コラム:ムバーラク退陣と軍の積極的関与を期待
2011年02月01日付 al-Quds al-Arabi 紙

■権力の座にしがみつくムバーラク

2011年2月01日付『クドゥス・アラビー』紙(イギリス)HPコラム面

【アブドゥル・バーリー・アトワーン】

ムバーラク政権が崩壊したということには、エジプト内外を含め西も東もなく世界中が合意している。この政権の頭目は取り巻きと共に即刻退去しなくてはならない。この合意に唯一納得していないのがムバーラク大統領本人で、近視眼的頑迷さで権力にしがみついている。

(中略)

大統領が30年間従ってきた、前進も後退もしない「ゼロポリシー」がエジプトを現状に導き、そして彼自身を現在の窮地に、恥ずべき立場にたたせている。

(中略)

政権打倒の決意をより強固にしたエジプト街頭革命は、昨日で2週目に入った。この偉大なる人々ならではの社会的政治的連帯を示しながら、食堂や商店の主人らがタハリール広場で座り込みをつづける人々に食べ物やスナックを配る光景は素晴らしい。これこそ純粋なアラブ・イスラーム主義の原点といえる。

改革を拒否し、腐敗と抑圧に耽溺し国民をないがしろにしてきた独裁政権が、大衆蜂起の圧力の元で口走る改革など、単なる時間稼ぎにすぎない。蜂起を鎮圧し参加者を斬首する武器を再び磨こうとしているだけだ。

一昨日、ウマル・スライマーン副大統領は、野党との交渉をオファーしつつ、幾つかの選挙区で野党側が行った度を過ぎた行為が違憲で非合法とされるべきなどと述べた。一方、国民は政権を根こそぎ引っこ抜くことを要請しており、最早正当性を失った政権との交渉などは拒否している。自分がすぐさま去れと言われているのに、他者の違憲行為を云々する大統領は、まるで別の惑星の住人であるかのようだ。更に悪いことには、改革の一段階として大統領が組閣した新政府には、国民から嫌悪されている全閣僚が残っている。

大統領の改革は、時期を逸したのみならず、彼の政権同様、既に終わったに等しい。側近が囁いたのであろう、次期大統領選には立候補しないという譲歩も、現状を変えることはなく、エジプト国民に拒否されるだろう。チュニジア大統領も同様の提案をしたが誰も耳を貸さず、あるいは信じなかったのだ。

昨日カイロに特使を送った米政権は、ムバーラクが去るよう説得し、大衆革命を終息させようとしている。エジプトの政権を維持し、そのイスラエルに対するコミットメントとイスラエルの安全を守るためである。この選択肢もまた拒否されるべきだ。変革に水をさす、もしくはその軌跡をゆがめようとする外部の介入は、エジプトならびに中東一帯に破滅的結果をもたらすだろう。

スライマーンは現政権の引き延ばし策にすぎない。ムバーラクがサダトにとってそうであったのと同じく、いや、より悪いことに、スライマーンはより深くイスラエルに身をゆだね、その指示を実行するだろう。

エジプト軍はより積極的役割を受け持って動かなくてはならない。国民に発砲しないというのは良い。しかし充分ではない。軍は全面的に国民支持に回り、事態を掌握し、政権とはきっぱり手を切るべきである。

エジプト軍指令部は、チュニスの同胞と同じように、大統領に3時間の猶予を与えた後、空港とあらゆる出入国経路を封鎖すべきである。軍が国内治安を受け持ち、挙国一致内閣形成をバックアップし、その内閣は新たな国民議会と大統領を選出するための自由でクリーンな選挙を行う。軍は、そうやって高貴なる国のイメージを守りエジプトとその国民を支えるだろうか?これが、可及的速やかに望まれることなのだが。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:21321 )