層がその要を抑えているということ、並びに貧富の差が恐ろしいほどに広がっているということである。サービス部門は衰退し、警察と治安機関が人々の抑圧に走っている。それらの人々が変化を求めている生活層なのだが。

エジプトにおける支配体制は年老い腐敗し、これらの根本的問題に対処する能力をもはや有さない。エルバラダイ博士同様、エジプト現体制もエジプト国民のことを知らない。なぜならそれは、自身の国にのみ対処してきたからだ。自国をあたかも好き放題に搾取し得る土地のように扱って、清算の必要はなく、従って罰せられることもないというので安穏としている。

エルバラダイがエジプトを治めることが問題なのではない。現在様々な形で国を引き裂いている諸問題からエジプトを救出するためには、政治体制改革が必須であるという事実こそが問題なのである。

一部かもしれないが、エジプトの人々はエルバラダイの周りに集まっている。彼は勇気があり、理性をもって、世界を舞台にした経験から卓越した視点で状況を見ている。同時に、その優れた能力、手腕により祖国と同胞のために奉仕する用意があるからだ。

現政権が彼にいら立つのは、能力の点で彼とその他の競争者との間に開きがありすぎるからだ。競争者の中には、遺産継承を貪欲に狙い、エジプトを腐敗した違憲王制へ変えようとする現体制の親族がいる。

その将来の役割や彼がもたらすであろう結果については言うまでもないが、エルバラダイ博士は、既に腐敗した沼に巨大な一石を投じたのである。あらゆる場面で彼は勇気ある勤勉な人々の手本となるだろう。

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:18525 )