論説:第3次インティファーダの可能性
2009年11月01日付 Al-Nahar 紙

■ ラーマッラー現地情勢分析:第3次インティファーダは大いにあり得る選択肢

2009年11月01日付アル=ナハール紙(レバノン)HPアラブ国際面

【ラーマッラー:ムハンマド・ハウワーシュ】

 パレスチナ人とイスラエル人の摩擦が、現状を白紙に戻してゲームのルールを根本から変えてしまうような衝突に至るのではないかという予測や願望が、このところ頻繁に取り沙汰されている。

 パレスチナ人たちはエルサレムやその周辺、もしくはヨルダン川西岸地区においてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が引き起こす出来事の影響で一斉蜂起(インティファーダ)に駆り立てられることになるかも知れない。これは最近、パレスチナのマフムード・アッバース大統領が顧問団との談話で言及していることであり、イスラエルの『マアリヴ』紙に対する金曜日の談話の中では「(今の)ネタニヤフは1996年のネタニヤフとまるで同じだ」と述べている(当時のネタニヤフ首相の政策はトンネル・インティファーダ勃発の原因となり、イスラエル軍とパレスチナ治安機関の衝突でパレスチナ人63人とイスラエル人36人が死亡、パレスチナ人数百人が負傷した。これはイスラエル軍がネタニヤフ氏に対して、エルサレムの聖域の広場の下にトンネルを掘った場合に生じる結果について提言と警告を行っていたにも拘わらず引き起こされた事件であった)。

 穏健派であるパレスチナ解放機構(PLO)のサーイブ・ウライカート交渉局長でさえも率直に「第3次インティファーダ」の勃発の危険性に言及し、「交渉は奇跡なくして再開することはあり得ない」と述べている。

 今日エルサレムでは、パレスチナ人家屋の破壊活動やパレスチナ人所有の土地や古い建物の接収、オスロ合意に違反していないパレスチナ人諸団体の閉鎖といった措置が相次いでおり、1994年2月25日にバルーフ・ゴールドスタインによる虐殺事件で29人のパレスチナ人が殺害され150人以上が負傷した後にヘブロンのアブラハムの聖域(マクペラの洞窟)が分割されたのと同様にエルサレムの聖域においても新たな既成事実が課されようとしているが、それらの全ては、イスラエル右派政権の政策やプログラムから隔離されたユダヤ人諸組織によって行われているわけではない。また、入植活動の加速やヨルダン川西岸地区でのパレスチナ人農民や(入植者専用の道路と化している)同地区の道路を移動する人々に対する入植者の攻撃の増加といった事態も、イスラエル政府の主要な政策と切り離して考えることはできない。西岸地区におけるイスラエルの占領政策は国防省が軍や総保安局「シャバク」や民政当局を通じて推進、管轄しており、全てを西岸地区のイスラエル軍駐屯地の将官や各機関の事務所が統括している。

 しかし、このイスラエルによるパレスチナ人に対する挑発行為をいつまでも統制することは不可能であり、イスラエル政府の政策によって支援された右派の暴力行為が統御不能になるのも時間の問題である。イスラエルの右派政権は、占領の長期化を含めた全ての事柄についてパレスチナ側に責任があると非難し、パレスチナ大統領を交渉拒否に追いやろうと画策している。ネタニヤフ首相はアッバース氏に対するアメリカのさらなる圧力によって、入植活動の停止やパレスチナ人およびエルサレムの聖域に対する侵犯行為の停止などの義務をイスラエルが遵守することなしに交渉の道が開かれるかも知れないと考えている。

 このイスラエルの政策は、パレスチナ側が堅持する原則(占領の終結とイスラエルと共存する独立国家樹立のために交渉を行うということ)を変えさせることに成功しなかったし、これからも成功しないであろう。イスラエルがさらにこうした政策を続行すれば、パレスチナ人の姿勢は弱体化するどころか、強化されることになるであろう。パレスチナ人に対してこれまでに成し得なかった事柄をイスラエルが押し付ければ、イスラエルとの対決姿勢が統一されることになるだろう。また、イスラエルのパレスチナ人に対するこのような政策がさらに続けられた場合、これを際限なく忍耐することは不可能であり、パレスチナ人の個人的、集団的な反応を抑えることは不可能である。頓挫した交渉や政治的な展望のない交渉に対して反応を繰り返す単調な状況を一変させる第3次インティファーダの火花となり得る出来事が、あちこちで起こり始めるかも知れない。ネタニヤフ首相のイスラエルは今日、大きな2つのジレンマから抜け出すことを必要としている。その1つは、ガザ戦争に関する国連調査委員会のリチャード・ゴールドストーン委員長の報告書が国連人権理事会で採択され、欧州各国の首都におけるイスラエル軍将校の行動が規制される中、国際社会におけるイスラエルの「無法国家」としてのイメージを変えることであり、2つ目はアメリカが外交政策、特にアラブ世界およびイスラーム世界に対する政策の方向性を変える必要性に鑑みて、バラク・オバマ大統領がとっている2国家共存案への支持姿勢にネタニヤフ首相が接近すること、もしくは少なくとも、イスラエルが公然とこの政策に反対したり、これを失敗させようと企てたりすることをやめるということである。

 パレスチナ大統領は、政治プロセスの負の流れを変えるために残された時間は僅かであると見ている。交渉が頓挫しているのは、パレスチナ側に国際的な取り決めや、中東和平カルテットとオバマ政権の計画に基づく交渉再開の意思がないためではなく、今日の国際的な流れに逆らい、エフード・オルメルト前政権期のように真の和平交渉を進める意思が表明された流れに逆らうイスラエル政府が存在しているためである。オルメルト前政権期には両者は最終合意にかなり近づき、もう幾分の時間と勇気を必要とするばかりの段階に達していたのである。

 アッバース大統領は3ヶ月後にイスラーム抵抗運動ハマースの参加、不参加に拘わらず総選挙を実施する方針だが、交渉再開の可能性の前に日々障碍を設けるイスラエル政府に対して必要以上に外交的になることはできない。おそらくそれゆえにアッバース大統領は、アメリカ政府特使の中東訪問を前にネタニヤフ首相に対して、代替案を示しながら地域の不安定を助長するような行動をとるのではなく、占領を終結させるための真剣な交渉を開始するための期限を提示する可能性に言及したのであろう。ネタニヤフ首相は時には「暫定的合意」、時には「経済和平」に言及しつつ、その一方で政府はエルサレムとヨルダン川西岸地区の支持者らにパレスチナ人を挑発させるよう後押ししている。

 パレスチナ人たちも治安上や経済的、社会的に各都市の状況がほぼ正常化する中で、イスラエルの挑発が第3次インティファーダに行き着く可能性を、それがイスラエルの罠だと認識しつつも否定していない。そのために、政治的なメッセージを打ち出す短期間の平和的な蜂起を主張する向きもある。ただパレスチナ人の間では、平和的な蜂起はあまり人気がない。その証拠に、ラーマッラー西のビルイーン村とナアリーン村やベツレヘム近郊のマアスィラとハダルにおける分離壁と入植活動に反対する民衆の活動は、続いてはいるもの盛り上がりに欠けている。イスラエルやパレスチナ内部における諸問題を解決するための交渉という方法に対するパレスチナ人の絶望は、第3次インティファーダへの道を開くかも知れない。

Tweet
シェア


原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:鈴木啓之 )
( 記事ID:18629 )