女性の顔に酸をかけた元求婚者への同害報復刑の執行、間近に迫る
2011年05月11日付 Iran 紙


【事件部】若い女性にプロポーズするも断られ、その女性に対して酸をかけるという恐ろしい犯罪に手を染めた元求婚者に対するキサース刑(同害報復刑)の判決は、条件が整えば執行される見込みとなっている。

 本紙事件担当記者の報告によると、83年アバーン月10日〔西暦2004年10月31日〕のこと、マジードという名の男が、好意を抱いていた女性アーマネにふられた腹いせに、彼女を襲撃、酸の入った容器を彼女に向けて投げつけた。レサーラト通りでこの恐ろしい犯罪行為に及んだマジードは、その後逃亡した。若い女性は事件を目撃した通行人数名により直ちに病院に搬送されたが、深い火傷を負い、彼女の顔全体と目は激しく損傷した。

〔‥‥〕

 被害者が訴えを提出すると、マジードは逮捕され、酸をかけたことを自供した。調書は〔‥‥〕刑事裁判所第71法廷に送られ、ヌーロッラー・アズィーズモハンマディー判事を裁判長とする同法廷の裁判官らは、酸をかけた被告について審理を行った。その上で、裁判官らはアーマネの求めに配慮して、被告の両目に対してキサース刑(同害報復刑)を、被害者が求める方法で行うとする判決を言い渡し、さらに被害者が被った負傷に対する賠償金を支払うよう、被告に命じた。

 この判決は最高裁で支持され、執行のために、同判決はテヘラン刑事検察庁判決執行部に送られた。

 これについて、消息筋は本紙記者に次のように述べた。

予定では、被告人へのキサース刑の判決は、被害者ないし被害者家族から2200万トマーン〔約170万円〕の賠償金の差額〔※〕の支払いが行われたあとで、土曜日(オルディーベヘシュト月24日〔西暦5月14日〕)にも、法医学の専門家たちによって執行されることになっている。

しかし、アーマネの家族はこれまでのところ、この金額を支払っていない。その一方で、判決執行時に公正を期すために、判決の執行方法やアーマネの目が受けた被害の程度について、法医学の専門家に照会が行われたが、この照会に対する回答はいまだ寄せられていない。

また、判決の執行場所もきわめて重要で、テヘランにある病院で行われることは確実だ。というのも、判決執行の過程で、受刑者が死亡する可能性もあるからだ。

 この消息筋はその上で、「アーマネは自分の手で判決を執行したいと望んでいるが、もし彼女が自分で行うことを見合わせるのであれば、判決は医師の手によって執行されることになるだろう」とも述べた。

 アーマネは7年の間、17回にわたって顔や目の手術をイランやスペインで行ってきたが、その甲斐なく両目は失明、酸の痛々しい影響が、彼女の心と体を苦しめ続けている。



※訳註:現在のイランで適用されているイスラーム刑法では、女性が受け取ることのできる「賠償金」(命の値段)は男性の半分とされる。女性を被害に遭わせた男性をキサース刑(同害報復刑)に処すと、キサース刑を受ける男性側は過重な罰を受けることになる。そのため、女性である被害者側は加害者側に対して、過重分を賠償金の差額として支払わねばならない。「賠償金の差額」とは、これを指す〕

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( 翻訳者:日下涼 )
( 記事ID:22553 )