アラーク研究用重水炉への懸念は現実のものか、それとも口実か(下)
2013年11月17日付 Mardomsalari 紙

アラーク施設をめぐる西洋人の懸念に根拠がないのはなぜか

1.核の残りくずからプルトニウムを生産するには、プロトニウムを分離するための、先進的な技術をもった施設が必要である。そして、こうした施設はイランには存在しない。

2.プロトニウムを核のゴミから作り出し、必要とされるプロトニウムを取り出すためには、「ホットセル」と呼ばれる、メッキ処理を施された巨大なタンクが必要である。こうしたタンクは、イランには存在しない。

3.ウランを濃縮する技術を手に入れたイランのような国にとって、核爆弾を製造するのはそれほど困難なことではない。なぜなら、低濃縮レベルから、核爆弾を製造するのに必要とされる90%超の段階になるまで、ウラン濃縮作業を繰り返せば、核爆弾を手に入れることが可能となるからだ。しかし〔‥‥〕核爆弾を安全に保管したり、もっと重要なのは、敵軍に対して特定の時間と場所でこうした爆弾を利用したりするためには、極めて複雑かつ精確な技術が必要となる。そして西洋諸国は、イランがこうした技術を持っておらず、またそれを追求していないということをよく知っているのである。

4.アラーク発電所はIAEAの監視下にある。そして天野氏とサーレヒー氏〔※イラン原子力庁長官〕がテヘランで署名した最近の声明により、イランは2006年からIAEAの監視下にあるアラーク研究用重水炉と同様に、アラーク重水製造施設への査察可能性を自発的に〔認め、それをIAEAの〕監視下に置くこととなった。重水の生産は核活動には含まれないと見なされているにもかかわらず、である。しかしそれにもかかわらず、イランは西洋諸国から口実を取り除くために、この施設の査察許可をIAEAに出したのである。

アラークについて触れられていない事実

 現在、次のような重要な疑問が提起されている。すなわち、完全な稼働まで約2年となり、あらゆる側面からIAEAの監視下に置かれている発電所が、なぜ懸念の元とならねばならないのか、という疑問だ。ここで指摘しておかねばならないのは、アラーク発電所は地上施設であり、敵の航空機にとって完全に目視・アクセス可能な施設だということだ。それゆえ、空爆によってこれを破壊することは、IAEAの監視下でウラン濃縮作業を行うためにイランが利用している、フォルドゥー地下施設よりもずっと容易なのである。

〔‥‥〕

 こうしたことから疑問なのは、フランス外相がなぜこの発電所を口実に、双方〔=イランと5+1〕との間で信頼を醸成するための重要な一歩となり得た合意に横やりを入れねばならなかったのか、ということだ。

 この疑問には、次のように指摘しなければならない。すなわち、イランからさらなる「特典」を得るために、協議のもう一方の側〔=欧米諸国〕の間で「良い警官」と「悪い警官」の役を演じ分けるような、一種の取り決めがあった可能性がある、ということだ。

 あるいは、次のような推測も可能だ。すなわち、フランスは〔武器を売りつけるなどして〕サウジアラビアから巨額なカネを騙し取るために、あのような汚い役割を演じたのかもしれない。

 さらにもっとうまく、次のように考えることも可能だ。すなわち、ジョン・ケリー米国務長官がイスラエルの不当な要求に耳を傾けなくなったのを見て、同国は古くからの友人であるロラン・ファビウス〔仏外相〕に、子供じみた言い訳をして、イラン国民の間にあるフランスへの政治的信頼を台無しにするよう求めた可能性だ。

 西洋は、イランに対する経済制裁が功を奏しているとの誤った考えから、〔イランと西洋との間で核問題を解決させる〕絶好の機会を失おうとしている。彼らは、今回ロウハーニー=ザリーフ・チームとの間で合意を得る可能性を失えば、もはや同じようなチャンスが再び訪れることはないかもしれないということに思いが至っていない。

 次回アーバーン月29日〔11月20日〕の協議は、それゆえ〔核問題をめぐるイラン=西洋間の関係の〕転換点と見なすことができる。なぜなら、〔イランを非難する〕口実探しのための非理性的行動は、永遠に続くものではないということが、次回協議で明らかとなるだろうからだ。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:白糸台国際問題研究所 )
( 記事ID:32060 )