娘の結婚問題が原因で、富豪の妻と離婚
2011年04月04日付 Iran 紙


【事件部:モウナー・ホシュフウ】一人っ子の娘の結婚にとって金持ちの妻の存在が障害と感じた庭師の男性が、娘の幸せのために妻との離婚を決意した。

 イラン紙記者の取材によると、ある夫婦が家庭裁判所の判事の前に座った。そして裁判長はおもむろに、訴えを起こした男性に向けて、離婚請求を行った理由について説明を促した。

 ホスローと名乗る男性は、自らの半生について次のように語った。

私は20歳になり高校を卒業した後、お得意様を多数抱えるプロの庭師の父と共に、テヘラン北部にある最高級の豪邸や庭に通い、仕事の技を父から学びました。仕事を始めてしばらく経った頃、病気で寝込んでしまった父から、ある家の住所を教わりました。その家の庭の手入れをしてくるように、とのことでした。

仕事を始めてから数日後、家の主人の若い娘さんから、意味ありげな視線を感じました。彼女を見てどきどきしながら、しどろもどろになって挨拶したところ、彼女も、「あなたは息子さん?庭師のハージ・アッバースの息子さん?どうしてご自身は来て下さらないの?もちろん、あなたの腕も申し分ないわ。あなた、お父さまから学んだの?それに…」などと話しかけてきました。

彼女は私に、矢継ぎ早に質問を浴びせてきました。彼女の問いかけに、一つも答えることが出来ないくらいでした。そのため、私は恥ずかしさから顔を伏せながら、「お嬢様、仕事を再開してもよろしいでしょうか‥‥」と許しを乞わねばなりませんでした。

その日、仕事を終えた後、予想外なことにご主人からチップを頂きました。しばらく経っても、娘さんのことがつねに頭から離れず、あの豪邸になにか忘れ物をしてしまったのではないかといった感じを抱きつづけました。しかし、彼女への思いを誰かに話す勇気は持てませんでした。

しかしついに、父もこのことに気がついてしまいました。しかし父は私に、彼女のことは永遠に忘れろと言ってきました。というのも、父は私たちが結婚することなど、不可能だと考えていたからです。そのため私も、彼女のことを考えるのをやめる決心をしました。

それから約一年後、父が死に、私は父の取引先全てを引き継ぐことになりました。そうこうするうち、ある日私は例の豪邸に行くことになりました。私の胸は、興奮ではち切れそうになりました。ところがどうしたことでしょうか、家に入るや、驚くべき光景に遭遇しました。なんと、あの美しい娘は重い病気に罹り、やつれてしまっていたのです。家の召し使いに訊いてみると、ザッリーン〔豪邸の娘〕は数カ月前、婚約者を交通事故で失い、その後ひどいうつ状態になってしまったというではありませんか。彼女に強い思いを寄せていた私は、どんな方法でも彼女の助けになろうと決心しました。

幸いなことに、数ヶ月も経つと、すべてが少しずつ普通の状態に戻っていきました。そうこうするうち、私たちは日ごとに、互いを必要とするようになりました。しかし身分が違いすぎるために、プロポーズする勇気は持てませんでした。そのため、本当の気持ちについては口に出すまいと努めてきましたが、ついにある日、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、結婚を申し込んだのです。

ザッリーンが私のプロポーズを喜んで受け入れてくれたので、私は驚きで、呆然としてしました。彼女の両親があっさりと結婚を許してくれたことには、もっと驚きました。しかしすべては現実のことでした。夢を見ていたわけではなかったのです。ついに正式の手続きを踏んで、50万トマーン〔※現在の日本円で約4万円。ただし30年前の為替レートや物価からすると、実質的には現在の400万円程度に相当するかもしれない〕の婚資金付きでザリーンとの〔一時婚ではなく〕永続婚が成立しました。

妻の家族の援助もあり、家を購入して、私たちの共同生活が始まりました。初めのうち生活は順調でしたが、3年が過ぎた時、子どもをもうけることについて妻と話し合ったところ、彼女は強く反対し、「子どもはお金がかかるし、私たちにはムリよ」と言ってきました。

妻の話を聞いて、私は激しいショックを受けました。なぜなら、妻が私のことをそんな風に〔=甲斐性なしだと〕考えているとは思いも寄らなかったからです。しかしついに数年後、彼女も子どもを持つことに関心を持ちはじめ、神さまのおかげで美しい娘が授かりました。

もちろん妻の期待は相変わらず、私の能力を大きく超えるものでした。だから私は、妻と子どもの生活がより楽になるよう、一所懸命に働きました。ついに私たちの一人娘が成長し、大学に行き、さらに修士号もとりました。いまは博士課程で学んでいるところです。

そのようななか、彼女はクラスメイトの一人に恋をしてしまいました。ところが、彼女が恋い慕う男性は地方出身の人間で、家も裕福ではないために、妻は彼らの結婚に強く反対しているのです。これまで妻の同意を得ようと、いくら私が努力をしても、残念ながら徒労に終わり、彼女は今もこの結婚に強く反対しています。娘は自殺を試みたことすらあります。

しかし、妻は娘が危険な状況にあるのをみても、なおも結婚に反対し続けているのです。そしてこの結婚が成立した場合は、私と別れるとまで宣言しました。これを聞いて、妻の望みを受け入れる以外にどうしようもないと感じました。娘の幸せのために、好きな男性と結婚させたい、娘の願いを叶えてあげたい、と思います。

 裁判の続きで、ザッリーンも次のように語った。

夫は、我が一族の格にふさわしい人物ではありませんでした。しかし、普通の暮らしが出来るよう私を助けてくれたことに恩義を感じて、彼と結婚したのです。けれど、娘までもが私が味わってきたような運命に巻き込まれることを認めるわけにはいきません。にもかかわらず、夫は娘の結婚に固執しています。私としては、自分の権利をすべて放棄して、夫と別れてもよいと考えています。娘の人生が苦しむのを見たくはありません。

アムーザーディー判事はこの夫婦の離婚への意志が強いのをみて、離婚の判決を下した。

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( 翻訳者:三浦由佳理 )
( 記事ID:22073 )