焼けただれた心:酸かけ犯への刑罰をめぐる問題を考える(中)
2014年01月14日付 Iran 紙


 現在問題となっているのは、果たして実際に〔キサース刑の〕判決を執行する際の障碍となっている法的問題が、酸かけ犯らを野放しにする原因となっているのではないか、そして果たしてこの犯罪の発生の原因を排除するために必要とされる施策が、これまで行われてきたのだろうか、ということだ。

 ホッラムシャーヒー氏によれば、このいずれも〔=法的不備と犯罪予防に向けた施策の不在〕が、社会における酸かけ犯罪の増加を結果してきたという。別の言い方をすれば、もし犯罪者を抑止するための適切な法律が制定され、それと同時に〔他人に暴力をふるうことは許されないという〕しっかりとした文化作り(啓蒙活動)が行われていれば、恐らくこの凶悪犯罪が増加するような事態は防げたのではないか、ということなのである。

酸かけ犯に対する刑罰の二つの側面

 法律の専門家であるモハンマド・レザー・デフガーニー=サーニージ氏は酸かけ行為のような犯罪には、二つの側面から対応することができるとした上で、次のように言う。

イスラーム刑法によれば、酸かけ行為〔への刑罰〕には一般的側面と私的側面の二つの側面がある。私的側面からは、被害者には〔加害者に対してキサース刑免除を〕認めないといったことが可能であり、被告にはキサース刑が言い渡されることになる。酸かけ犯罪によって被害者が死亡した場合、犯罪者にはキサース刑〔※つまり死刑〕が言い渡されるだろう。

※訳注:キサース刑は被害者ないし被害者遺族の権利として認められており、加害者をキサース家に処すか否かは被害者ないし遺族の意向に左右される。このことから、キサース刑は「私的な側面」をもつ刑罰として、ここでは言及されている。他方、キサース刑によらない刑罰は、被害者ないし遺族の意向とは関係なく下されるものなので、こうした刑罰を「一般的側面」をもつ刑罰として、ここでは言及されている。

しかし、被害者の体の一部が欠損した場合は、酸かけ犯にはその部分に対するキサース刑が言い渡されることになる。そしてこれまで見られてきたように、多くのケースで、被害者は〔加害者に対するキサース刑免除に〕同意してしまうのである。なぜなら、体の一部に対するキサース刑に関するイスラーム刑法上の最も重要な条件は、キサース(報復)は完全に〔犯罪行為と〕同等でなければならず、またその方法も、加害者〔※原文では「被害者」とあったが誤りと判断〕が死亡したり、体の他の部分に害が及ぶようなものであってはならないとされているためである。

専門家や犯罪学者の中には、酸かけ犯へのキサース刑執行でこうした条件を守ることは不可能だと指摘する人たちもいる。酸が液体であるために、体の他の部分に害が及ぶことは避けられず、キサース刑と犯罪行為とを同等にさせることは事実上不可能だというわけだ。

また酸のかけ方やその濃度、被害者が病院に搬送されるまでにかかった時間なども、〔酸かけ行為による〕効果に影響を及ぼすものであり、こうしたすべての条件をキサース刑のために考慮することは、絶対に不可能なのである‥‥

つづく




本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:白糸台国際問題研究所 )
( 記事ID:32621 )