コラム:米国の「対テロ戦争」における立場の根底にあるもの(上)
2014年11月07日付 al-Hayat 紙

■米国の「対テロ戦争」における立場の根底にあるもの

【ワリード・マフムード・アブドゥンナースィル】

昨今、否、2001年9月11日攻撃直後に合衆国が「アル=カーイダ」と同組織を支持ないしは類似する諸組織を標的に対テロ戦争の新段階への突入を宣言して以来、対テロ戦争の戦略目標についての誤った見方が、この戦争への取り組みについての合衆国政府の説明を通じて生まれているのが散見される。また、政治や報道分野に従事する者やその仕事に憧れる者たち、あるいは大衆を率いる立場の者たちの間にも、米国の対テロ戦争の立場は、国際政治潮流のなかで「政治的イスラーム」と呼ばれるようになったものをスローガンに掲げる団体や組織を標的にしており、米国のこの立場が、西洋とイスラーム世界の間に深く根を下ろす歴史的かつもっとも本質的な諸要素の衝突という局面において、これらのイスラーム諸組織を攻撃し、封じ込め、それらと対決するという方策につながった、とする見方が存在する。

しかし実際に歴史の事実に照らせば、このような見方は多くの困難に直面しており、しかもそれら諸困難の重大な部分は、米国の「対テロ戦争」概念が相互理解を欠く一方的なものとして誕生したことや、その概念自体がもたらすさまざまな変遷、岐路・転換の局面を通じて生じてきたのである。

歴史的に明らかなことは、合衆国にとっての対テロ戦争は9月11日の攻撃の後に始まったのではなく、その何年も前から始まっていたということである。さらに明らかなことは、米国の論理に沿ったこの戦争が始まったとき、米国はこの戦争を左翼思想に基づく多様な急進的組織・運動に対して、また米政策のおよぶ国々や諸地方において同政策に反対する民族主義諸組織に対して長年にわたり既に展開してきたということである。第三に明らかなことは、米国の立場の背景をなす対テロ戦争には、地理的な境界が存在しないことである。そして第四に明らかなことは、米国の「対テロ戦争」の説明はその背後で、米国にとり決定的に重要な全世界にわたる利害や米外交政策上の目的は脅かされてはならないとする歴代アメリカ政府の判断と確実に結びついていることである。

ここで確認しなければならないのは、上述したことは「対テロ戦争」に関する米国の政策を非難しているのではなく、事実の確認からそう言えるということである。超大国米国を含め、世界のいかなる国家も、自国の国益に適う外交政策に基づき、世界との協力と自国の自立をめざしてそれぞれの政策の実現に努めるのである。これらの政策は理念や価値、一般性や普遍性のような高尚なものに基づいているのではない。

(中に続く)



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:前田悠作 )
( 記事ID:35816 )