社説:ロシアはアサド政権崩壊阻止を決意
2012年01月13日付 al-Quds al-Arabi 紙

■社説:ロシアはアサド政権崩壊阻止を決意

2012年1月13日『クドゥス・アラビー』

もしも、中東地域の戦争の可能性について知りたいと思ったら、ロシアとアメリカのあらゆる反応や、両国の戦艦や空母の動きを注視しなければならない。特にロシアが深い眠りから醒め、強硬にその国益を守るために当該地域に戻り始めた後では。

リビアで大きな欺瞞にさらされたロシア政権は、すぐに、アル=カッザーフィー大佐とに代表される強い伝統的な同盟へのインパクトを失った。市民の保護を目的に、リビアへのNATOの軍事介入に関する安保理決議にロシアが賛成したら、それは体制打倒のための軍事的動きへと変わった。ロシアはこの損失の莫大さを認識し始めた、シリアとイランの2つの政権打倒というアメリカの試みに対処するに及んで。

ロシアの武器を搭載した船の派遣は、シリアにとってかなり深刻なリスクである。それは、ロシアの空母や他の戦艦がタルトゥースの港に着いたのと時を同じくしていた。ここには、身寄りのないロシア海軍の温水域での基地がある。これは、ロシアの新たな戦略を強調している。

アメリカ政権はこの戦艦のトン数を確認したキプロスからの知らせをうけて、懸念を表明した。シリアに向かう船の出港を禁止することは出来ず、聞く耳を持たないロシアのカウンターパートに説明を求めたのみであった。

モスクワが政権打倒を求め、9ヶ月続く民衆の抗議革命に直面するシリアの体制側につくということは明らかである。ロシアは空母や武器を積んだ貨物船や危険な物資送らなければならない。それは、アラブの諸政府やアメリカに対し、明確で強いメッセージを送ろうとしてのことである。その内容は、リビアでの(アル=カッザーフィー政権との)同盟とイラクでの(サッダーム・フセイン政権との)同盟を失ったのだから、「シリアとイランとの同盟関係をロシアは捨てない」というものだ。ロシアのディミトリー・ロゴジン前NATO大使は、昨日[12日]、「イランの核計画に絡むいかなる軍事的介入も、ロシアの安全保障にとって脅威とみなされる。」と述べた。発言の意味するところは、イランが我々の隣国であり、イランに対するいかなる軍事攻撃にも同意できないというものだ。一方、プーチン首相に近いロシア連邦安全保障会議議長のニコライ・パトルシェフ氏は、イスラエルがアメリカに対しイランとの戦争をするよう説き伏せていると語った。

イランに対する戦争の可能性がますます高まり、シリア政権打倒へのアラブ諸国や国内の圧力が増してきている[この]時期に、これらの明確で強い声明は深刻である。イランへの戦争はロシアの安全保障上の脅威とみなすというロゴジンはプーチン首相の副首相に任命され、防衛関係を担当し、即時その任務を実行する予定であることは、十分に考慮に入れておく必要がある。

アメリカの中東地域における独占的時代と、包囲や軍事的介入による体制転換の戦争は消滅の一途にある。

米国政府は、リビアとイラクという二つの体制を変革した。なぜなら、両体制はロシア、インド、中国の諸企業に石油と貿易の契約を付与したからである。それ故、ロシアが米国の覇権と単独主義に屈服することは、全世界で最も豊な地域におけるロシアの権益と存在の崩壊へと至るだろう。そして、このことがロシアが中国とともに対シリア制裁のための安保理決議に拒否権を行使したことを説明している。

ロシア政府は、シリアにS300対空ミサイルを供給した。これは、NATOによるあらゆる対シリア干渉を警戒してのことである。また、ロシアからイランへのS300対空ミサイル供給契約の破棄決定が覆されることも、あり得ないことではない。なぜなら、ロシアが、中東地域全体を米国の影響力と戦争になすがままにしたというかつての立場を放棄したのは明白だからである。

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25189 )