コラム:分裂するアラブ地域、これぞまさに歴史的瞬間
2014年11月27日付 al-Hayat 紙


■アラブ地域の分裂:これぞまさに歴史的瞬間!

【アブドゥッラフマーン・サラフ】

アラブ世界は今、重大な政治的意義を有する三つの事件に直面している。一つはスンナ派原理主義の勃興とそれに伴う宗派間抗争、もう一つは(地域の)中心国家の分裂である。そして三つ目は、テヘランやアンカラに代表されるような諸国からアラブ地域に対して行われる地域的攻撃、すなわち「干渉」だ。とはいえ、当該地域の利益は国際的なそれと一致するものである。チュニジアの議会選挙の結果を見たとき、「ダーイシュ」(イスラーム国)という深い闇に沈むわれわれに一筋の希望の光が差し込んだ!誰が勝者で誰が敗者かは関係ない、ここで言えるのは、チュニジアの市民社会こそが勝者であるということだ。一方、チュニジアにはこのような市民社会が深く根付いたにもかかわらず、同国は同時に、「ダーイシュ」の旗の下で闘う3,000人の戦闘員を「輩出」している。おお…なんと皮肉なことか!

しかし、ここでわれわれは次のことを思い起こさねばならない。すなわち、「ダーイシュ」は昨日今日生まれた赤子ではないということだ。サウジアラビアの作家、ファハド・シャキーラーン氏が説明したように、「ダーイシュ」はすでに樹木と育ち、もはや種と呼べるような存在にはないのだ。1979年のイラン革命とそれに伴う十二イマーム派の台頭に始まり、2003年の米国によるイラク攻撃を経た段階で、(「ダーイシュ」という)樹木が育つための土壌は十分肥沃だったろう。地域ではスンナ派の宗教的覚醒を訴える演説がぶたれた。米国の攻撃が話され、帝国主義や米国の一極支配などに反対する政治的演説が繰り返された。中でもおそらく最も注目すべきことは、イラン政府がシーア派のアラブ人をして自国に追随する政党を結成しようと働きかけ続けていたことだろう。複数のアラブ諸国の中から、イランに近しい傾向を持つ存在を探し続けていたのだ。ここで、イランのアリー・ラダー・ザーカーニー議員が発した、およそ傲慢ともとれる最近の声明を見てみよう。その内容とは、イランはレバノン、シリア、イラク、イエメンの計4つのアラブ諸国を支配しているというものだった!そのような支配は所詮長続きするものではないし、本来イラン国民にあてがわれるべき国家の財源を無駄に食い潰すだけである。しかし、この声明からはそうした視点が抜け落ちている。クドゥス部隊(訳注:イラン革命防衛隊の精鋭部隊)のカースィム・スレイマーニー司令官もまた、先の声明に先立ち、次のような声明を発している。「シャームの国はわれわれが天国に到達するための道である」。加えて、同司令官はイラクのマーリキー首相が同国北西部の諸地域に住む国民(イラクのスンナ派住民)に対して数年に渡り行ってきた、排除等の措置も承認した。しかし、結果的にこうした措置が「ダーイシュ」に期待する状況を活性化させたのだ。

モースル市が「ダーイシュ」の手に落ちた理由は二つある。第一に、モースル市では「ダーイシュ」の下で団結する環境が整っていた。もし「ダーイシュ」支持者が存在しなかったならば、少なくともマーリキー首相の強権的な宗派的措置の実行に対して、敵意まで向けられることはなかったはずである。第二に、これは宗教学者の大家4人から成るナジャフのマルジャイーヤ(訳注:イラン国内でシーア派の宗教的権威を司る機関)の一人、ナズィーフ・マヒーッディーン師が指摘したことであるが、マーリキー首相は自国を混乱に陥れ、これにより非常事態令を発令することで自身の政権を存続させようとし、あえて部隊に撤退を命じたというのである。

時代の経過とともに、思想から柔軟性が失われ過激化が進むという現象は見逃せない事実であり、歴史もそのように物語っている。師ジャマールッディーン・アフガーニーは、その弟子ムハンマド・アブドゥフよりもずっと寛容であった。そしてその柔和さは後のハサン・アル=バンナーによって失われ、続くサイイド・クトゥブの登場を経て、より一層の思想の硬直化が見られた。こうした流れを経て生まれたのが、われわれが目の前にしているエジプトの「タクフィール・ワル・ヒジュラ」(「背教宣告と聖遷」の意)の行いであり、ウサーマ・ビン・ラーディンの登場もまた、そこから派生したものと思われる。そしてさらにこの流れをたどって行くと、われわれは「ダーイシュ」やその同胞である「ホラーサーン」(アル=カーイダ系組織の一つ)などの組織を通じて実行される軍事的過激主義にたどりつくのである。

かつて栄えていた国々の秩序は、崩壊に見舞われた。そしてこのことが、これらの組織が手段・程度を問わずにシャリーアの適用を目指すことを可能にしたと言える。アブー・アブドゥッラー・ムハージル(アル=カーイダ幹部の一人)の著した書物『ジハード法理学にまつわる諸問題』を紐解くと、そこには殺人と血その他によって得られるすべてのことが記されている…しかし、その表紙をめくる度、そこからは血の匂いが漂ってくるのだ。

(後略)



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:辰巳新 )
( 記事ID:36002 )