シリア情勢:アラブ連盟による平和維持軍派遣構想
2012年02月12日付 al-Quds al-Arabi 紙


■社説:アラブは再び安保理へ

2012年02月12日『クドゥス・アラビー』

シリアの血みどろの懸案とその進展に対して、アラブ諸国の外相らの議論が継続する中、2つの突出した進展によって、その場で止まってしまう可能性がある。進展の1つ目は、サウジアラビアのサウード・アル=ファイサル外相の強い調子の演説で、演説はシリア政権を辛辣に攻撃したものだった。常に穏やかな外交を誇り、委縮させるのとはほど遠いサウジアラビア当局の振る舞いからみて、辛辣さは普通のことではない。進展の2つ目はナビール・アル=アラビー博士が「アラブ連盟は、安保理での連盟の努力の枠内でロシア・中国と連携するであろう。これは、シリアに派遣されるアラブ・国際合同平和維持軍を編成する決議を採択するためである。」と明言したことである。

バッシャール・アル=アサド大統領退陣を求めるアラブ提案に支持を得るためのアラブ・欧米決議案採択にアラブが安保理で失敗してから2週間も経たないうちに、シリアに平和維持軍を派遣する大義名分を得ようと安保理に再び働きかけることは、より大きな危険に満ちた措置である。ロシア・中国の二重の拒否権は、最初のアラブの努力を阻止したが、二度目の努力も阻止しようと再び行使されるかもしれない。

興味深かったのは、レバノンとアルジェリアを除くすべてのアラブ諸国は、アラブ・国際平和維持軍の派遣だけでなく、シリアの反体制派に対する物質的・政策的支援の提供や、シリア政権に対する経済制裁の継続にも合意しているということである。

アラブの外相たちが、ほとばしる血の洪水を抑えるために、シリアへの平和維持軍派遣問題を議論したかどうかは我々にはわからない。このような進展を保障するために実現しなければならない様々な条件がある。それらの条件のなかで顕著なのは、当事国、すなわちシリアの合意である。アラブの外相たちの最終声明発表から1時間も経たないうちに、アラブ連盟のシリア大使は、シリアにいかなる軍隊が入ることも拒絶した。その他の重要な条件は、全ての当事者を満足させるような政治的合意である。この政治的合意は、平和維持軍の存在を法的に保証し、平和維持軍の安全を確保する。これら条件は、平和維持軍の任務を完全な形で行うためのものである。しかし、そのような政治的合意は存在していない。

レバノンに派遣された国際部隊は、全当事者が尊重する停戦に基づく政治的合意と国際決議によって派遣された。すなわちレバノン政府に加えて、ヒズブッラーやイスラエルまで、全ての当事者が停戦を尊重したのである。状況が[レバノンとは]違うというのは正しい。比較はすべきでないのだが、我々が、アラブの新たな提案が最初の提案同様の失敗を回避することを欲するならば、(比較検討すべき)共通の背景がある。

アラブ連盟は、外交的に近視眼的で、中国とロシア両国を無視してし、両国との調整をしないで直接安保理へと行ってしまったため、初回は過ちを犯した。今回は誤りを正すこは、そのダメージを減らすかもしれない。つまり、両国の見解に耳を傾け、この危機の政治的解決に至る可能性を議論することである。危機は、とりわけシリア政権や軍の部隊の戦闘にイスラーム主義ジハード主義者が参加しているとアメリカの報告書が暴露したことを受けて、より悪い方向に進んでいる。事態は、政治的合意によって状況を封じ込めなければ、宗派的内戦へと至るかもしれない。この問題におけるシリア政権の責任は、他のアラブ諸国のそれよりも大きい。

アラブ諸国がシリアの反体制派に金銭的、政治的支援を提供することは、予想されていた措置である。というのも、この支援は、アラブ連盟の決議なしに始まっていたからである。この支援や反体制派の政治的承認の前に求められるものは、反体制派の統一と、反体制派内の相違を終わらせることである。それは簡単なことではない。この反体制派の一部のメンバーが、お互いに話し合わないのでなおさらである。それ以上に、反体制派の者たちは、シリア政権そのものに対する嫌悪よりも反体制派の同僚たちにに対して強い嫌悪を抱いているのだ。

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:25536 )