トルコのNATOに対するパトリオットミサイル配備要請がもたらすもの
2012年11月27日付 Mardomsalari 紙

ヘシュマトッラー・ファラーハトピーシェ

 トルコがNATOに対し、パトリオットミサイルをシリアとの国境に配備するよう呼びかけたことを受け、その真意について様々な憶測が広がっている。トルコのこうした呼びかけは一目見て、中東情勢の現実を誇大に見せ、そこから〔世論を〕逸脱させることを目的としているように思われる。シリアそして中東全体の情勢はヨーロッパにとって脅威ではなく、ヨーロッパを軍事・安全保障上の行動に誘うものではない。それゆえ、これ〔=トルコがNATOに対してパトリオットミサイルの配備を要請した理由を、トルコ・ヨーロッパの安全保障上の問題に求めること〕は、逸脱した議論なのである。なによりも、シリアも、中東のいかなる国も、ヨーロッパにとっての脅威ではないのである。

 中東には二つの脅威が存在する。一つは域内におけるシオニスト体制の脅威であり、それは〔域内諸国にとって〕最も肌身に感じることのできる脅威だといえる。もう一つはアメリカによる域外からの脅威である。アメリカはこの地域に最大の派兵をし、戦争を行ってきた国であり、そこで最も犠牲になったのはイスラーム教徒たちである。よって、シリアはトルコにとって脅威とは言えない。

 トルコでイスラーム主義政権が成立した際、それによってこの国の政策に変化が生じることに多くの人が期待した。ところがトルコは、シリア問題ではアメリカとシオニスト体制の代理人の役回りを演じている。もちろん、こうしたトルコの姿勢に対しては、国内で反発が起きている。

 何よりも認めなければならないのは、シリアはイスラエルとの戦争の最前線に位置しているということである。シリアにおける脅威には、二つの側面がある。一つは戦略的な側面であり、もう一つは政治的な側面である。政治的側面とは、自国の政治に参加したいとするシリア国民の願望を含むものであり、イラン・イスラーム共和国はそれを尊重している。もう一つの戦略的側面とは、シリアの中東政策に関連している。シリアは外交政策では〔イスラエルに対する〕抵抗運動やレバノンを後方から支援し、シオニスト体制に対する闘争の最前線に位置する国なのである。

 こうした状況下で一つの仮想的脅威を作り上げ、シリアをトルコと西洋にとっての脅威に仕立てあげることは、逸脱した立場と言わざるを得ず、これに対しては強く反発しなければならない。〔パトリオットミサイル配備に関する〕真の計画は、シオニスト体制に敵対するシリアおよびイスラーム諸国を標的とするものに違いなく、それゆえそれ以外はすべて、NATOとトルコによって提起された逸脱した議論なのである。

 地域の大国であるイラン・イスラーム共和国、ならびに冷戦を経験したロシアはそれぞれ、〔トルコにパトリオットミサイルを配備するという〕この計画に反対してきた。それは、2004年以降、新たな冷戦の時代が形成されようとしているとの予測に基づいている。〔‥‥〕ここでも目的は、NATOの軍事政策を中東地域において復活させることである。

 NATOは1994年、自らの要綱を改定し、軍事的機能だけでなく、特殊な政治的機能をもとうと試みた。それゆえNATOの目的とは、この地域における軍事的脅威の低下に伴い、仮想的脅威を創り出すことで、自らの〔中東における〕軍事的プレゼンスを正当化し、その陰で植民地主義による軍事行動の可能性を維持することだと言わねばならないのである。

 この問題ではっきりと目にすることができるのは、植民地主義が続いているということなのである。NATOの行動からは、同機構が自らの目的を達成するためならば、軍事的手段を用いてでも、新たな植民地主義政策を追求していることが分かる。それによってもたらされるのは、域内における新たな冷戦の発生である。〔それゆえ〕シリア、イラン、そしてロシアが〔パトリオット〕ミサイルシステムの配備に対して反発しているのは、当然なのである。

【出典:ハバル・オンライン】



(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:ペルシア語記事翻訳班 )
( 記事ID:28363 )