社説:中東の地域空間における政治的変化のメルクマール
2014年02月17日付 al-Hayat 紙


■地域空間における政治的変化のメルクマール

【ハーリド・ビン・ナーイフ・ハッバース】

中東地域における影響力をめぐり、激しい地域的競争が存在することは自明の事実である。それ自体は何も新しい出来事ではない。しかし、(昨今の)競争を取り巻く地域政治の変化と移り変わりの速さ、そして中東地域で起きる出来事のダイナミズムには目覚ましいものがあり、中東地域の主勢力による外交政策のプロセスにも特筆すべきものがある。その傾向はトルコ、イラン、サウジアラビアに最も顕著にみられ、アラブの春の影響、特にシリアの危機とそれによって生じた地域的・国際的分極化において、より鮮明に現われたものと思われる。

トルコは、アラブの春の影響が及ぶ以前から、明確な形でイランとともに歩み寄っていた。両者の間には、中央アジアに対する影響力をめぐる対立という重要問題が横たわっており、したがってこの歩み寄りはトルコ政府が長年にわたり追求してきた問題解決の政治的成果であった。さらにトルコは2010年、主にイランとの間で、両国がそれぞれ自国内で精製した濃縮核燃料を交換するという合意を結ぶことに成功した。しかし、シリアの革命の結果、トルコは当初革命勢力を支持し、一方イランはシリア政権の擁護を烈しく主張したことから、両国の立場は相対立することになった。両国は現在政治的な膠着(こうちゃく)状態にあるが、イラン政府が昨年(2013年)11月に国際社会の大国と核に関する合意を締結したことは、主に安全保障と主権の観点からトルコのシリア革命支持に対する気勢を削ぐこととなった。このことは、特にエジプトの同胞団政権が崩壊した後、イラン・トルコの二国間関係を再び温める機会を作ることとなった。トルコ政府は、首都アンカラを、政治的イスラームを掲げるアラブ地域の諸政府とつなげるための地域的なハブ機能の形成を、カタールに続く存在として同胞団政権にも期待していた。一方イランは教義上の理由からそのハブ機能の一部にはならなかったが、それらの政府と距離を置くこともなく良好な関係を保っていた。

さらに、シリアとの貿易の低迷によりイランが被った経済的大打撃は、トルコの経済に結びつくことになった。イランの市場は主としてトルコの最も重要な市場となった。2013年の両国間の貿易額は200億ドルに達し、トルコはイランを自国の世界第3位の輸出市場と見なすに至った。

この背景には、トルコのレジェプ・タイイプ・エルドアン首相が、(2014年)1月の末に行ったイラン訪問がある。この訪問では、主に両国の経済的・政治的協力と、この二年間で二国間関係に害をなしてきた行き詰まりの打開を試みることについて焦点があてられた。特に、イランのロウハーニー大統領が追求する外交政策と実践的政策に照らして話し合いが行われた。また、この訪問の間に、両国間の決定としてこの先2年間の両国間の貿易額を300億ドルに増加させることが発表された。

トルコとイランの歩み寄りはイラクとトルコの関係強化に対してもプラスの効果を及ぼしている。両国は、以前の段階では安全保障と石油その他の問題に関する見解の相違から、その関係の悪化が目立っていた。この両国の関係改善は、シリアの危機とそこから発生するシリアの隣国への負の影響に関するこの先の見解の一致に資することになる。特に、難民問題やテロ、そしてシリアと地域の未来に関する分野においては、大いに資することになるだろう。また、これらの諸国(シリアの隣国)は以前、(イラクとトルコの関係が悪化したまま)各国間の協力関係のモデルを組み立てようとしたが、それが失敗に終わってしまったことは注目せねばならない。

(後略)



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:辰巳新 )
( 記事ID:32994 )