コラム:リビア革命と欧米の偽善
2011年02月27日付 al-Quds al-Arabi 紙

■リビア革命と欧米の偽善

2011年02月27日『クドゥス・アラビー』

【アブドゥルバーリー・アトワーン】

チュニジア革命のデモ参加者たちは旧政権幹部全員の辞任を要請しており、ムハンマド・アル=ガンヌーシー首相はそれに応じた。そのことは、イスラエルの親友たる元英首相トニー・ブレア言うところの「統制された変革」の概念が少なくともチュニジアには浸透し、エジプトでも浸透しつつあるということを示す。ムバーラク大統領の前で宣誓したアフマド・シャフィーク内閣も、チュニジア政府と同じ運命をたどることが見込まれる。

合衆国が主導する欧米勢力は、表層的な変革しか望んでいない。体制や政策が変わる必要はないのだ。それは、彼らの目的が、間断なく安価な石油を入手すること、ならびにイスラエルを核武装した大国として残すことであるからだ。

日産160万バレルのリビアの石油輸出が半減し価格が1バレル110ドルを超えるまで、欧米各国は、リビア国民の革命に真の同情を示さなかった。ヒラリー・クリントンは、バハレーン国民の蜂起にはしかるべく同情を示さず、バグダード、アンバール、モースル他のイラク各地で続いている国民蜂起、あるいはスライマニーヤでジャラール・タラバーニーの政府と彼の政党の汚職に反対する人々について、ひと言もない。クリントン氏がイラク、バハレーンでの蜂起に同情的でないのは、まず第一に石油に起因する。欧米はイラクからの石油供給が途切れることに耐えられない。そして、それより割合は少ないがバハレーンからの供給も、リビア石油をめぐる情勢が不透明な現在、途切れさせるわけにはいかない。リビア情勢によって石油価格は1バレル200ドル300ドルを超えるかもしれない。もしそうなったら、欧米経済を現在の低迷状態から脱出させるべく兆単位を費やして行われている努力が水泡に帰す事態である。

そして、以下のことが指摘される。米政権がチュニジア、リビア、エジプトでのアラブ諸国民革命に偽の同情を示した時、それは、パレスチナ政府の要請によりアラブ連盟が国連安保理に提出した、占領地におけるイスラエルの入植非難決議に拒否権を行使した時であった。スーザン・ライス米国連大使が評したように入植は域内の和平プロセスを乱すものであり、非合法なのだが。

同様に、イエメン国民の蜂起に対しても欧米の冷やかさは顕著である。この「冷たさ」の理由は石油ではなく、アル=カーイダである。米政権は、カーイダに対抗し、合衆国がはじめた「対テロ戦争」に協力的なイエメン政府に多大に依拠している。

欧米世界は、リビア政権が汚職まみれであり、人権侵害について悪しき記録を保持し、自由と尊厳ある生活を送る権利を奪って国民を迫害していたことをよく承知していた。しかし、ほんの2年前イタリアのラクイラで行われたG8サミットでは、賓客として赤いじゅうたんをひいてムアンマル・カッザーフィー大佐を歓迎することを全くためらわなかった。大佐は、米英、イタリア、フランス、日本、ドイツ、中国、ロシアの首脳と肩を並べ、ブレアと仲良しになり、ライス国務長官はトリポリの彼のテントを訪問した。ベルルスコーニー首相もサルコジ大統領も同様のことをやっており、お仲間は大勢いる。

リビアの大佐を二年ばかりで犯罪的テロリストから親友へ変えた魔法の言葉が石油であった。それにくわえ、2千億ドルを超えるリビアの資産と商取引、その元首が自分の破たんした理論の実験場にした国、つまりインフラも上部構造も何もない国の再建という巨大なビジネスチャンス。

カッザーフィー大佐は、核プログラムと生物化学兵器を放棄し、水面下であるいは表立ったチャンネルを通じてイスラエルと対話し、専門分野でムスリム諸国に技術支援を行っていたパキスタンの核科学者アブドゥルカーディル・ハーンの活動を暴露した。そのとたん我々は、欧米の各都市に大佐のテントが設営されるのを見ることになる。牝ラクダ(カッザーフィーは新鮮な牝ラクダの乳を好んでいた)、美貌の革命防衛隊、魅力的な欧米女性へのイスラーム解説講座などのアクセサリーも一緒に。

民主主義、人権、自由は、欧米首脳陣にとって重要なアジェンダである。しかしそれらは、利益によって、石油価格によって、前進したり後退したりするのだ。キャメロン英首相が、自国軍需産業振興のため代表団を率いてアブダビの軍需見本市IDEX[第10回国債防衛展示会・会議、2011年2月20日から開催]へ赴き腐敗したアラブ諸国の独裁政府と数十億ドルの取引を行ったのには驚かされた。

腹立たしいのは、少なくとも私の憤りを招いたのは、キャメロン氏が民主主義とそれを求める国民の革命を支持しながら、この革命により放逐されるべき政権首脳らと交渉し、彼らの抑圧的軍事力増強に貢献したことである。

我々がリビア、チュニジア、エジプト、イラク、イエメン、バハレーンで見ている輝かしい国民革命は、腐敗した独裁政権の排斥だけではなく、欧米との関係の根本的見直し、少なくともこの30年間続けられた従属的政策を終わらせることを目標としている。

ところでリビア政権は、欧米に対する立場を180度転換させ、欧米の政策の従順な召使となり、ネオコンと組んでイラクとアフガニスタンという二つのムスリム国を破壊したトニー・ブレアの親友になった。その政権が現在、欧米の帝国主義的介入、つまりNATOが監視する飛行禁止区域の設定のようなことを警戒している。

しかし、このような国際的介入が発生するには、革命勃発以来、非武装のリビア人に対して行われてきた虐殺、自国民に対抗するための傭兵招集、あらゆる政治経済改革の拒絶、国を腐敗した腹心のための領土と化すこと等々を経なければならなかったのだ。

もし国民蜂起がサウジアラビアへ至ったら、欧米の不安は頂点に達するであろう。そこには世界の石油資源の40%が存在する。日に900万バレルのサウジの輸出が減少したら、我々は、欧米首脳がかぶる偽の民主主義マスクが音を立てて崩れ落ちるのを目の当たりにするだろう。

サウジ国王は、国民革命が自国へ至るのを防止するため300億ドルを拠出し、奨学金、ローン免除、住宅保障、教育、保健分野での改革、雇用創出等々を約束した。しかし国民が求めているのは立憲君主制ならびに政治改革であり、それらが彼らの正当な要請の正に主眼なのだ。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

Tweet

Tweet
シェア


原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:21659 )