イスラエル、エルサレムのパレスチナ人財産の没収再開を発表
2010年07月20日付 al-Hayat 紙


■イスラエル、占領エルサレムに「不在者財産法」の適用を発表

2010年07月20日付『アル=ハヤート』紙(イギリス)HPアラブ国際面

【ラーマッラー:ムハンマド・ユーニス】

 イスラエル当局は、エルサレム市での財産没収の一時停止措置から二年も経たない内に、占領エルサレムにあるパレスチナ人の不動産没収を再開した。これはイスラエルの「ハアレツ」紙が昨日報じたもので、イスラエル政府のイェフダ・ワインシュタイン司法長官が署名した再開決議を受けて没収が再開された。ワインシュタイン司法長官はイスラエルの最高裁判所に、「不在者財産法」適用を支持すると通達した。「不在者財産法」とは1948年 [イスラエル建国による第一次中東戦争時]に、その居住地から立ち退いたり避難させられたりした数十万人のパレスチナ人の財産及び占領エルサレムにある「不在者財産」の管轄権をイスラエル当局に認める法律である。

 エルサレムについては「不在者財産法」の適用から除外するとしてきた歴代司法長官らの立場とは相反するワインシュタイン司法長官の決定によって、数億ドル相当と見積もられるパレスチナ人の土地や所有物が没収の危機にさらされている。

 イスラエルは建国から2年後の1950年、「不在者」の財産に「法的」管轄権を及ぼすことを目的としてこの法律を制定した。「不在者」とはすなわち、占領に伴ってパレスチナを離れもしくは避難させられ、イスラエル法にいう「敵対国」へ流出したパレスチナ人のことである。イスラエルは、1967年[第三次中東戦争時]に占領した残りのパレスチナ領にも同法を適用した。

 エルサレム・アラブ研究協会の地図作成責任者ハリール・トゥーフクジー氏が本紙に語ったところによれば、この法律に従ってイスラエルは、東エルサレムの土地や不動産の8%、さらに西岸地区の4万ドゥーナム[=約3600万平方メートル]の土地に管轄権を及ぼしている。

 イスラエルは、多方面からの圧力により約2年前、没収決議の執行を凍結した。だがトゥーフクジー氏によれば、決議の執行が再開されることで、エルサレム市面積のわずか13%にすぎないパレスチナ人所有の残りの土地や不動産が危険にさらされる。

 また同氏は、この決議の陰でイスラエルが、「エルサレム市外に生活拠点を移動した」との口実でIDをはく奪されたパレスチナ市民の不動産を狙っていると述べた。統計によればイスラエルは1967年の占領以来、1万4千人の[アラブ・]エルサレム住民からIDをはく奪している。トゥーフクジー氏は次のように警告する。「エルサレムでは世帯の誰かがIDを取られるとイスラエルがその家の共同所有者になってしまう。彼らは我々を追い詰め、残されたわずかの土地まで取り上げようとする。」

 67年以降、不在者財産法に則りイスラエルが差し押さえた中には、占領前エルサレムに在住したサウディアラビア、クウェイト、ヨルダン国籍のアラブ人家屋も含まれるが、トゥーフクジー氏によれば、その中にウサーマ・ビン・ラーディンの父親の家があった。「建設業者だったビン・ラーディンの父親は、67年以前アクサー・モスク一帯の改修事業のためエルサレム市内シュファアト地区の二階屋に住んでいた」と同氏は語る。占領以前ラーマッラーに住んでいたクウェイト人たちの家屋については、オスロ合意の後、PAが管轄権を取り戻した。

 不在者財産法のエルサレムでの適用再開は、パレスチナ人4名から出された財産復権の請願についてイスラエル最高裁が司法長官の見解を求めた際に明らかになった。この4名は14年前ハルホマ入植地が建設されたジャバル・アブー・グネイムで押収された彼らの財産の復権を要求していた。

 不在者財産法を通じてイスラエルは、住民を強制移住させ破壊した500以上のアラブの村の土地を没収し、そこに何百もの入植地を建設してきた。また同法によって、ハイファ、ヤーファ、ラムラ、ロッド他パレスチナの各都市で財産と土地の没収を行っている。

 1967年占領と同時に占領地を西エルサレムへ併合する法律が制定されたが、時のイスラエル司法長官は、「不在者財産法」をエルサレムには適用しないとし、後任も同じ路線を踏襲した。実のところイスラエルは、「放棄財産」、「治安上の必要性」などの口実でエルサレムの広範な土地を没収してきたので、司法長官の立場は形だけのものではあったのだが。


 また、昨日明らかになったところによれば、イスラエル政府は、イスラエルの治安・市民法の管轄下にある地区で許可なく居住しているパレスチナ人家屋の取り壊しを決定した。

 昨日の「ハアレツ」紙によれば、この決議は西岸の入植地近くにある6地区を標的としている。自治体職員ならびにイスラエル軍の言葉として同紙が伝えるところによれば、彼らは、これら地区で住居を取り壊すようにとの明白な指示を行政レベルから受理している。同紙によれば、この決議適用によりヘブロンで2世帯が取り壊された後、アゴワールの数地区でもパレスチナ人家屋の破壊通告が度々出されている。また、入植地に近いビーラ市でもイスラエル軍が取り壊しを進めている。

 「西岸地区、とりわけ戦略的に重要な場所では、多数の家屋が取り壊されるだろう。」イスラエル検察事務局代表はそう発表した。

 イスラエル軍は昨日、トゥバス県アゴワール地区北方のアル=ファーリスィーヤ地区でパレスチナ人数世帯が身をよせていたバラックを何軒も取り壊した。イスラエル軍はブルドーザーを使って、トタンと粗布で出来た住居を取り壊していった。同地区には数十軒の農家や畜産農家が生活している。

 同地区のある住民は占領軍が数週間前に住居から立ち退くよう警告していたと話した。他方占領軍は約2週間前に、同地区に隣接するラッス・アフマル地区で施設や住居20軒を取り壊してしている。

 イスラエル当局は昨日、北アゴワールのバルダラー村に住む数十世帯に向けて、無許可での居住を理由に住居の取り壊しを警告した。バルダラー村入植阻止委員会ファトヒー・ハディーラート氏によれば、先月占領軍が出した同地区住居取り壊しについての警告回数は、40回に上るという。

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