コラム:「伝説の終わり」 ビン・ラーディンという伝説 
2011年05月04日付 Al-Ahram 紙

■「伝説の終わり!」

2011年5月4日『アハラーム』

【マクラム・ムハンマド・アフマド】

殺す者は殺される、たとえしばし遅れることはあっても。ウサーマ・ビン・ラ―ディン(ビンラディン)は、アラブ人であろうと外国人であろうと、イスラム教徒であろうと非イスラム教徒であろうと、宗教や人種を問わず無辜の人々を数千人殺してきた。

そうした人々は彼(ビン・ラーディン)のアメリカの利益に対する闘いにおいてなんの罪もなければ咎もない。アメリカの利益というものがイスラムそしてイスラム教徒のイメージに多大な損害を与えてきたこと、世界中のイスラム教徒コミュニティーを傷つけてきたこと、そしてその結果、(事実は逆であることが証明されるその日まで、)イスラム教徒は人々のまなざしの中で単なるテロリストになってしまったのは確かではあるが。

残念なことにアル=カーイダ(アルカイダ)は占領下にあるイスラム教徒の土地をわずかなりとも解放することには成功しなかった。確かにビン・ラ―ディンは捕虜として敵の手中に落ちることなく、機関銃を手に、望んだとおりに立ったまま死んだが。。

彼をめぐってはさまざまに見解が分かれるだろうが、彼が伝説であったことだけは確かだ。ぜいたくな生活を送ることのできるプリンスが城を去り、自らの思想を守るために洞穴や山中で生活したのだ。彼は支持者を惹きつけることのできる、強いカリスマ性を持つ人格の持ち主であり、アル=カーイダを最も危険なプロのテロリスト組織に変えた。この時代の(最新の)道具を使うことによって、ほとんど不可能と思われた標的にも彼の手は届く。

彼は周りの者に抗いがたい力を及ぼし、死ぬことさえいとわないほどにその使命が正しいことを深く確信させた。その使命とは諸文明と諸宗教の闘いを煽る死と破壊であるにもかかわらず。こうしたことを理由として、アメリカ人たちはビン・ラ―ディンを水葬することをよしとしたのだ。彼の墓が聖者の廟にならないようにと。

おそらくビン・ラ―ディンの死は、アル=カーイダの終わりの始まりとなるだろう。後継者であるザワーヒリーが彼のような才能も力も持たないこと、そしてアル=カーイダにはサウジアラビアから密かに送られていた巨額の資金がもう保証されないことを思うと、この組織は(すでに)単なる思想となってしまっている。

さらにザワーヒリーに関しては、アル=カーイダの指導者たちは意見が分かれるし、アメリカ人たちはビン・ラ―ディンの住居で彼の影響力の終わりが近いことを示す文書を見つけたと報じられてもいる。

しかしアル=カーイダにとっての最大の危険は、アラブ世界を席巻する民主革命からやってくるのだ。それはアル=カーイダが20年の月日をかけて実現できなかったことを成し遂げることによって、その終わりを告げているのだから。

人間の考えることはそれぞれであり、ビン・ラ―ディンがパキスタン軍の重要な軍事基地からたった1マイルしか離れていない、人気の多い町中に最後の住居を選んだことに人はただ驚かされるだけだ。この屋敷はあまりにも塀が巨大で人を寄せ付けないことから、誰が住んでいるのかと疑いを呼び起こしていた。

しかしながら天命はオバマがこの大きな実績を成し遂げることを可能にし、その力と地位を高めた。オバマはアメリカ人の恨みを晴らしたのだ。アメリカ人たちはビン・ラ―ディンの生き方のなかに、生きている限り自分たちの安全を脅かすであろう恐ろしい怪物と危険な思想と見ていたのだから。

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( 翻訳者:八木久美子 )
( 記事ID:22372 )